第32話 間
風呂上がりの濡れた髪の毛をタオル拭きながら部屋に戻った結衣奈は、流れで部屋の真ん中に置いてある望遠鏡を覗いた。だいぶ前にどこかにピントを合わせて以来、全く整備していない望遠鏡はなにも映さなかった。
顔を上げてタオルを椅子の背にかける。
少し濡れたままの髪の毛を手櫛で梳かすと部屋の電気を消した。
「結衣奈ちゃーん……」
横から聞こえた小さな声。ふと我に帰り横に並ぶ少女の方をふりかえる。
「大丈夫ですか?なんかぼーっとしてましたけど。」
「え、ああ。うん。多分大丈夫だよ。ありがとう。」
「寝不足ですか?」
「うんー、ちょっとね。」
昨日、電気を消してベッドに入ったものの、なかなか眠りにつけず、結局寝れたのは日付が変わった頃だった。
「なんかさー、眠れずにうっすらと時計見たら日付変わっててさ、全然寝れなかったんだよねー。」
そういうと結衣奈は口許を手で隠しながら大きなあくびをした。
「大変ですねー。」
莉子の言葉に被さるように横の道路をトラックが走り抜けていく。結衣奈は彼女の言葉に気が付かず、そのまま前を向いて歩いていた。
そのまま会話が一瞬途切れる。周りにいる生徒の会話が二人の間に入り込んでくる。
「結衣奈ちゃん今日クラブ行きますか?」
「んー、どうしようかなー。」
「そうですか・・・。」
残念そうな顔をした莉子を見て、少しかわいそうに思った結衣奈はさっきまでの気持ちを切り替え、行こうと決めた。




