それぞれの思惑 -アルベール Side-
「やはり、これにも載っていないか・・・。」
分厚い本を閉じるとため息がひとりでに吐かれた。
全く、人間の書物などいい加減なものだ。
殆どが虚像で出来ている。
可能性。仮説。想像。
情報源が本だけでは、やはり物足りんな。
(魔界の遺産など、人間界には無いのか・・・。)
(だが、世界中には封印が点々と存在している事は確かだ。)
(これが魔界と何か接点があるに違いない。それにしても・・・。)
今回の依頼もつまらすぎた。退屈しのぎにもならない。
・・・奴の様子でも見に行くか。
私は書斎から出て、暖炉のある居間に歩いた。
「・・・・・・・・・・・。」
ふ~む。ケイが真面目な顔をしているな。珍しい。
「どうした?珍しく真面目な顔をしとるな。」
ケイは思考に耽っていたらしく、
こちらの存在に気が付くと微笑を浮かべた。
「ふふ、ちょっと、な。」
私はその笑みの意図がよく分からなかった。
「何だ、その笑みは。」
「いや、平和だなーって思ってさ。」
平和か。そういえば、こいつは昔から平和を望んでいたな。
だが、真の平和など夢のまた夢、空論でしか無い。
「平和か。今のところはな。」
私は毅然とした態度でケイに答えた。
「それよりさ。どうだ?最近の調子は?」
いきなり話題が変わったな。
こいつが何かを隠す時のいつもの癖だ。
だが、今は何を隠しているかを問い正すのも面倒なので流す事にした。
「特に問題ない。この体にも馴染んできたとこだ。」
実際、この借り物の体で真の実力を出せるまでは、
大分掛かりそうだった。
「それは良かった。」
返事に覇気を感じらんな。他の事を考えているようだ。
私の頭の中に一つの答えが浮かんだ。
(昔の事を考えているんだな。)
いつまで、過去にとらわれている?
「・・・・・・・・。」
「あれから、数年は経ったな。」
ケイの指先が動いた。やはり、昔の事のようだ。
こいつは昔の話を何故か喋りたがらない。
暖炉の炎が勢いを失いかけているのが、横目に映った。
「もう、寝ようぜ。」
ケイは立ち上がりそう言った。
表情には出さないが、早々に立ち去りたそうな素振りを見せた。
「ああ、私はもう少し調べ物をしてからにする。」
私は、書斎へと戻った。
数年前の魔術戦争か・・・。あれも人間同士の醜い戦いだったな・・・。
「・・・・・・・・・・・。」
そして、私は再び本を漁り始めた・・・。




