霧の中の刺客
霧は薄くなり、辺りも程よく見えてきた。
さて、私達を待ち伏せしていたこの男は一体何者だろうか?
盗賊の類ならば、面白みに欠けるな。
「おやおや、これはこれは。」
その男はこちらに気付いていなかった様な素振りで近づいてきた。
「あんたは?」
ケイは男に訊いた。
「私の名前はボイド。よろしく。」
「俺はケイだ。」
「ふふ、存じておりますよ。」
男は微笑した。ケイを知っている?
ハンターか何かだろうか?
「俺を知っている?」
ケイは冷静に疑問をぶつけた。
それに対して男は薄気味悪く笑いながら答えた。
「ふふふ、あなたに会いに来たのですよ。」
この男、格好はそこらの酒場にいるバーテンダーの様だが、
ケイに用があるだと?ただのバーテンダーでは無さそうだ。
「俺に?何の用だ?」
「はい。実はある方に頼まれて、貴方がこの森を通るのを
どうしても阻止しなくてはならないのです。」
私は少しの間考えた。・・・成る程そういう事か。
ケイも感づいているのだろう。
腕を組みながら、口元に笑みを浮かべていた。
「それが誰かは知らないが、俺達はこの森の先に
行かなきゃならないんだ。すまないが退いてくれ。」
「・・・おやおや。残念ですね。」
男は両手を広げ、困ったよな素振りを見せた後、
右手を胸に当てながら話を続けた。
「私はあなた方を止めなければなりません。
そう言われております。」
「力ずくでもか?」
「ふふ、そういう事になりますね。」
ケイはやれやれといった顔で、私の方を見た。
「ふ、どうやらこいつはなかなかの手練のようだ。
面白くなりそうだな。」
「おや?感の鋭いお嬢さんだ。一体何者ですかな?」
このボイドという男も私を外見でしか判断できないとはな。
人間などどれもほとんど変わらんな。
「それは私を倒せたら教えてやろう。」
「ふふ、面白いことを言いますね。
私を倒す自信でもあるのですか?」
「自信?違うな。そもそも格が違う。」
やはり、人間は身の程を知らない奴ばかりだ。
「こっちは三人もいるんだ。
あんたには勝ち目はないぜ。」
ヒロの言葉に私は名案が浮かんだ。
折角、面白そうな相手に巡り会えたのだ。
もっと面白くするのが至極、当然だろう。
「一対一でやろう。その方が公平だろう?」
「ふふ、面白い冗談ですね。お嬢さん。
それは敵に塩を送ったも同然。本当によろしいのですか?」
「当然だ。貴様など私一人で十分だ。」
「おい。ケイ。大丈夫なのか?」
「大丈夫さ。アルベールは負けない。」
さて、そろそろお喋りは終わりにしようか。
街での退屈な時間より、幾分は楽しめそうだな・・・。




