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警護組織イージス~人を護れなかった僕は、誰かを護る盾になる~  作者: ゆる弥


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2.新生活

 今度はまた別の雑居ビルに来ていた。

 さっきのビルに負けず劣らず凄まじくボロボロの様相で不気味な雰囲気を出している。

 

「えっ? ここですか?」


「そうだ。入るぞ」


 僕は逮捕術を学ぶということで護さんに案内されてここに来た。

 これから袋叩きにでもあうような雰囲気だ。


 ここでビビる訳にはいかない。やらなきゃ。そう心を鼓舞して中へと進んでいく。


 階段を一階、二階、三階と登っていき。

 何階まで昇ったのだろうか。完全に体力が限界を迎えて息が切れた頃。


「ここだ」


 息一つ乱さずにこちらを向いて言った護さん。

 こちらはといえばもう力尽きる寸前である。

 目の前には重そうな鉄の扉が行く手を阻む。


 扉が悲鳴のような音を鳴らしながら開いていく。

 足を踏み入れるとだだっ広い部屋に一人の壮年の男性が瞑想していた。


「先生。よろしくお願いします」


 先生と呼ばれた男はスッと目を開けるとこちらをチラリと見て立ち上がった。

 体が強張ってしまう。

 この人は、恐い。


 動物的な本能がこの人は危険だと告げていた。

 後ろに少し下がってしまう。

 いつの間には、壁に背をつけてしまった。

 

 知らないうちに呼吸が乱れている。

 この男が何者かはわからないけど、今まで関わったことがない強者だということはわかる。


「フンッ。そう怯える。とって食ったりせんわ……しかし、一年で同等にまでしろとは頭が狂ったかと思ったが……」


 その人は僕を頭から足先まで凝視している。

 全てを見透かされているようだ。


「ふむ。素材は一番いいかものぉ」


「本当ですか?」


 その男の言葉に護さんが驚いていた。

 僕も同じように目を見開いて驚いてしまう。

 何がそう感じさせるんだろう。


「亮。この方が君を指導してくれる。かつら 玄龍げんりゅう先生だ」


「お、お願いします……」


 萎縮してしまう。


「ホッホッホッ。こやつは話す方の指導はやらんのだろう?」


 愉快そうにしながらチラリと護さんをみて言った。


「やらないです。なので、ずっとこちらでお願いしたいんですが……」


 先生の眉間に皺が寄る。


「ふむ。それならばフルタイム使えると。……それなら、やりようはあるか」


 僕はまともな状態で生活できるんだろうか。

 なんだか心配になってきた。


「まぁ、それでも微妙なとこだな」


「なんとかなりますか?」


 腕を組んで難しそうな顔。

 眉間に皺を寄せ、目をつぶっている。

 今後の予定を考えているのだろう。


「間に合わせるわい。黒の中でも漆黒に近くしてやるわい」


「お願いします。では、明日の六時五十分で」


「あぁ。こちらも準備しておく」


「はい」


 護さんが頭を下げると後ろに引いた。

 手で先生に挨拶しろと言っているようだ。


「先生、明日からお願いします」


「ホッホッホッ。今日はゆっくり休め。明日からは休み無しだ」


「えっ?……は、はい……」


 礼をして玄龍先生の元を後にする。

 次に向かったのは徒歩十分。

 これまた怪しい感じのアパートだ。

 電気がチカチカしていて怪しい雰囲気だ。


 金属製の階段を登り二階に行くと、一番奥の部屋の鍵を開けた。


「ここが君の生活する部屋だ」


 ワンルームの部屋だが、綺麗だ。

 電化製品も揃っている。


「えっ? 僕が今までいた部屋は?」


「もう解約済みだ」


「えっ? 僕がなんで?」


 その僕の問いには答えることがない。

 ただ、冷静に部屋の鍵を渡してくる。


「で、部屋にあった荷物がこれだ」


 ドサッと地面にカバンが置かれる。

 随分と僕の荷物が少なくなったなぁ。


「必要最低限は残してある。食品は定期的に補充してやる。だから、金の心配はするな」


「あれ? お金ないと何も買えな────」


「大丈夫だ。必要な物はこちらで用意する」


 食い気味にそう答えた護さん。

 有無を言わせない感じ。

 もう僕はこういう世界に足を踏み入れたんだ。


 ここからは、もう後には引けない。

 やるしかないんだ。

 アイツを殺すためには、必要なことだ。


「では、明日から頑張れ。じゃあ、一年後」


 背中を向けて手を振りながら去っていく。

 本当にあの人に会うのは一年後になるんだろうか。


 部屋を見渡すと、本当に必要最低限の物しかない。

 寝床は布団が用意されているので、それなんだろう。

 エアコンもテレビもない。


 娯楽といっていいものは何もなくなっている。

 僕の家に置いてあったゲーム機とかはどうなったんだろう。

 捨てられてしまったんだろうか。


「はぁ。とんでもないところに就職しちゃったかもなぁ」


 その言葉に返事を返す人はいない。別にそれでもいい。どうせこの世に灯はいないんだ。ただ、僕は仇をとるためにここへ来た。


 そう考えれば、別に娯楽なんていらない。ただ灯のために。


 あの先生に教えてもらえるのであれば、強くなれるかもしれない。この体だってマッチョになるかもしれない。そんな未来を夢見て口角が上がる。


 だが、この時は気付いていなかったのだ。


 あの先生に教わるということが、どれほどの地獄かということを。

 その地獄はこれから一年続く。

 果たして耐えられるのかどうか。


 まさか僕という人間が一年で変わるなんて思いもしなかった。

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