第4話 亜連年次大規模軍事演習
202X年1月5日
亜細亜太平洋島嶼連邦共和国で年次大規模軍事演習『太平洋の嵐202X』が行われた。
北東部に敵勢力が侵攻してきた想定で行われたこの軍事演習は、全軍が動員された。
連邦共和国海軍第1艦隊旗艦、空母『シワヘマ』の甲板には、亜連国内のファリィン社が開発、製造している第5世代戦闘機、AaF-11M戦闘機数機が発艦準備を整えている。
灰色ががったデジタル迷彩を施した機体はなだらかで、上から見れば、左右対称の、一つのひし形の主翼をもっている。また1対のV型の尾翼をもつ。
2つのエンジンが付いており、機体下部についている、機内兵器庫には多くの兵装を搭載できる。
「こちらラウロ07、離陸準備せよ」
『了解。ラウロ07、発艦せよ』
ラウロ07ことファイ・タン中尉は空母のカタパルトから射出され、晴れた太平洋の空に飛んでいく。
上空には同じ部隊のAaF-11M戦闘機が待機している。
全機発艦後、第111戦闘航空隊-――ラウロ航空隊は東へと向かう。機数は20。
目標はサシム島南方のカーサ飛行場だ。
ここを空爆する。
カーサ飛行場に駐留する航空部隊は別の空軍戦闘航空隊が陽動し、今この飛行場には戦闘機はいないはずだ。
全機がジェットエンジンの力で東の空へと飛んでいく。
警報が鳴った。
ロックオンだ。
地上の防空システムがロックオンしたのだろう。
『全機チャフを撒け。散開後、爆撃態勢に移行』
全機散開。各機、機体後方から金属片がばらまかれる。
各機は20機から4機ごとの編隊に分かれる。
『よし、第1編隊。予定通り行くぞ』
4機の編隊が飛行場北方から飛行場に進入し、飛行場の上空に到達する直前に爆弾倉を明ける。
『第2編隊、行け』
ラウロ07-――ファイ中尉を含む4機の編隊が今度は飛行場東から突入する。
『投下! 投下!』
ファイ中尉が操縦桿のスイッチを押し、爆弾倉を開く
この演習を統括、各行動を評価する統裁部は、カーサ飛行場の石油タンクや兵舎が破壊されたと評価した。
なお、第113戦闘飛行隊に被害はなかった。
少数機に分かれての多方向からの爆撃により、カーサ飛行場はその機能を喪失した。
カーサ飛行場に駐留していた少数の空軍戦闘機部隊は帰投したが、着陸するより他なかった。
2025年1月10日 演習はその全ての予定を終えて、終了した。
連邦共和国海軍第3艦隊所属巡洋艦『ワガシナ』は他の第3艦隊艦艇とともに西へ向かっている。
「なあ」
航海科のコ・テダン二等兵が艦内通路でディ・ファロン二等兵と話している。
「母港には向かわねぇのかよ」
同じ航海科のディ二等兵がそれに同調してぼやく。
「なあ、何かおかしくねぇか」
そこに別の二等兵が通りかかる。
「おい、きいたかよ」
「何が?」
コ二等兵が尋ねた。
「今日の夕飯はビフテキとマスエビらしいぜ」
マスエビはこの国の南西部で取れる大きなエビだ。美味で、高級食材として扱われる。
コとディの顔を呆然として見つめた。
「なんだよ」
夕食のメニューを伝えた二等兵は状況が呑み込めていない様子だった。
コは彼に言った。
「なあ、何かおかしいぜ?」




