強いられた選択
ある二人の男が砂漠に足を踏み入れる。
砂漠の地に吹く熱き風が髪の間をすり抜けていく。
「ここがガルダか・・・。砂漠は暑いな・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
アルベールは黙ったまま、こちらを見た。
「さっさと用を済ませるとしようか。」
「ああ。」
相変わらず口が少ない。
そんな事より、今回の任務はこの大陸に蔓るハンターの説得、または消す事だ。
出来れば説得して済ませたい所だが、簡単には行かないだろうな・・・。
「さて、北と南どっちを先に片付ける?」
「・・・私にとってはどちらでも同じ事だ。」
「そうか。じゃあ、この村から近い北の方へ行くか。」
俺達は近い北側のハンター達が溜まっているアジトへ移動した。
どうやら、鉱山に居住しているようだ。
鉱山に近付くとハンターが一人、見張りしていた。
入り口の真ん中に立っているな・・・。透明化魔法でやり過ごそうと
思ったがこれではバレてしまう。とりあえず話をしてみるか。
「何者だ?」
見張りのハンターは俺を見るなりそう訊いてきた。
「俺はケイ。すまんがここの頭首に話があるんだ。通してくれないか?」
「ケイ?聞いたことねえな。話なら俺から伝えておく。用件を聞かせろ。」
「頭首と直々に話がしたい。どうしても通してもらえないか?」
「すまねえな。頭は忙しい。話してる暇なんて無いんだ。さっきも言った通り、
俺が伝えておいてやるから早く用件を言え。」
これ以上こいつを相手にするのは時間の無駄だと思った。
俺はこっそりと背中に手をまわし、魔力を手に込めた。
「すまないな。」
「ん?」
俺は掌を前に押し出し、睡眠魔法をハンターに掛けた。
「うっ・・・何だ・・・?」
ハンターは倒れ込み、そのまま寝てしまった。
おかしいな。睡眠魔法が直ぐに掛かった?
こいつが寝不足だったか。単に睡眠魔法が掛かりやすい男だったのか?
まあ、そんな事はどうでもいいか。早く頭首の元へ行かないとな。
俺とアルベールは透明化魔法を自身掛け、頭首の元へ急いだ。
鉱山の中は単純な造りだった。大きな一本道が中央に通っており、
その道から枝分かれして小さな部屋に繋がっている様だ。
俺達は大きな道を直進した。ハンター達にぶつかること無く、俺達の目の前に
大きな扉が姿を現した。運良く見張りは居ないようだ。
俺はその扉をノックした。「入れ。」と低く重い声が扉越しに聞こえてきた。
俺達は透明化の魔法を解き、大扉をゆっくり開けた。
そこには太った男が原石を眺めていた。
「誰だ?」
男は俺の姿を見るなり首を傾げた。
「ん~?見ない顔だな・・・。新入りか?」
「・・・俺の名前はケイ。ギルドの者だ。」
「ギルドの?来るとは聞いていないぞ?」
そりゃあ、そうだ。これは極秘任務だ。
「俺は極秘で動いている身でね。」
「極秘だと?・・・まさか!?」
男は持っていた原石を投げ捨て、突然立ち上がった。
「お前が・・・!くそッ・・・!!」
どうやら、俺等の正体に感付いた様だ・・・。男はこちらを睨みつけた。
「すまんが帰ってくれ・・・!」
「・・・俺等はただ平和的に解決しようとあんたに会いに来たんだ。
話だけでも聞いてくれよ。」
「話すことは何もない!帰ってくれ!」
「ギルドからも話は聞いているだろう?何故頑なに断る?
南と協定を結べば、この件を平和的に解決出来るというのに。」
男は渋い顔をし、俺を再度睨みつけた。
「貴様も分かっているはずだ。こちら側は広大な鉱山地帯の支配権を持っており、
南はあの遺跡を発見し、金塊を掘り起こしている。」
「これ以上話さずとも分かるだろう。我々は意志を変えるつもりはない。」
「・・・・・・・・・・・。」
勢力的にも有利な北側のハンター達が南側を制圧する事で、鉱山と遺跡の両方の利益を
独占しようという魂胆だろう。北の鉄鉱石と南の金塊。それを手に入れるためか。
「私達が掘り出した原石を安々と南側の奴等と分け合う?
ふざけるている協定だと思わないか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「さて、もう良いだろう!!」
「どうしてもダメか?」
「・・・・・・・・帰れ。」
「・・・ふぅ、こちらとしてもただで帰るわけにはいかないんだ。」
俺は剣を抜いた。男はそれを見て慌て始めた。
「その剣で私を殺すつもりか!?そんな事をして、ただで済むと思っているのか!?」
「問題はないさ。ここに住まう雑魚共に囲まれたくらいで俺達は死にゃしない。」
「それに、お前を殺す事はギルド公認だ。」
「馬鹿な・・・。」
「悪いが死んでもらう。」
「そ、それで脅したつもりか?俺は死んでも協定を結ぶ気は無いぞ!!」
それを聞くとアルベールは俺の隣に立った。
「もう無駄だ。こいつは欲に溺れている。」
アルベールの言う通りだ。この男は自分の欲のために命までも懸けている。
金塊を自分の力で手に入れる事しか脳が無いみたいだ。何とかならないのか・・・?
元々、二つの勢力の頭首の始末。話し合いで解決できていたならば、
この問題は既に終わっていたはずだ。それなら俺の選択はこれしかないじゃないか。
俺は剣を前に突き出し、男に向けた。
「ヒイッ・・・!」
「お前には死んでもらう。これはギルド公認の決定事項だ。」
「!!」
手に握っていた刃は男へと向けられ、白く光る刃は男を刻んだ。
たちまち刃は赤く染まり、男の胸からは大量の血が流れ出した。
命を奪う。人の手で、俺の手で・・・。
重い沈黙の後に聞くに堪えないうめき声が響いた。
「うう・・・な・・ぜ・・・だ・・・。」
男は死ぬ間際、確かにそう言った。
「ギルドの意向だ。」
俺はそう答えた。そう、個人的な恨みとかそんなちゃちな問題じゃない。
これは世界規模での決定事項だ。俺は自分にそう言い聞かせた。
俺達は次の目的である南側のハンター達の居る遺跡へと向かった。
今度は話す意味など無い。もう北側の彼等は居ないのだから、南側の奴等を
皆殺しにしようが何しようが俺等の勝手だ。
それがギルドの命令だ。命令は絶対だ。これで世界が平和へと向かうというのなら、
俺はどんなに自分の正義に背く事をやっても、世界のために・・・。
「俺は・・・。」




