90話 袋の鼠
私たちは政府軍が入ってこないように入り口を水銀で閉じ、ヴァンパイアたちを全て解放したのだった。
「さてとサン、この出入り口以外の出入り口ってある?」
「ある、だけどヴァンパイアを開放している内に大きい物音がしていたから気をつけないといけないかも」
私たちはサンの案内の元でもう一つの出入り口に向かった、だが想定外の出来事が起こっていた。
「へぇ、瓦礫で物理的に通れなくしてるのか」
「これって通れないよね?」
「そうだ、もしここで爆薬を使おうとしたのなら私たちは瓦礫に埋もれるだろうな」
「……なら今封鎖してある出入り口から出ないといけないの?」
「そうなるな。恐らく政府軍はそこに待ち伏せをしていると見た。一体どうしたものか」
「袋の鼠ですわね」
「そうだ」
サンは少し考えこみ、急に壁を殴り始めた。
「サン!?」
「確かこの雑居房が並んでいる場所に秘密の通路があったはず、私はそれを覚えていたんだ」
「秘密の通路なんてものあるのね」
「ああ、だが狭すぎるがあまり誰も通れなかった」
「ならダメじゃん!」
「私たちは入れないだろうが液体なら入るだろ……メルクール」
「仕方ありませんわね」
サンが壁に穴を開け、そしてメルクールが水銀をその中に垂らした。
「どうだ?」
「確かに封鎖した出入口が慌ただしくなってる様子ですわね」
「私たちが出てきた所を一網打尽ってわけか」
「そう考えているだろうな……どうしたものか」
私たちが悩んでいると後ろから声をかけてくる人がいた。
「あの~いつまでここに居ればいいかわかります」
「政府軍が外に居るからこのまま出たら一網打尽にされてしまう。だから策を考えている途中なんだ」
「見えなければいいんですよね……なら僕を使ってください」
「何を言ってるんだ?」
すると声をかけてきたヴァンパイアは姿を徐々に消していった。
「姿が完全に消えた……!?」
「サーマルでは見抜かれるんですけど……これなら見えないですよ」
「どうするサン、この子に任せるか?」
「打開策が無い今、博打という手もあるな……」
そして奴らの策を打破するために話しかけてきた子に頼み込んだ。
「分かった、静かに移動して奴らを混乱させてくれ」
「静かにだよね。分かった」
そしてメルクールは水銀の壁を解除し、封鎖していた出入り口を開放した。
(これでうまく行けばいいが……)
大きな動きが起こるのは数分後だった。ある兵士の断末魔から混乱が始まったのだった。
「ゴッ」
「誰だ!」
政府軍は首が折れた死体を見て敵が居るのかと周りを探した、だが透明になっているおかげで見つかることは無かった。そして銃声が鳴り響いたがそれは透明ヴァンパイアが軍人を操っている事による発砲だった。
「アババババァ!!!」
(どうやら混乱状態になってるな。あともう少し混乱させてくれよ……)
外では無差別に軍人が首を折られて倒れている姿を見て生きている軍人たちは恐れおののいて逃げていったのだった。
「今だ!全員出口に走れ!」
私たち含むヴァンパイアたちは一斉に出口に走り出し、それに気が付いた軍人たちは銃を向けてきた。だが銃を向けた奴から首が折られていった。
(首が折れている……即死だな)
そして私たちはヴァンパイアたちが無事に逃げれたか確認し、最後尾に回った。
「みんな、怪我とか無いよね?」
「大丈夫だ。とりあえずこれで依頼は達成かな」
「そうだね」
そして私たちは回り道をしながら喫茶店に帰っていったのだった。そしてこれがきっかけで私たちの立場は優位になるのだった。
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