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でびるハンター  作者: 片山翔
第三章 旅立ち
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魔の力

森に吹き抜ける風が戦いの始まりを合図するように、

体をすり抜けていく。


「さて、行きますよ!」


ボイドという男はそう言うと、身構えた。

アルベールは腕組みをしながら、男を見た。


「!?」

「何のつもりですか?」

「好きに打ち込んでくるがいい。」

「油断は死を早めますよ!」

「自信がないのか?私に一撃を与える。」

「・・・・・・・・・・。」


男は構えを解いて、アルベールを睨み付けた。


「私はフェアな闘いがしたいのです。

 貴方が構えない内は、攻撃はしません。」

「フェア・・・か。」


俺が見る限り、確かにフェアではない。

だけど、アルベールから溢れ出る自信?

いや、圧倒的な余裕が理解できない。

あのボイドという男もそう感じるのだろう。


「仕方ない。貴様のフェアなルールとやらに合わせてやろう。」

「ありがとうございます。では、改めて行きますよ!」


男は真正面から突っ込んできた!

アルベールは男の拳を両腕で受け止めた。


「その程度か?」

「何故避けないのですか?今のは避けれたはずですよ?」

「・・・気に入らんな。」

「わざわざ、貴様の望むフェアと言うやつに付き合って

 やっているんだ。さっさと本気を出したらどうだ?」

「何ですと・・・?」

「貴方は私を馬鹿にしているのですか?」

「だとしたら何だ?」

「本気で闘いなさい。でなければ死にますよ?」

「先程も言った通り、油断は死を招きます。

 どんな強者でも、隙を突かれれば敗れるのです。」

「・・・・・・・・・・・・。」


沈黙。戦いの沈黙は重苦しい。

この時、俺は戦いに身を投じる者同士の空気の重さを

初めて感じたんだと思う。


「下らんな・・・。」


アルベールの鋭い眼光が辺りを凍らせるほど冷たかった。

まるで、人を蔑むかのような冷たい目だった。


「貴方はこの神聖なる闘いを下らないと?」

「私は姑息な手を使って勝ちを取るような、

 下賎な真似はしません。故に私は正々堂々と

 戦いに身を投じています。」

「それが下らないと貴方は言うのですか!!」


「ふっ・・・。全く下らんな。」


「貴様!まだ侮辱する気か!!」

「神聖なる闘い?人間風情がよく吠える。」

「貴様・・・!」


男はいよいよ、殴りかかろうと拳を固める。


「貴様が殺戮を繰り返す言い訳はそれだけか。」

「何!?」

「殺しを善とする行為。それ自体は私も賛成だ。

 だが、それを貴様自身の愉しみを正当化する理由付けにすぎん。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」


「それを聖なる闘いなどと・・・。笑わせてくれるな。」


しばしの沈黙。重い空気だ。

だが、男から怒りの情が消えたように思えた。


「取り乱してしまいましたね。確かにその通りです。

 私はいつしか闘いを愉しみの一つとしてしか考えられなくなっていた。

 それを正当化するためにルールを作ったに過ぎない。」

「ですが、私の生き様はもう変えられません。」

「戦争で全てを失った私は自分自身の生き方を

 失うわけには行きませんからね。」


「下らん生き様だな。」


「下らなくても結構!さあ、仕切り直しです!」


男は拳を再度握りしめる。

それに合わせて、アルベールも構えた。


「行きますよ!!」


男は走り出した。アルベールは構えたままだった。

男の一撃がアルベールに当たろうとした瞬間!眩い光が走る!


「何が起こったんだ!?」


俺はとっさに叫んだ。それにケイが答えた。


「魔防壁だ。」

「魔防壁!?何だよそれ!」


「魔力を一点に集中させて魔法の壁を作るんだ。

 それは高度な魔法構成でな。

 今の魔法技術でもやれる人間は限られている。」

「そんな高度な魔法をアルベールが使えるのか!?」


「ああ。彼女・・・いや、彼なら・・・。」


ケイの言葉を聞き終わる前より早く、物凄い勢いで衝撃波が俺達を襲った。

多分、魔防壁が受け止めた衝撃が周囲に発散されているんだろう。


「うわ!」

「ヒロ!隠れるぞ!」


俺とケイは倒れている大木の陰に隠れながら、

アルベールとボイドという男の戦いを見ることにした。


「どうしました?守ってばかりでは闘いは終わりませんよ!」

「もう勝敗は決まっている。」

「何!?この猛攻を破らぬ限り、貴様に勝ち目など無いぞ!」

「・・・ハッ!」


アルベールの掛け声と共に、魔防壁は吸収した衝撃を跳ね返した!


「何だと!?」


男は遠くへ吹き飛ばされ、立っていた大木に体を打ち付けた!


「静かになったな・・・。」

「終わったみたいだな。どれどれ。」


俺とケイが出て行くとそこには、

男が遠くの大木の下で傷つき倒れていたのが見えた。


「何が起こったんだ?」

「攻防一体の私の魔法に負けた。ただそれだけだ。」

「え??」


「アルベールの作り出した魔力の壁が敵の攻撃を吸収して、

 そのダメージをそのまま敵に返したんだろ?」

「そういう事だ。」


ケイは俺の後ろから語ると、あの男の前に歩いて行った。

それにしても、圧倒的な強さだな。強すぎて相手が弱く見えてしまう。

本当に敵が弱かったにしろ、アルベールの強さは異常だ。


一体・・・。何者なんだ・・・?


何だかアルベールが俺達とは違う、遠い存在に思えてならなかった・・・。

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