切れぬ戦いの糸
山から見える景色は絶景だった。
さっきまで俺達が居たエメルグリーンと
遠くの方でかすかにエレンの街も見える。
そして今、参ったことに橋が破壊されているという状況。
せっかくここまで来たのに、これでエレンの街に
帰ることになったら骨折り損だな。
「ヒロ。」
「え?」
アルベールが話しかけてきた。珍しいこともあるもんだ。
普段は黙っているか辺りを見渡すかしてるのに。
「お前はこの旅を何のための旅だと思うのだ?」
「え・・・っと。う~ん。」
何のためか・・・。そういやそんな事、
深く考えてなかったな。
あれこれ考えている内にケイが歩いてきた。
「一応、道はあったぞ。」
「ほう。」
「さあ、行こうぜ。」
「あ、ああ。」
ケイに付いて行くと、そこにはほとんど絶壁と
言っても過言ではないくらいの急な階段があった。
「ここを降りるのか・・・?」
「ああ。そうだよ。」
「そうだよって、ここどこに繋がってるんだ?」
「分からんが、この道は昔使われてたっぽいし、
多分向こう側に行けるだろう。
どっちみち、足止め食らってんだから進んでみる価値はあるだろう。」
「そう・・・だな。」
「んじゃ、俺から行くぜ。」
そう言うとケイは軽やかに飛び降りた。
続いてアルベールも飛び降りた。
飛び降れない高さではないが、俺は足がすくんだ。
「よ、よし。行くぞ!」
飛び降りてみると見た目よりそんな高さでも無いと
感じてしまうのは俺だけじゃないはずだ。
飛び降りる前はあんなに高く感じていたのに、
見上げてみるとそうでもないことに気が付く。
「この先はもう使われていない旧道だ。
何が潜んでいるか分からん。気を付けて行くぞ。」
ケイはそう言うと草むらを分けながら進んだ。
長い間使われていないこの道は当然、
手入れなどされていなかった。
腰ぐらいの高さの草が生い茂っている。
草をかき分けて進んで、数分も経たない内に、
洞窟の入り口を見つけた。
おまけに獣人がそこを塞ぐように立っている。
噂のコボルトか・・・?
「ど、どうするんだ?ケイ?」
「話をしてみる。場合によっては
通してくれるかもしれない。」
俺は直感的に無事に通してくれる気配がしなかった。
ケイがコボルトに近づくとあからさまに警戒している様だった。
「何だ?人間、何か用か?」
「そこを通してもらいたい。
ただ通してもらうだけでいい。」
「ああ?この先は俺等の領域だ。
人間を通す訳にはいかねえなァ。」
「そうか・・・。なら、これでどうだ?」
ケイは行き成り剣を引き抜くと
コボルトに強烈な縦斬りをかました。
「ぐぎゃあああ!てめえ!どういうつもりだ!」
「すまんな。先を急いでいるんだ。」
返り血を浴びたケイは冷静にそう言った。
「強行突破か・・・。嫌いじゃないぞ。」
横にいたアルベールはそう呟いた。
俺は何もできずただ見ているしかできなかった。
というよりもケイが少し恐ろしく感じていた。
「てめえ、後悔するぜ。」
「ほら、さっさと仲間でも何でも呼んできたらどうだ?」
「クソッ!」
コボルトは洞窟の中へと走り去ってしまった。
どういうつもりだ?仲間なんて呼ばれたら
俺達に不利なんじゃないのか?
「ケイ。どういうつもりなんだ?」
「あいつ等のやり方をごちゃ混ぜにしてやるのさ。」
「??」
「つまり、あいつ等の攻撃方法は基本的に
不意打ちを狙ってくる。」
「それを避けるために、わざと洞窟内に混乱を巻き起こすのさ。」
「まあ、上手くいけばの話だけどな・・・。」
そこまで言うとケイは剣を収め、洞窟の中へと歩いて行った。
「行くぞ。ヒロ。」
「あ、ああ。」
「面白くなるな。」
「え?」
全く、アルベールもケイもよく分からない。
危険を冒し過ぎている・・・。
常識外れな強さと行動が俺には理解できなかった。
そう思いながら洞窟の中へと入って行った・・・。




