悪魔と人間
ここに来るのは何年ぶりだろうか・・・?
風化は少しばかり進んではいるものの、
あの時と変わらない教会が目の前に建っている。
最も、あの時とは違って周りに家が何軒も建っている。
あの焼け野原にそびえ立つ教会の面影はどこにもない。
私はドアノブに手を掛け、古びた木製のドアを開ける。
その扉はギシギシと悲鳴を上げながらぎこちなく開いた。
このドアも昔の変わっていない・・・。
中央のステンドグラス越しに差す夕陽が、
教会の中を薄暗く照らす。神父はこちらに気付いていないようだ。
よく見ると本を読んでいた。こいつも変わっていないな・・・。
私は神父に近付くとさすがに私の存在に気が付いた様だ。
「何か御用でしょう・・・か。」
神父は一瞬言葉を失いかけたが、何とか言葉を繋ぎ合わせ、
私を見て微笑んだ。
「ふッ、久しいな。シェイ。」
私は鼻で笑いながら、再開の言葉を口にした。
「ふふ、もしやと思いましたら、
やっぱりアルベールさんでしたか。」
「貴様は未だに神とやらを信じているのか?」
突然の私の問いに驚くも、シェイはすぐに返答した。
「はい。信じていますよ。」
「何故だ?この世界に神など存在しないというのに。」
「いえ、いるんですよ。アルベールさん。」
「・・・?」
シェイはいつもにこやかだ。
そのにやけ顔から感情を読み取ることはできない。
こいつはいついかなる時も表情を崩さないのだ。
本を閉じ、シェイは私の方を真っ直ぐに見ると語りだした。
「人、一人ひとりの心の内に・・・。
私はそう信じています。」
「・・・・・・・・・・。」
全く意味が分からん事を言う。
神の教えとやらに従い、その教えで人格を形成していく。
人は何か一つのモノ、すがるべきモノが在る方が良いのだろう。
人間の気休めにすぎんか・・・。
私は己自身しか信じて来なかった・・・。
故に、自分以外に崇めるべき存在など在りはしない。
「どうしました?」
「いや、すまんな。お前の生き方だ。お前の好きにするがいい。」
いつも表情を崩さないシェイが、
今まで見たこと無いくらいに驚きの色を見せた。
そして、また元のにやけ顔に戻った。
「ありがとうございます。」
何に対しての驚き、感謝をしているのか。私には分からなかった。
「それではな。私は行くべきところがある。」
私はすぐにその場から立ち去ろうとした。
「アルベールさん。」
シェイは私の名を呼んだ。まだ何かあるのか?
私はシェイの方に振り向いた。
「いつでも、ここへ来て下さいね。」
「ふッ・・・。ああ・・・。」
少しばかり自分の口元が緩んだことに対し違和感を感じた。
いつもとは違う自分自身のその笑みに・・・。




