32.囮役
僕は翔さんの後ろに乗り一旦別の場所へと移った。そこには、イージスのみんなが待ち構えていた。
「お前なぁ。一人でやってんじゃねぇんだよ!こっちの事も考えろ!」
流さんから怒号が飛ぶ。
思わず罪悪感から俯いてしまった。
「すみません。しかし、警察も信用出来ないと聞きました。それなら単独でどうにかしようと……そう思ってしまいました。皆が居ないと何もできないのに……」
「分かってんなら頼れ!」
流さんがそんなこと言うなんておかしな事もあるものだと思い顔を上げると。皆が笑顔だった。
「亮、一人で抱え込む必要はないんだ。俺達はチームだぞ?」
護さんが寄ってきて肩を叩いてくれた。
その言葉が胸を温かくする。
「すみませんでした。どうにかしなきゃって……」
「あぁ。分かってる。警察関係者にも恐らく奴らに情報を流しているやつはいる。洗い出すより、利用しよう」
「はい。それで、翔さんの作戦ですか?」
「そうだ。お嬢様役は背丈的に咲月だな」
視線の先には先程のお嬢様くらいの背丈の咲月さん。にこやかに佇んでいた。肝が座っている。
「顔は隠すからなんとかなると思うわ」
「お願いします」
その後、俺達はお嬢様という体で咲月さんを護衛することになった。
◇◆◇
「対象、中へ入ります!」
警察関係者が居るホテルに着いた。
俺達が周りを固めて部屋へと行く。
「あんた達が護衛の人達か?」
「そうです。部屋の中と外から護衛します」
「別に俺達だけで良いのにな? ご苦労なこった」
そう嫌味を投げかける刑事はスーツを着てねじ曲がったネクタイが性格を表しているようだ。
「警察は外をお願いします」
「わぁってるよ。こんなに警察官いたら、誰も来ねぇだろ?」
そんなことを吐き捨て外へと歩いていく。
僕もそう思う。けど、奴らは……メデューサは違うらしいから。
ホテルにこれから缶詰めだ。
流さんたちと交代で休憩に入る。
翔さんと歩きながら近くのスーパーに行き、みんな分のご飯を買い込んでいく。飲み物も適当に買って戻る。
「飯買ってきましたよ?」
「おう。俺達は部屋の中で食うから外よろしく」
「わかりました」
流さん達が咲月さんとご飯を食べている中、僕と翔さんは部屋の外を見張る。
「メデューサ、来ますかね?」
「んー。さぁなぁ。来るとすりゃ夜中じゃねぇか? まぁ、いつ来るかはんからねぇよ。白昼堂々戦車とかで攻めてきたりしてな。ははははっ」
「そんなの笑い事じゃないですよ。ホントに来たらどうするんですかぁ」
「でもよ、それくらいヤバいやつらなんだよ」
そんなにヤバいやつらなのかと思うと胃が痛くなりそうだ。
このいつ来るか分からない緊張感っていうのは本当に心臓に悪いものがある。
だんだんと夜は深くなっていく。
──ダダダダダダダダダ
外から響き渡る音。
今は夜中の二時。
丑三つ時だ。
『……ブブッ…………銃器を載せた車両が接近中! 応戦する!』
インカムに通信が入る。
現在僕は咲月さんの護衛で部屋の中にいる所だった。
「来ましたね」
「警察がSIT出してるんでしょ?」
「いや、会った時のようすだと、期待はできなさそうでしたよ?」
僕が咲月さんにそう告げると、眉間にしわを寄せて怪訝な顔をする。
「なんでよ? 使えない。MCTは?」
「あの感じはいなさそうだったよな?」
と翔さんが答えるので、首を縦に振った。
ため息を吐く咲月さん。
囮とはいえ、咲月さんが殺されるのをみすみすと見ているわけにもいかない。
『……ブブッ…………まずいぞ。正面の警察官どもはハチの巣だ』
この声は流さんか。肝心の魔法者の部隊はどうしたんだ?
「MCTは来ないんですか⁉」
「警察のお偉いさんがそこまでの事態だと思っていなかったらしい」
こんな時にふざけているのだろうか。やばいって有名な組織を相手にしておいて、そこまでだとはしりませんでしたで済むわけがないだろう。
『まぁ、あの車両はどうにかなるさ。伴さんの手に掛かれば……』
その言葉と同時に凄まじい爆発音が響き渡り、窓を震わせる。
「何の音ですか?」
『エクスプロージョンだよ。伴さんは、魔法者だ。まぁ、俺もだけど……』
えっ?
流さんも魔法者?
あんなに強いのに魔法者なんて反則でしょ!
翔さんと咲月さんに視線を送ると頷いている。外の様子を見たい気持ちはあるけど、窓に近づいたらハチの巣になりそうだ。やめておこう。
『ハーッハッハッハッ! 思い知ったか! メデューサどもぉぉぉ!』
もはやどっちが悪者か分からないのでは?
そんなことを思いながら、戦う準備をする。
用意されていた銃を脇に装着して警棒を腰に下げる。
こうなっては、正当防衛もクソもない。ただ、殺されないように殲滅するだけ。外のみんなが頑張ってくれているのに、僕たちだけなんか申し訳ないなぁ。
部屋の中で護衛をしているけど、ここまで来るんだろうか?
そんな疑問を抱いて少し油断していたことを後悔することになった。
『おい! 窓から行ってるぞ! 警戒しろ! アクアカッターッ! くそっ! 届かねぇ。亮、腕の見せ所だぞぉ!』
甲高い衝撃音が聞こえた瞬間、何者かが中へと入ってきた。
手には、幅広のナイフ。
室内で魔法は隙が大きいから使わないだろう。
ということは、僕の土俵だ。
「亮!」
「はい。お任せを」
さて、超インファイト。見せてあげるよ。




