次なる大地
ケイに付いて歩くこと、もう1時間近くは経っただろう。
俺達は森の中を進んでいた。道標など一つも無いし、道という道も無い。
それなのにケイは迷ったような素振りを一つも見せず邁進していた。
「なあ、本当にこっちでいいのか?」
俺は心配になって、ケイに尋ねた。
するとケイは振り返り、「心配無用だ。」の一言だけ。
本当かどうか・・・。俺には皆を不安にさせないためにわざとそう言っているようにしか聞こえなかった。
更に森が深くなる。本格的に俺は不安に駆られた。
しかし、アルベールと次郎は一言も発さず、ただただケイに付いて行っている。俺だけがケイを信用していないとでも言うのだろうか?
不安ではあるが、俺もケイを信じてみるしかない様だ・・・。
少し歩くと、拓けた所に出た。俺はホッとしてケイに話しかけた。
「ここが、目的の場所なのか?」
「ああ、そうだ。目的地はもう少し奥だけどな。」
「そうなのか?」
「この先の洞窟に用があるんだ。
「洞窟って?」
「シェイの隠し洞窟なんだ。」
「あの神父の?」
「そうさ。とりあえず、先に進もう。」
ケイは再び、歩き出した。俺達はそれに続いた。
それにして、アルベールと次郎は何か考え事でもしているのだろうか。
全く、話す気配が無い。話しかけても無駄だろう。
「・・・・・・・・・・・・。」
森の奥へ進むと、岩壁が姿を現した。
「洞窟何てどこにあるんだ?」
「まあ、見てなって。」
ケイは岩壁のあちらこちらを手で探り始めた。
「お、ここだ。」ケイが何かを見つけたようだ。
よく見ると、岩がスイッチの様になっていた。ケイがその岩に触れると、
カチッという何かが外れるような音が鳴った。
そして、また壁を探り始めた。
「隠し洞窟って本当に隠しなんだな。俺はこの森に隠している事を
差しているのかと思っていたぜ。」次郎が口を開いた。
「ちょっと待っててくれ。どこかに入り口の隙間が出来たはずだ。」
「俺等も探すよ。」俺はそう言って岩を隈無く見渡す。
しかし、隙間と言ったらそこらじゅうに亀裂だらけだから、どれが正解か、
一つ一つ確かめなければならなかった。
「これじゃあ、骨が折れるな・・・。」
これくらいしないと隠し洞窟とは言えないだろうが・・・。
「まあ、そう言うなって!すぐに見つかるさ!」
相変わらずだなケイは・・・。とりあえず、入り口を探し続けた。
「・・・・・・・・・・・・。」
探すこと数分、見つからないな・・・。
もしかしたら仕掛けが壊れてたとか?
「おーい!ケイ!これか!?」
次郎がケイを呼んだ。ケイだけじゃなく俺とアルベールも次郎の所に集まった。俺達は次郎が指差す場所を見た。そこだけ不自然に長方形の穴が開いていた。ケイはその穴に手を掛け、横側に力を加えた。
すると、岩壁がスライドし洞窟の入り口が姿を現した。岩戸をよく見ると滑車がついており、軽い力でも開くようになっていた。
「こいつぁ驚いたな。」次郎は感嘆の言葉を呟いた。
「さて、これからが本番だぜ。」
ケイは洞窟の入口を指さしながら言った。本番ってどういう事だろう?
「全く、さっさと中に入るぞ。」
最近、アルベールは「さっさと」が多いな。
いや、最近でもないかいつも通りだな。
俺達は洞窟に入った。空気がこもっているのを感じた。少し息苦しい。
「シェイめ・・・。あの時以来、放置しっぱなしかよ・・・。」
「まあ、それもそうか。こんな森の奥の洞窟だしな。」
と、ケイは一人で渋い顔をして納得していた。
幸い、魔物がいなかったので奥へ行くのが簡単に済んだ。
そして、俺達の前に鉄製の扉が姿を見せた。ここが目的の場所かな?
「ケイ・・・ここなのか?」
「ああ、そうさ。」
ケイは返事をしながら、鍵穴に鍵を突っ込んだ。
扉は簡単に開き、更に奥へ続く通路が見えた。その通路を進むとそこは何かの部屋の様だった。部屋の真ん中には魔法陣が描かれている。その周りには小さい魔法陣も何個かあった。
「成る程な・・・。」
次郎はニヤッと笑い何かを理解した。もしかして、ケイはこの魔方陣で移動するのか?そのための魔法陣に違いなかった。
移動用魔法陣とは珍しいものを・・・。
「これが移動手段なのか?ケイ。」
「ああ、そうだぜ。」
「移動用の魔法陣か。どこの世界でもあるもんだな。」
次郎は顎に手を当てながらそう呟いた。
魔法陣で移動なんて完全に盲点でしか無かった。別の大陸への移動は普通、
船でしか行わないからな。移動型の魔法陣何て、どこぞのお偉いさんじゃあるまいし、そっちの発想に至る方が普通じゃない。やっぱり、ケイは偉い人か何かだったのか・・・?
「さて、始めるか。」
ケイはそう言うと魔法陣の中心に立ち、右手を地面に着けた。
何をするつもりなんだ?
「はッ!」
多分、魔力を送り込んだのだろう。右手からわずかに光が発せられていた。
すると、中心の魔法陣が光り出し、周りの小さな魔法陣も光り出した。
部屋中が光りに包まれ、何も見えなくなった。その後、光は収まった。
魔法陣が微かに光る程度にまで落ち着いた。何をしたんだ?
「何か変わったのか?」
俺はそんな疑問をぶつけた。確かに魔法陣に光を取り戻したが、
はっきり言って何が起きたのか。理解が出来ないでいた。
「変わったさ。」
俺の問いに答えたのは次郎だった。
「中心にあるのがメインの魔法陣、
そして周りにある魔法陣がサブチャネル。」
「サブチャネルというのはメインの魔法陣を補助する魔具の事で、
より強力な魔法を使う際には必ずと言っても良い程、使用頻度は高い。」
次郎はペラペラと魔法関係の話を説明した。
勿論、俺には何の事だがさっぱり分からない。
「そして、今起こった事を簡単に説明すると・・・。」
「ケイがメインの魔法陣に魔力を送り込んだ事により、リンクされていた
サブチャネルの小型魔法陣にも魔力が供給され、メインの魔法陣に必要な 出力を満たした結果、この移動魔法陣の機能を十分に使える状態になった んだ。」
ダメだ。頭が混乱する。にしても、
次郎も何者だ?こんな知識を知ってるなんて・・・。
「ご名答!」
ケイは次郎の解説に対し拍手をした。
「無駄話はそこまでだ。行くぞ。」
「はいはーい。じゃあ皆、魔法陣に乗ってくれ。」
アルベールは魔法陣に乗った。それに続いて俺達も乗った。
「よーし!行っくぞーーーーーーーーー!」
ケイが勢い良く号令を掛けると同時に魔法陣は光り輝いた!
そして、俺達は次なる大地へと転移した。砂漠の地・ガルダへと・・・。




