何か忘れてるような…
わたくしは、妹紅推しです。
妹紅は普段座りながら眠るそうです。
ならばわたくしも当然その寝方を試すのが、推しに対する流儀というもの。
どうなったかって?
椅子に座れないぐらい腰が痛くなって、人生初めて鍼を打ってもらいました。
まだ高校生ですよ?!
「妹紅さん、火つけてもらっていいですか?」
わたし、藤原妹紅は、壁を背もたれにして、足を広げて座っていた。
一瞬、タバコでも吸うのかと思ったけど違った。
ブン屋が持っていたのは急須だった。
「お茶淹れるんで」
「あぁ、まぁ、いいけど」
わたしは囲炉裏の薪に手を翳して、火をつける。
そりゃ、マイの親探しを手伝ってもらってるのだから全然いいんだけど…
私の炎をそんな火打ち石みたいな便利道具に使われるの少し納得いかない。
「どうもどうも〜」と呟きながらお湯を沸かすブン屋。
戸棚から湯呑と茶葉を取り出す。
結構生活の場所としての機能は果たしているようだ。
少なくとも私の小屋よりは…。
「ハイ、どうぞ」
「ありがとう」
ブン屋から湯呑みを受け取り、軽く息を吹きかけて、冷ましてから茶を啜った。
「マイちゃんには普通のお水を」と、マイを抱き抱えて、口に少しずつ水を流していった。
「あう、あっあっ」
「ああ、そう言えば___」
すると、突然こんなことを聞いてきた。
「そう言えば、妹紅さん、マイちゃんにお乳あげてますか」
「ブホォ!!」
思わずお茶を吹き出してしまった。
「なっ!何を突然!」
マイはこの噴水を見て「キャッキャッ」と笑っている。
「イヤイヤ、変な話でわなくてですね〜、赤ちゃんというのはすぐにお腹が空きますよ」
「あぁ…」
そう言えば、思い返してみれば、マイはびっくりしたり、暑かったりで泣くことはあっても、お腹が空いて泣くなんてことはなかった。
「そう言えば、マイ、お腹が空いてる様子がないぞ」
「やはりそうですが、それではおしっこやうんちもしてないんですか?」
「たっ、確かに」
「ふーむ、確かに、輝く竹から生まれてきただけのことはありますね〜。不思議です。この子だけで新聞まる1日分のネタが詰まってますよ。永遠亭の医者はなんと?」
「あっ………、____」
「………やっと気が付きましたか?当初の目的地を」
そうだったぁ…。
めんどくさい記者に絡まれ、すっかり大事なことを忘れていた。
「行ったらどうですか?永遠亭。風の噂といってもすぐには広まりませんし」
ブン屋が湯呑みを傾けながら、永遠亭に行くよう促す。
「そうだな」
そうだ、行こう。
1番怪しいアイツに聞きに行こう。
私の因縁の相手。私の永遠のライバル。私を蓬莱人にした元凶
____蓬莱山 輝夜に。
わたしはマイをおぶって、戸に手をかける。
「ブン屋、すまなかった。今回のが片付いたら、一杯奢るし、答えられる範囲でお前の取材受けてやるよ」
「それはそれは、新聞記者冥利に尽きるというものです。妹紅さん、最後に一つ」
「ん?なんだ?」
「旦那様とはどこで出会ったの____」
『ボォヴ!』
全てを合わせる前に炎で黙らせる。
「すまん、焼き鳥の取材を受ける趣味はないんだ、わたしには」
懲りないヤツだ、ほんとに。
ブン屋は慌てて謝罪する。
「すっ、すす、すみません…冗談ですよ〜。ねっ、次がほんとに最後」
「はぁ〜なんだ?」
呆れ気味に聞くと、ブン屋は囲炉裏の急須を持ってきて
「もう一杯お茶飲みたいんで、火、つけてもらえません?」
「アハ」と顔で、「当然」と顔で頼んでくる。
本当に、この新聞記者、図々しいというか…図太いというか………




