巡ってくる朝
エメルグリーンにもエレンの街と同じような朝が来る。
カーテン越しから小鳥のさえずりが聴こえてくる。
一般的にはこれを清々しい朝とでも言うのだろうが、
俺にとっちゃ朝自体がとてつもなく怠いものだ。
清々しさの欠片もない。
怠い体に巻き付く暖かい毛布。
これだけが俺の幸せを感じさせる唯一のもの。
今はそれ以外、必要ない。
ドアの外では何やらざわめきが聴こえてくるが、
布団の中にいる俺にとっては関係ない。
外の事より、この暖かな布団でヌクヌクと過ごすのが
今の俺にとって至福の時間なのだ。
ゴンッ!ゴンッ!
突然のノック音に驚いた。
誰だよ!こんな朝早くから俺の安眠を邪魔する輩は!!
ドアを開けるとケイが立っていた。
相変わらずの笑顔に俺は少し気が抜けそうになった。
「おはよう!ヒロ!いい朝だぜ!」
「ああ、おはよ・・・。」
今すぐにでもまぶたが癒着しそうな俺にとっては
手厳しい一撃だ。ケイは本当にいつでも元気だな・・・。
「早速、朝飯食おうぜ!朝飯!」
「あ、ああ。ちょっと待っててくれ。
すぐに準備する。」
「おう!じゃあここで待ってるぜ!」
俺は部屋に戻るとベッドに体を叩きつけると。
覚悟を決めて、ベッドから跳ね上がった。
顔を洗い、髪を整え、服を羽織った。
「お待たせ。」
「おう!じゃあレッツ食堂!」
朝っぱらからこのテンションの高さ。
一緒に住んでるらしいアルベールは耐え切れるのか?
朝食を食べ終わった俺達はとりあえず、
この街で道具の調達を行うことにした。
回復薬、解毒薬、武器の手入れ等々・・・。
「よし、これくらいでいいか。」
「それで、ゲヘルザード山脈を越えるんだって?」
「ああ、レイアが向かった可能性が高い。
この街にいないならもう行く方向は更に東しか無いからね。」
「そんな事より、昨日の件は話はしないのか?」
「シッ―!!」
ケイは人差し指を唇に当てた。
いかにも俺に何か隠し事をしてるであろう動作だ。
何かあったのだろうか?気になりすぎる。聞いてみるしか無いな。
「昨日、何かあったのか?」
「ああ、う~んとな・・・。」
「昨日、また私達を狙ってきた奴がいた。
それが魔人でな。まあ、大したことはなかったがな。」
「そうそう。本当は別に言わなくてもいいかな~って思ってたけど。」
「はあ。でもまあ、無事でよかった。」
ということは俺が寝てる間に
そんな事があったって言うことかよ。
「何か俺、一人だけ寝ててごめんな。」
「良いってことよ!その分、今日頑張れば問題ないって!
それに昨日は疲れてただろ?」
まあ、確かにそうだけど。何か違うような。
俺はちょっと罪悪感に包まれた。
「そう、深く考えるなって!ヒロ!
明るく行こうぜ!明るく!」
「お、おう!」
ケイはあまり気にしてないだろうけど、
俺にとってはケイの足を引っ張ってる感が
どうしても拭えなかった。
それにしても、何で狙われてるんだ?
やっぱり、ケイに何かあるのか?
それとも、アルベールが狙われてるのか?
考えれば考える程、謎が深まるばかりだった。
「よし!ゲヘルザード山脈へ!いざ!出陣!」
ケイの号令と共に俺達は歩き出した。
山越えか・・・。これはまたしんどいな・・・。
俺は若干の体の怠さを感じながら山脈へと向かった。




