血で血を洗う
そうだな・・・。
これを聖戦と名付けるにはちょっとばかし、汚れすぎてるな。
「種族間の争い。生き残りを懸けた抗争。
自我のぶつかり合い。」
血で血を洗う汚れた聖戦。
エゴとエゴがぶつかり合えば、そこには矛盾が生まれる。
分かりきってることだ。
互いに理解し合えさえすれば、争いなど起こりはしない。
そんな事を解っていても分かり合おうなんて思わない。
曲げれないモノが人間にはあるらしい。
力が強い、弱い関係なく、
それは人間に宿っているらしい。
力弱き者が何を希望にできる?
自分の非力さを呪うだろうに。
人は何故、抗おうとする?
自分が弱いことなど百も承知のはずだ。
何故だ?
強き者は生き、弱き者は死ぬ。
そんな世界に生きてきた私には到底、理解など出来ん事だ。
しかしながら、興味は湧くものだ。
力弱き者に宿る強い意志?とやらにな。
「・・・・・・・・・・・・。」
復讐心とでも言うべきか。
私の世界では到底考えられないな。
弱き者は強き者に従う。
それが当然の如く行われている世界だ。
生まれながら弱い者が強い者になれる望みはない。
生まれた時から魔力量は決まる。
それは増やすことも減らすこともできんのだ。
だが、人間は違った。
魔力が少ない人間が多くなったり、
多い人間が少なくなったりする。
面白いことに人間は「可能性」に満ちているのだ。
どんな脆弱な者でも一騎当千の強者へと成り得る世界。
そんな事が本当に起こり得るのか?
私はずっと思っていた。
在り得ないと・・・。
しかし、それは裏切られた。
そう、初めて私の考えが覆されたのだ。
あの人間によって・・・。
今、私の目の前にいるこの一人の人間によってな・・・。
「・・・・・・・・・・。」
「アルベール。ヒロ。準備は良いな?」
「フッ・・・。」
「とうに出来ている。」
「よし!ゴー!」
その合図でケイは走り出した!片方の剣を魔力で操り遠くの敵を斬り、
もう片方の持っている剣で近くの敵を倒す。
ケイの得意技「乱れ十字」だ。
「何だ!?こいつ!」
「驚くのはまだ早いよ!」
私は一匹のコボルトに魔力波を撃ち込み吹き飛ばした。
「何!?」
「隙だらけだ。」
私は周りの雑魚を蹴散らすと、ボスの前に立った。
直ぐ様、雑魚共が私を取り囲んだ。
「ヒロ。周りの雑魚を頼む。」
「お、おう!」
ヒロにはケイが付いているから心配はないだろう。
魔力で操っている剣はヒロを狙っているコボルトを確実に切り裂いている。
「さあ、親玉との勝負だな。」
「貴様等、只者ではないな?ハンターの類か?」
「私を人間の尺で測ってもらっては困る。
それくらいお前は分かるはずだ・・・。」
私はボスコボルトを睨みつけると、奴は一瞬怯み、
驚きの色を隠せずにいた。
「ま、まさか・・・。」
「いや、だが人間の姿をしている?
どういうつもりなんだ?テメエは。」
「なに、少し興味が湧いただけの話だ。
そしてこの一興にただ身を投じているだけだ。」
「く、くそ!人間風情の肩なんて持ちやがって!
それでも魔族かァ!」
「私の考えだ。言っただろう。興味が湧いたと。」
「さて、種族代表の戦いだろう?
まさか逃げる訳には行くまい?」
「ぐうううう!クソーーーーーーー!」
コボルトはヤケになって突っ込んできた。
勝てないと分かれば単純な種族だ。
私は掌に溜めた魔力を前方に解放した!
一挙に放たれた魔力をコボルトに止める術など無く、
前方にあるもの全て、跡形もなく消え去った。
「・・・・・・・・・・・・・。」
血で血を洗うか・・・。
今も昔も大差はないな。下らん。
戦いに身を投じてきて解った事と言ったら、
これくらいなものか・・・?
果たして最も聖なる種族はどの種族なのか・・・。
私は聖なる種族の意味も真価もまだ理解できるところまで到達できていない。
これからもそれが最大の課題となって、私の双肩に伸し掛かる事になるだろう。
そして、私の中に流れる汚れ呪われた血が他の血族を滅ぼす。
その時、思い出したかのように一人の人間の言葉を思い出した。
「やるべき事を探しに行く・・・か。」
今はどこにいるか分からん奴の最後の言葉だ。
やるべき事、やらなければならない事・・・。
奴は見つけることが出来たのか?
再び会う日が来たなら問いてみるとしよう・・・。




