106話 ゾッコン
数分が経ち千尋さんはとある首輪を持ってきた。
「とりあえず私は大臣を拷問して無理やりヴァンパイアの事を1から10、謳ってもらうようにする」
「よろしく頼むよ」
「タウ、ついてきて」
「はいはい、怖さ要員だね」
千尋さんとタウさんは重そうな扉の奥の部屋に入り、私たちはつかの間の休息を取るのだった。
(しかしこの少女が私にくっついてる、でもいいのか?これで?)
「ねぇ、ずっと私にくっついてるけど……それほど離れたくないの?」
「私を認めてくれた人だから逃がしたくない」
少女は私を翼で囲んで離さなかった。
「……ねぇサン、これどうしたらいいと思う?」
「どうしたらいいのか思いつかないんだが」
(無理やり剥がしたらまたくっついてきそうだし……どうしたものか)
私は少女の扱いに困っているとセツナさんが冷蔵庫からバニラアイスを取ってきていた。
「なかなか好かれてるじゃんか」
「そうなんですよセツナさん、助けてくださいよ」
「どう助けようかな……そうだ。このアイスを使うか」
セツナさんはスプーンにバニラアイスを乗せた。
「ほらほら~こっちだよ~」
「……真っ白だ」
少女はバニラアイスにつられ、私から離れた。
「パクッ」
「あっ、急に飛んで食べに来た!」
「甘い……これ何?」
「バニラアイスって言うんだ、あそこの冷蔵庫にたくさんあるから取っておいで」
「アイス食べる……」
少女はまるで無垢すぎるがあまり周りの空気が柔らかくなるような気がしていた。
(結局は子供なのね、子供が母親に好きと言う感じを私にぶつけているのかな)
「うまうま」
「さてと、私のアイスがぁぁ……」
セツナさんはスプーンを奪われ、渋々新しいスプーンを取りに行くのだった。そして少女は私にもアイスを持ってきた。
「食べる?」
「持ってきてくれたの?」
「うん、食べる?」
「食べると、ありがとうね」
私は少女の頭を撫でた。少女はどことなく嬉しそうな顔をしていた。
(この子……本当に子供だな)
私はスプーンを取りに引き出しを開けた。そして私と少女は並んでアイスを食べていった。
「ねぇ、あなたの名前って何なの?」
「名前……?」
「ならあなたが何処から来たの?」
「大人たちがガラス越しで私を見ている所……とても怖かった」
(大人たちがガラス越しで見てくる、何か収容施設みたいな場所なのだろうか?)
「それでね、毎日痛い思いをしてたんだ……」
「そうなのね、でもこれからはそんな痛い事はないと思う。私が傍にいる限りはね」
「うん」
その時桜が私と少女の前に立った。
「桜、どうかしたんだ?」
「何だか同じ波長を感じる……」
「……アイス食べる?」
「食べる、一緒に」
桜はそう言うと少女は再び冷蔵庫に向かって歩き出し、アイスとスプーンを取ってきた。
「あげる」
「ありがとう~」
桜はそう言うと少女の横に座った。どうやら桜にも心を許しているようだ。だがどこで心を許したのだろうか?
(もしかして同じ年に見えたから心を許したのか?)
「美味しい」
「甘いよ~」
「ちょっと私は少し遠くに行くね」
私は立ち上がり、サンに雑に絡みに行った。
「なぁサン、焼きもちを焼いてるのか?」
「まぁ……焼きもちを焼いてるね」
「とりあえず警戒心を解いて行かないとだから、根気強く頑張ったらいいと思うよ」
「根気強くか、頑張ってみるか」
平和な空気が流れる中、数十分後にはさすがに子供には見せられないほどの返り血を浴びた千尋さんとタウが重そうな扉から出てくるのだった。
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