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でびるハンター  作者: 片山翔
第四章 周る世界と繰り返す歴史
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更なる旅路-アルベール Side-

ケイ達が教会に入ってから数分経った。


陽はとうに沈み、頭上には下弦の月が見える。

人間が測る一日というものは私にとっても短いものだ。

太陽と月が目まぐるしく廻る。

そんな世界で私は「人間」というものを長い間見てきた。


「運命か・・・。」


運命。そんな言葉が私の口から溢れた。

争い、咎め合う事でしか生きていくことが出来ない。

人間というものは愚かな種族だと思っていた。それが不完全なる者の証だと。


それならば、私自身も争いの渦中で生きてきた。

絶対的な力、全てをねじ伏せる権力。

それだけが全てだと、それこそが完全なる存在の証明だと。


そう、思っていた・・・。


長い間見ていた。確かに見ていただけだった。

見ることだけでは測ることが出来ないことが多々有った。


「人間」の力というものを。


人間の力など、魔の力と比べるまでもなく脆弱なものだと思っていた。

だが、ここ数年で考えは大きく変わることになった。

人間の中にある脆弱ながらも強大な未知の力。

それが私に理解できる訳もなく、それを解明するために

私は旅をしているのかもしれない。


旅の目的か・・・。


私はそこで思考を一度止め、体に感じる感覚に思考をずらした。

夜風が肌に触れ、辺りの草の匂いが鼻を刺激する。


「ふッ・・・。」


人間の感覚というものは面白いものだな。

あまりにも敏感すぎるこの体は、熱も寒さも痛さに感じ、

雨に降られれば体力が低下し、過度な運動をすれば筋肉は疲弊する。


私は目を閉じ、また考えに耽った。


「人間」が不完全な存在とすれば、完全なる存在は何者なのか・・・。

その時勢い良くドアが開いた。私は目を開けるとそこには慌てた様子のヒロがいた。


「どうした?」

「宿屋取っておくの忘れててさ!今から取ってくるから、じゃあ、後で!」

「・・・・・・・・・・・・。」


そう言うとヒロは薄闇の街に消えていった。

全く騒がしい奴だ。まあ、そこがヒロという奴の面白いところではある。

不完全だからこそ互いに支え合う・・・か。おかしな種族だ。

他など荷物に過ぎない。それを自ら喜んで荷物を背負う。

そこがまた面白いのだがな・・・。


「私も人と関わる運命だったか・・・。」


何にせよ、人間を知ることで新たな事が分かるかもしれん。

完全なる者と自負していた私に足りなかったものがな。


「・・・・・・・・・・・・・・。」


しばしの沈黙の後、教会の中から足音が聴こえた。間を置かずにドアが開いた。


「話は終わったようだな。」

「ああ、次はガルダに行く事になった。」

「分かった。」


ガルダか・・・。呪われた砂漠の大地、血に塗られた歴史。

人間は同じ事を繰り返す。それが誤ちと気付いていながらも自己の私欲のために

奴等は何だってする。同じ人間でも違う人間。


まあ、魔族でも同じ事が言えるだろう。北の魔物と南の魔物。

同じ魔族だが、体躯から考え方までまるで違う。


「さて、宿屋に行くかー!」


ケイはあくびをしながら両腕を高く上げ伸びをした。

宿屋など必要ないのだが、体の方は休息を欲しているようだ。

この人間の体は思った以上に疲れやすいのだ。


「ケイ。ガルダに行ってどうするのだ?」


その問にケイは深く考えている様子で答えた。


「よく分からんが、ヒロが行きたそうな感じだった。

 まあ、それに一番近い大陸でもあるし、順当じゃないか?」

「・・・ふ~む。」


ヒロが?本当によく分からんな・・・。

そんな事より、一番近いからという安易な考えで決めたのか?

本当にそうだとしたら、全くこいつの脳天気さには呆れるの一言に尽きる。

まあ、いつもの事だと思えば良いだろう。私がまともな意見を述べたところで

意味の無い事はもう十分に分かり切っている。


「とりあえず、ゆっくり世界を周ろうよ。それからでも遅くないよ。」

「遅くない?何の事だ?」


ケイは私の言葉を聞くと少し動揺し言葉を繋いだ。


「ま、まあさ!情報源が無いんだし!世界を周って情報集めようぜ!」

「・・・まあ、いいだろう。」


ケイの事はさておき、次郎とかいう男。

一般人の様な格好をしているが、どうも怪しい。

教会に入る前に煽りを入れてみたが、その程度で口を滑らせる様な男ではない

という事くらいはこの男から感じる妙な魔力から推測できる。


「次郎とか言ったな?目的を聞いていなかったからな。答えてもらおう。」

「ああ、良い忘れていたね。すまない。実は魔術戦争について調べていてね。」


魔術戦争・・・か。人間には早すぎた叡智に触れてしまった結果、起きてしまった

この世界では人間にとって最大規模の悲劇となっただろう。

こいつもその闇に触れようとする愚かな人間か?


「その関係者であるハンター達を探していてね。それで、レイアを追っている

 君達を酒場で見つけてな。それで今に至るという訳さ。」


次郎という男は真っ直ぐに私を見ながら答えた。

後ろめたい事は考えていない様に見えるが、実際のところはまだ分からん。

人間というものは仮面の種族でもある。表情一つで本心が分かる様な

簡単な種族でない事は、人間を見ていて気が付いた。

そう、こいつ等は平気で嘘を吐く種族なのだ。


「貴様の言い分は分かった。とりあえずは仲間に入れよう。」

「しかし・・・。」


「!!」


「ッ!?」


「貴様が我等を裏切るような行動を少しでも見せたら、

 私がこの手で殴り殺す。」


私は次郎めがけて拳を突き出し、警告の言葉をぶつけた。

次郎は落ち着いた表情のまま、私の拳を両手で覆うと拳を収めるように促した。

「君が仲間を想う気持ちは伝わったよ。その気持ちに答えないといけないな。」

この男、ケイと同じ様なニオイがしおる・・・。

言葉もそうだが、このどこか見透かされているような感じ・・・。

一番触れて欲しくない所を突いてくるようなその口ぶりに腹が立つ。


「貴様は何か勘違いをしている・・・。」

「ケイやヒロがどうなろうと構わん。

 ただ私の邪魔をする様な行為は慎めという事だ。」


次郎とケイは二人で顔を見合わせ、口元だけニヤニヤし出した。

もしかしたら、最凶のタッグがここで誕生してしまった様な気がした。


「さてさて、アルベールちゃん!気が済んだかな~?」

「ぐへぁ!」


私はケイの腹に一撃を加えるとその場を去った。

全く、人間というものはどこまで私をおちょくれば気が済むのだ・・・。

人間など、私の手中で踊る小動物に過ぎん。

その気になれば、こんな小さな街も一夜の内に瓦礫の山に変えることも容易い。




「容易いことなのだ・・・。」



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