向けられた矛盾
俺は目を覚ました。ベッドが寝汗で少し湿っていた。悪い夢を見た・・・。
あの時の頭首の声が今も耳から離れない。俺が発した言葉も今でも覚えている。
久しぶりに気分の悪い目覚めだ。
ベッドから起き上がると隣のベッドでヒロはまだ寝ていた。
俺はヒロを揺さぶりながら声を掛けた。
「ヒロ~。起きろ~。」
「・・・・・・・・・・・。」
ぐっすり眠っている様だ。他のベッドには次郎とアルベールの姿は無かった。
既に起きているのだろう。
ずっと前から思っていたが、やはりヒロは朝に弱い様だ。
俺はもう一度、声を掛けた。
「ヒロ!行くぞー!」
「・・・・・・・・!!」
ヒロは驚いた様子で勢い良く起き上がり、俺の方を見た。
「す、すまん。」
多分、起こすのに手間が掛かった事を気にしているのだろう。
「気にすんな。ほら行くぜ。」
「あ、ああ・・・。」
外に出ると次郎とアルベールが話をしていた。
「ケイ。おはよう。今日は遅かったな。」
「ああ。ちょっと・・・な。」
次郎は心配そうに俺を見た。
「気分でも悪いのか?」
「いや、何でもないさ。」
「・・・そうか。」
とりあえず、今日も色々と忙しそうだな。
「よし!南にある遺跡の調査へ・・・。出発だ!」
「おう!」
「うぃーす。」
「・・・・・・・・・・。」
元気よく掛け声をする次郎、怠そうに返事をするヒロ、相変わらず無言なアルベール。
俺達は朝食をとってから南の遺跡へと向かった。
砂漠を超えるとなると、水は大量に必要だが、
幸い、村の中心に有った池の水を汲むことが出来たから、水に困ることはないだろう。
問題は、遺跡の危険度がどれくらいかだな・・・。
魔物が居ることは勿論の事だが、それ以外の何か悪い予感がする。
それは俺の過去の記憶が沿う感じさせているのかもしれない。
恐怖とは違い、あまり近づきたくない。触れたくない事だから・・・。
体が拒絶しているのだろうか?
「ケイ。ちょっといいか?」
次郎が話しかけてきた。何か用だろうか?
「ああ。何だい?」
「昨日、聞けばよかったんだが、じっくり考えたくてな。」
「それで聞きたい事っていうのが、ケイ。お前さんの事なんだが・・・。」
「俺の事?」
「ああ。君があの事件。つまり、昔この大陸で起こった事件に関与しているのは
分かったんだが・・・。一つだけ合致しない部分がある。」
「うんうん。」
「あの事件が起こったのは俺が今、調べている魔術戦争よりも前の事件なんだ。
という事は、君のその姿。正確な年齢が知りたくてね。」
「・・・・・・・・・・。」
「魔術戦争は今から、約10年前の事件だ。今回の事件はそれより前だ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「答えられないなら、それでも良い。ただ、ちょっと気になってね。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
どうやら、俺が思ってるよりも詳しくこの世界の過去を調べていたようだ。
俺は頭を掻きながら誤魔化す口実を必死に考えた。
だが、歴史の事実と今、俺が若い姿でいるという事実が絶対的な矛盾を
誤魔化す術が考え付かなかった。
「俺、童顔なんだ~。」で済ませるか?
それとも、「老化が止まる呪いに掛かってな。」という意味分からん言い訳をするか。
どれをとっても誤魔化せる気がしないな・・・。
とりあえず、何か言わないと怪しまれるな。
その時、次郎が俺の肩を叩いた。
「やっぱり話したくないなら、良いよ。君にも何か事情というものがあるんだろ?」
「・・・・・すまないな。」
それしか言えなかった。だけど、後で必ず全部話すつもりではいる。
この旅はその矛盾を無くすため・・・。と言うか過去の罪を償うためだ。
俺が今までエレンの街で何でも屋をやっていた事も償いの一部だったのだが、
やはり、過去を見て見ぬふりをして償いも何も無いと最近分かってきたところだ。
「二人で何話してるんだよ~?」
ヒロが後ろから話しかけてきた。
「いや、なに。好きな食い物の話しよ!なあ、ケイ!」
「あ、ああ。」
「何だよそれ・・・。男二人で真剣に話すことか~?」
「ヒロ。食べ物の話は重要だろ?まずは身近な相手の好みを知ることからスタートだ!
何て言っても、俺達はまだ知り合ったばかりだ。分からん事も多い。」
「そういえば、そうだったな~。」
次郎とは知り合ったばかり。本当にそういえば、そうだったなって感じだ。
あまりに自然に会話してしまっていたから、俺にとって重要な事も、
一般人が知り得ない事も話してしまっていた。
だが、次郎には何か話しても良いような、そんな得体の知れない雰囲気が有った。
根拠は無いが、信じてもいい気がしていた。俺が騙されやすいのか、どうなのか。
俺はもう一度だけ、人を信じてみたい。いや、信じていたいのかも知れない。
風が吹き、周りの砂埃が舞った。それを横目に俺達は遺跡へと向かう。
何を信じるべきなのか。誰を疑えばいいのか。
俺にはさっぱりだが、今一度信じてみるしか無さそうだ・・・。




