Episode 9
荘厳なる廟堂にたなびく清冽な紫煙は、突如として天を衝く怨念を孕んだ狂風によって無惨にも引き裂かれた。女媧娘娘を祀る神聖なる聖殿。その珠玉の御簾が微かに震え、白玉の壁に刻み込まれた狂慢にして不遜なる筆跡を露わにした。それは商朝の帝辛(紂王)が、俗世の淫靡な情欲に塗れた己の欲望を剥き出しにし、万物の母たる聖人をあえて冒涜した詩であった。凡夫たる塵芥が、あろうことかその穢れた現世の尺度で上古の大神の美貌を推し量るという大罪。この神聖を穢す蛮行に激怒した女媧娘娘が冷ややかに袖を振ると、一条の聖なる光が九天の雲海を貫き、底知れぬ冷気に包まれた軒轅墳から三つの妖艶なる影を呼び覚ました。
風は百鬼夜行の怨嗟の如く凄まじい音を立てて泣き叫び、黒雲は幾千もの黒竜がとぐろを巻きながら天下を呑み込まんと待ち構えるかのように荒れ狂う。それは、間もなく人間界に降り注ぐであろう血生臭い大劫難を告げる不吉な前兆であった。妖気が織りなす濃密な霧の中から、三つの絶世の姿がゆっくりと顕現し、聖人の足元に深く平伏した。それこそが、九尾の狐狸精、胡喜媚(雉鶏精)、そして玉石琵琶精である。女媧の声音は絶対零度の如く冷たく、万物を化生させた造物主としての圧倒的な威圧感を伴って、天地を揺るがす密旨を下した。
「商朝の気数はすでに尽きた。暴君・帝辛の横暴は、神聖なる領域を激しく冒涜した。我は汝ら三者に命ずる。絶世の佳人へと身を変じ、朝歌の奥宮へと潜り込み、昏君の心を惑わし、成湯六百年の基盤を崩壊させよ。武王が伐紂の大業を成し遂げた暁には、汝らに正果を与え、仙界の列に加えることを約束しよう」
胡喜媚と琵琶精は「正果」という言葉を耳にするや否や、狂喜乱舞して額を地に擦りつけ、神恩に深く感謝した。しかし、間もなく絶世の美女・蘇妲己の肉体を乗っ取ろうとしている九尾の狐——その桃花を思わせる魅惑的な瞳の奥底には、微塵の歓喜すら浮かんでいなかった。彼女の心は、底が全く見えない万丈の深い秋の湖のように、不気味なほどの静寂に包まれていたのである。彼女は完璧な弧を描く鳳凰の如き双眸を天空へと向けた。そこには、数日前に起きた天地を揺るがす死闘によって引き裂かれた、紫と金色の空間の亀裂が未だに微かな痕跡を留めていた。
愚かな同胞たちは仙や仏になることを渇望している。だが、この妲己にとって、神仏からの「正果」などという施しは、吐き気を催すほど軽蔑すべき代物でしかなかった。彼女がこの密旨を恭しく受け入れ、六欲七情が渦巻く血生臭い泥濘へと自ら足を踏み入れ、六百年続いた商朝の威信を微塵に引き裂くことを承諾したのは、決して女媧の神威に平伏したからではない。それは偏に、彼女の永遠なる生命の中に君臨する唯一絶対の男——**ゲンソン・ジェスダ(Genson Jesuda)**のためであった。
天地を滅ぼす「天幻滅世無極眼」を持つ至高の真主が、今、五行山の麓で自らを幽閉し、移り変わる世の理を冷ややかに傍観していることを彼女は知っていた。妲己は微笑んだ。それは極限まで悲哀に満ちていながら、同時にこの世の何よりも誇り高い微笑みであった。彼女は己の魂の深淵に向かって囁いた。
「愛しいお方。貴方様はこの三界をただの盤上遊戯と見なし、微睡みを口実に世の者たちが狂態を演じるのを放置しておいでです。なればこそ、この妾が貴方様に代わり、最も血に染まった残酷な駒となりましょう。衆生の苦痛と断末魔を己の紅粉とし、商朝の骸と血潮を豪奢な絹織物に変え、貴方様が目覚め、この九重天を木端微塵に打ち砕くその日を待ちわびるための、血塗られた紅の絨毯を織り上げてご覧に入れます」
神廟から巻き起こった風は、万劫の殺意を乗せて真っ直ぐに南へと吹き荒れ、そびえ立つ城壁を越えて華麗なる帝都・朝歌へと流れ込んだ。この地において、天下泰平の眩い光は、すでに肉欲と残虐が織りなす漆黒の幕によって完全に覆い隠されていた。天を突くほどに高くそびえる摘星楼は、地上に迷い込んだ星屑のように煌びやかな灯りに彩られている。哀愁を帯びた竹笛の調べと、絹糸が奏でる艶やかな音色が、宮女たちの淫靡な笑い声に絡みつき、王朝の生命力を根こそぎ吸い尽くす魔性の協奏曲を響かせていた。
美酒は川のように絶え間なく流れ込んで「酒池」を満たし、獣の肉は無数に吊るされて「肉林」を成している。この極限まで奢侈を尽くした淫蕩な光景は、城門の外で飢えと寒さに泣き叫ぶ民草の阿鼻叫喚とは残酷なほどに対照的であり、まるで光と闇の二つの極が、終焉を迎えつつある時代の末期で互いを喰らい合っているかのようであった。
その底なしの堕落の中心で、帝辛は黄金の玉座に座し、白虎の毛皮で織られた絨毯に無造作に足を投げ出していた。彼の双眸には、今まさに献上されたばかりの傾国傾城の美女、妲己の容姿を舐め回すような狂わしい情欲の炎が燃え盛っている。彼女の美しさは、凡星のいかなる筆墨をもってしても描き出すことは不可能であった。その肌は崑崙の頂に千年降り積もった純雪よりも白く透き通り、その唇は忘川(三途の川)の畔で狂信者の魂を吸い尽くして咲き誇る彼岸花の如く赤く燃えている。長く切れ長な鳳凰の瞳は、絶望の深淵を思わせる魔的な光を放ちながらも、男たちを自らその底へと身を投げ出させるほどの致命的な魅力に満ちていた。
彼女が僅かに眉をひそめるだけで、咲き誇る花々すら呼吸を忘れ、そっと微笑みを浮かべるだけで、強固な玉座すら容易く崩壊させるほどの破壊力を持っていた。帝辛はその美貌に魂を奪われ、手にしていた葡萄の玉杯を床に落とすことすら気付かなかった。千斤の重さを持つ青銅の鼎を片手で持ち上げるほどの覇気を誇った帝王が、今や一介の女の流し目の前に完全に骨抜きにされている。暴君は天を仰いで狂ったように高笑いし、酒の勢いを借りて玉の楽器を叩きながら、軽薄な詩を高らかに詠み上げた。
「朕は万里の長き江山をこの手に握れども、
玉座を打ち捨てて麗しき佳人を待つ。
群臣の騒がしき諫言など通り雨の如し、
ただ願うは、深き夜の閨を温めんことのみ」
妲己はそこに佇んでいた。北の夜風に朝露のように薄い衣を微かに揺らさせながら。心の奥底では、目の前にいるこの愚かな昏君に対して吐き気を催すほどの強烈な軽蔑を抱いていたが、表面上は優雅に半歩退き、流れる雲や水のように軽やかな霓裳の舞を披露した。白玉のように美しい手で芳醇な酒の入った杯を眉の高さまで捧げ持ち、彼女はふっくらとした紅の唇を微かに歪めた。銀の鈴を転がすような、男の精神の奥深くまで響き渡る声で、絶対的な服従を装いながらも、その実、商朝の破滅を呪う返歌を詠み上げた。
「妾は高き楼閣に玉の影を落とし、
国の興亡など意に介さず、ただ酒を注ぐのみ。
大王がこれほどの御恩を賜るならば、
この江山と引き換えに、桃の花の如き笑みをご奉仕いたしましょう」
「見事だ!『江山と引き換えに桃の花の如き笑みを』とは誠に素晴らしい!」帝辛は手を叩いて歓喜し、欲火に理性を完全に焼き尽くされると、そのまま妲己を抱き上げ、真珠の御簾と玉の帳が垂れ下がる寝宮へと一直線に向かっていった。紫檀の重厚な扉が閉じられ、階下で必死に諫言を叫びながら叩頭する比干や商容ら旧臣たちの絶望の眼差しが遮断された瞬間、それは帝辛という男の運命を真の漆黒の闇が覆い尽くした瞬間でもあった。
色欲と幻夢に酔いしれた暴君は、柔らかい肢体を乱暴に抱きしめ、狂ったように彼女の首筋に顔を埋めてはその甘い香りを貪り吸った。己が絶世の美女を力で征服し、妲己の肉体も魂も完全に王の威光の下に屈服させたと信じ込んでいた。しかし、ああ、凡人の愚昧さで上古の狐族が張り巡らした致命的な罠をどうして見破ることができようか!
肌と肌が触れ合う寸前、妲己は密かに呪文を唱え、その瞳に桃色の妖しい光を閃かせていた。彼女は「天古媚術」を駆使し、自らの狐の毛を一本引き抜いて、己と寸分違わぬ幻影の肉体を作り出し、それを身代わりとして淫行の相手をさせていたのである。一方、彼女の真の肉体は冷たい煙のように部屋の片隅へと静かに漂い出ていた。
帝辛が龍鳳が彫刻された寝台の上で、妖術によって作られた幻影の肉体と狂わしく交わっているその裏で、真の妲己は花鳥が彫られた窓辺に清らかに腰掛けていた。白玉の手で頬杖をつき、酷く青ざめた月光を孤独に見つめている。彼女の瞳には深い悲哀の雫が満ち、幾千の山河を越えた遥か彼方、深い寂寥に沈む「五行山」の影を真っ直ぐに見据えていた。
彼女の精神は、果てしなく広がる洪荒の無極の時代へと遡っていた。ゲンスンの広く温かい胸の感触、天と地が揺れ動くほどに激しく交わり合った蟠桃の園での記憶。この肌も、この魂も、幾千万の過去の生から幾千万の未来の生に至るまで、永遠にあの無極なる至高の存在だけに噛み砕かれ、愛されるために存在しているのだ。彼女は背後で響く幻影と紂王の卑猥な嬌声を完全に無視し、闇夜に向かって静かに囁いた。
「ゲンソン……貴方様の息吹がないこの現世は、酷く汚れきっていて息苦しい。妾が貴方様に代わって、この天道という天道を徹底的に汚染して差し上げます。いつか貴方様が、あの世界を無に帰す紫金色の瞳を見開くその時、この世界のすべてが我らの足元に平伏し、絶望に泣き叫ぶように」
一方、朝歌の宮殿が権謀術数と底なしの色欲の闇に沈んでいた頃、別の方角、すなわち一年を通して雲と雪に覆われた崑崙山の頂では、肌を刺すような極寒でさえも、運命の歯車の急激な回転を凍らせることはできなかった。蓬莱の仙境の如き静寂は、玉虚宮から響き渡る重厚な鐘の音によって打ち破られた。
凡人の骨格を持ちながらも、乾坤の理を覆すという重大な使命を両肩に背負った弟子・姜子牙、またの名を姜尚は、元始天尊から放たれる神聖な威圧感の下で身を震わせながら平伏していた。白髪と白髭を蓄え、闡教を代表する純粋なる心を持つ老道士は、神秘的な光と千年の殺気を同時に放つ古びた巻物を、両手を高く掲げて恭しく受け取った。これこそが至高の法宝——**『封神榜』**である。それは数万の生霊の生死を決定づける羅針盤であり、戦場に屍をさらし、後に神の位に封じられる運命にある者たちの名が予め刻み込まれた絶対的な名簿であった。
元始天尊の声音は、轟く雷鳴のように響き渡った。
「姜尚よ、今こそ時機は熟した。商朝の気数はすでに尽き、暴君・帝辛を天は決して許さない。汝はこの『封神榜』を携えて下山し、西へと向かって真の主である姫昌を見い出せ。周を助け、商を滅ぼし、この大いなる劫難を完遂して三界に再び平穏をもたらすのだ」
姜子牙は涙を浮かべて恩師に感謝の意を捧げ、この絶対的な宝物を懐に厳重にしまい込み、打神鞭を手に取ると、風と雲に乗って人間界へと降り立った。
しかし、聖なる宝物の状態を再確認しようと人気のない荒涼とした山の頂に降り立った時、老道士が威厳ある巻物を思わず落としそうになるほどの、言語を絶する恐るべき異変が起こった。欠けゆく三日月の微かな光の下で、姜子牙がゆっくりと封神榜を開いたその瞬間である。
彼は極度の恐怖に目を見開いた。そこに刻まれているはずの天命を記した黄金の文字が、突如として狂ったように明滅し、暴風に曝された蝋燭の炎のように激しく揺れ動いていたのだ。天の理であるはずの法則が狂気じみた速度で逆転し、整然と並んでいた名前の列が乱れ飛び、複雑に絡み合い、浮かんでは消えていく。巻物の表面からは、肺腑を押し潰すほどのどす黒い殺気が怒涛のように溢れ出し、その強烈な波動に耐えきれず、姜子牙は鮮血を一口吐き出した。
姜子牙が知る由もなかった真実。それは、三界と五行の枠組みを完全に凌駕した絶対的な異数——ゲンソン・ジェスダ(Genson Jesuda)という存在の完全なる不在が原因であった。「孫悟空」という名を拒絶し、金蝉子を追い払い、その無極の力で因果律そのものを粉砕して自らを五行山の下に埋葬したその男の存在が、天と地という巨大なチェス盤に「決して埋めることのできない致命的な欠落」を生み出していたのである。
今の天道は、まるで盲目の狂人がめちゃくちゃに乱された駒を無理やり元の位置に戻そうと足掻いている状態であり、その結果、周と商、双方の運命はもはや本来の筋書き通りに進むことを放棄していた。
姜子牙は、手の中で小刻みに震え、熱を帯びる封神榜を必死に抱きしめた。老いた眼差しにはかつてないほどの狼狽が浮かび、南の夜空——血のように赤く染まった不吉な天空を見つめながら、絶望と姿なき恐怖が入り混じった声でうわ言のように呟いた。
「乾坤が……天地が狂っている……。一体、いかなる方角の真神が、天機をここまで握り潰したというのだ……? この迫り来る劫難は……もしかすると『封神(神を封じる)』などという生易しいものではなく……神々すべてを滅ぼし尽くす『滅神』の宴なのではないか……?」
未来の西岐の丞相となるべき男の下山の旅は、聖人の威光を世界に知らしめる前に、見えざる巨大な闇の力によって完全に覆い隠されてしまった。深い眠りにつく全衆生の運命の首筋を、底知れぬ巨大な手が今、ゆっくりと、しかし確実に締め上げようとしていたのである。
朝歌の都、南門に舞う紅塵には、戦火の煙など微塵も混じっていないかのようであった。ここは繁華を極め、馬車の喧騒と民草の商いの声が絶え間なく響き渡り、六百年の歴史を誇る成湯の屋台骨の奥深くに蔓延る腐敗を意図的に覆い隠す、虚構の太平の絵巻物のごとき様相を呈していた。その喧騒の中、白髪白髭の道長であり、封神の天命を背負う姜子牙は、小さな占いの屋台の前に泰然として静座していた。目を半ば閉じ、白髭を撫でるその神韻は飄々として俗世を離れ、凡界の喧噪など介意する素振りも見せない。生死を定める巻物を携えて下山した彼は、算命を口実に商朝の気数を密かに観察し、真の主君を補佐する時機を待っていたのである。肌寒い秋風が道袍の裾を撫で、微かな寒気を運んでくる。賑わう群衆の中から、しなやかな紅衣の影が歩み寄ってきた。それは妖艶な美貌を持つ若き女で、腰には胡蝶の絹帯を締め、地を踏む蓮の足は塵一つ帯びぬかのようであり、色目を遣うその双眸は万人の心を惑わす魅力を湛えていた。彼女こそは妲己の妹、玉石琵琶精である。宮中からの遊山帰りで、千年の修為と怨気を笠に着て、白日の下を堂々と闊歩していたのだ。「命を占い乾坤を定む」という看板を目にしたこの妖精は、戯れ心を起こし、姜尚の前にしなやかに腰を下ろした。白玉のように無垢な手首を差し出し、ウグイスの囀りのような甲高い声で言った。「道長様、乾坤を定められると仰るなら、どうか妾の今生の縁が円満にいくかどうか、占っていただけませぬか?」姜子牙はカッと目を見開き、その眼底には智慧の光が凝集した。彼は痩せこけた二本の指を伸ばし、女の手首の脈へと慎重に当てた。触れた瞬間、何千もの氷の針のような凍てつく陰気が彼女の肌から放たれたが、元始天尊の高弟を戦慄させたのはそれではない。子牙が天眼を用いてこの琵琶の妖の元神を見透かそうとした刹那、彼は青白い妖気の皮膜の下に潜む、鬼気迫るほどに艶やかな紫金色の、一縷の微かな残気に気づき愕然とした。塵芥ほどの小ささのその残気は、琵琶精が意図せず妲己から感染した怨気であったが、その威圧感はまるで宇宙のブラックホールの如く、瞬く間に子牙の探りの神識を粉砕した。五臓六腑が激しく震え、一口の鮮血が喉元までこみ上げたが、彼は法力を以てそれを無理やり呑み込んだ。子牙は冷や汗を流し、背筋が凍りついた。彼は悟った。このあまりにも強大な気息は、妖界のものでもなく、諸仙のものでもなく、ましてや女媧娘娘のものでもないことを!それは天道すら頭を垂れるほどの威厳を放つ、無辺なる実体の残滓であり、不在でありながらもその影が三界の全生霊を覆い尽くす者の気息であった。一刹那の猶予も置かず、姜子牙は掌に真気を練り込み、雷鳴の如き大喝を発した。「大胆な妖孽め、白昼堂々姿を偽り、民草を欺くとは!」言い放つや否や、右手に持った泰山石の硯を、彼女の頭頂へと渾身の力で叩き下ろした。「ドスッ!」脳漿が飛び散り、鮮血が舞って占いの台を赤く染め上げた。妖精は悲惨な叫び声を上げて倒れ込んだが、その神魂は未だ消散せず、半ば人間、半ば玉石の琵琶の姿を現した。周囲の民衆は恐れ慄き、散り散りに逃げ惑い、悲鳴が南門一帯を騒然とさせた。混乱の中、馬に乗って通りかかった丞相・比干は、刃傷沙汰を見るや兵士に包囲を命じた。姜尚は泰然と拱手し、妖魔の正体を証明するために火攻めを用いる許しを請うた。凡人たちの恐怖に満ちた視線が注がれる広場の中央で、姜子牙は祭壇を設け、口に真言を唱えながら指先から一筋の三昧真火を弾き出した。道家の聖なる炎が赤々と燃え上がり、容赦なく琵琶精の玉石の真身を焼き焦がした。妖魔は悲痛に泣き叫び、女媧娘娘に救済を乞うか、あるいは姜尚に手加減を哀願するかと思われたが、そうではなかった。猛烈な火の海の中で、琵琶精は次第に溶かされ、肉体が細かな欠片へとひび割れていく中、天を仰いで狂ったように笑い出したのだ。その甲高く、魔性を帯びた笑い声は聞く者の鼓膜を劈き、暗黒の狂傲を孕んでいた。彼女の双眸は子牙を見ることはなく、ただ遥か南方、永遠の雲霧が地平線を覆い隠す場所へと向けられていた。「腐れジジイめ!」炎の中で琵琶精は咆哮し、しゃがれた声で呪詛を吐いた。「己が封神榜を抱え、生死を定めているとでも思っているのか? ハハハ! 貴様らの死神の榜など、無極の御方の眠りの前ではただの反古紙に過ぎぬ! 貴様らは死んだ盤上で駒を奪い合っているだけだ! 五行山の麓におわすあの真主が目覚め、伸びをして幽閉を打ち破るその時を待つが良い。貴様らの永遠なる崑崙の頂も、この腐りきった天道も、惨めな灰燼に帰すのだ!」三昧の炎が燃え盛り、最後の不気味な笑い声を呑み込み、彼女の真身を砕けた玉の粉の山へと変えた。民衆は安堵の息を漏らし、比干は子牙の神通力を感嘆して称賛したが、姜尚ただ一人、広い袖の中に隠した両手は止めどなく震え続けていた。老いた顔は蒼白になり、冷や汗が滝のように流れた。妖精の呪詛が、ドリルのように彼の魂の奥深くに突き刺さった。無極の御方? 五行山? 彼は、九重天の空が引き裂かれ、不気味な静寂が人間界を圧迫した、あの日の戦慄すべき天象の異変を思い出した。彼は突如として、おぞましくも絶望的な真実に気がついた。この妖魔たちが下界に降りたのは、単に女媧の命に従い王朝を滅ぼすためだけではなく、その歪んだ魂の深淵において、名もなき邪神の勢力、すなわちその存在が封神の神籍の境界を凌駕している何者かに向けて、血塗られた儀式を狂気的に執り行い、生贄を捧げていたのだと。同じ頃、南門からの焦げ臭い煙が風に乗って瑠璃瓦をかすめ、豪奢な宮禁へと流れ込み、壮麗なる摘星楼の頂へと忍び寄っていた。狐の絨毯の上に物憂げに横たわる妲己は、白玉のような爪でよく冷えた葡萄を弄んでいた。彼女は微かに眉をひそめた。狐族に連なる怨気の繋がりが、妹の琵琶精がたった今、魂飛魄散したことを告げていた。妖魔の心には世俗の悲哀など微塵も浮かばず、代わって復讐の欲望と狂気じみた相思が入り混じった、歪で醜悪な感情が渦巻いた。妲己はゆっくりと立ち上がり、絹の衣が夜風に舞う。絶世の美しさを誇る鳳眼には、残酷極まりない光が閃いた。彼女は明月を陶然と眺めている紂王・帝辛の傍らへしなやかに歩み寄った。毒香を帯びた蜜のように甘やかな声で、彼女は暗愚なる君王の心に悪魔の企てを植え付けた。彼女は、日夜自らの廃位を要求する頑迷な忠臣どもを戒めるためと称し、斬新な極刑の奏上を思い描いた。傾国の微笑みに魅了された紂王は、即座に鍛冶職人に命じ、中空の巨大な銅柱を日夜造らせ、朝庭の中央に立て、その中に赤々と燃える炭火を詰め込ませた。その刑罰は「炮烙」と名付けられた。翌朝、鈍色の雲が太陽を覆い隠した。大夫の梅伯は暗君を諫めたがゆえに、死神の銅柱の最初の生贄となった。内側から猛烈な炎が立ち昇り、巨大な銅柱は地獄の炉から引き抜かれた鉄の棒のように真っ赤に焼け焦げた。梅伯は兵士たちに朝服を剥ぎ取られ、灼熱の銅柱へと身体を無理やり縛り付けられた。「ジュウ…ジュウ…」肉が焼ける焦げ臭い音が冒涜的に響き渡り、断続的に文武百官の鼓膜を引き裂く悲痛な叫び声がそれに混じった。骨がパチパチと爆ぜ、人脂が赤熱した炭の山に滴り落ちて、濃厚で悪臭を放つ黒煙の柱となり、朝歌の空へと螺旋を描いて立ち昇っていった。群臣は恐怖のあまり地に平伏し、震え上がって顔を上げることもできず、深宮の姜皇后もその報せを聞き、驚愕のあまり絶句した。しかし、風が吹き抜ける高台の上で、妲己は一人微笑んで立っていた。彼女は帝辛の逞しい胸に寄りかかり、血葡萄の酒が注がれた玉杯を手に、炮烙の炎が人の命を喰らう様を恍惚とした双眸で見つめていた。紂王は下劣に笑い、愛妃が王権への屈服を前に喜悦しているのだと思い込んでいた。だがこの暴君は知る由もなかった。狂気に満ちた妖后の心象風景においては、己が単なる道具に過ぎず、万の凡夫の悲鳴も単なる伴奏に過ぎないということを。妲己は静かに目を閉じ、ふっくらとした紅い唇で、暗黒の詩情に満ちた独白を微かに呟いた。まるで夢の中にいる唯一の恋人に囁きかけるかのように。「Genson… 凍てつく山の下で、さぞや寒かろう? 奴らはこれを炮烙の極刑と呼ぶけれど、妾にとっては肉欲と血の祭壇。成湯の六百年の覇業を燃やしてこの炎に変え、万の凡夫の命を使って、貴方様の眠りを温めて差し上げましょう。あの天を裂く悲痛な叫び声の数々は、妾が貴方様のためだけに綴る子守唄の音符。妾は最も絢爛で、最も血生臭い愛の香を焚き上げましょう。いつか貴方様がその紫金色の滅世の御目を開く日、この王朝は、妾が平伏し貴方様の御御足をお迎えするために捧げる、血に染まった赤絨毯となるのです…」ゆらめく炮烙の炎の下、宮殿の壁に投影された妲己の影は、狂愛と破滅の舞を踊る絶世の悪鬼のようであった。朝歌からの殺業は輪廻の因果の奔流に乗り、空間を引き裂いて西へと直撃した。純潔な月光の中に静かに沈む西岐へと。今宵の西伯侯の府邸は、沈香の煙が立ち込めていた。聖人の骨格を備えた賢明なる君主、姫昌は、静室で一人静座していた。彼は術数に精通し、周易の法則を掌握し、六十四卦の爻を用いて天機を透視し、塗炭の苦しみにある万民のための活路を見出さんと願っていた。姫昌は目を閉じ、老いてなお力強い両手で、天地の霊気を吸収した千年の蓍草を玉台の上へ撒いた。蓍草は舞い落ち、精巧な陣図を形作った。彼は安らかに微笑んだ。天機は掌を見るが如く明確に現れていた。殷朝の気数は既に尽き、暴君・帝辛は摘星楼で自焚し、武王・姫発は義旗を掲げて兵を挙げ紂を討ち、封神榜が群仙を定め、新たな秩序の循環が確立される。しかし、偉人たる者の完璧を求める本性が、姫昌に禁忌を犯すことを駆り立てた。彼はさらにその先を知りたくなったのだ。全精神、霊魂、そして精血を陣図に注ぎ込み、三界の後運を占い、封神の大劫が終結した後の世道の局面が如何なるものかを見極めようとした。彼は二度目の蓍草を撒いた。突如、静室の風が止んだ。窓の外の月光は濃厚な黒雲に遮られ、空間は暗黒の墨色と化した。玉の机に刻まれた八卦の陣図に、突如として鳥の足跡のような亀裂が走った。「ピシッ… メリ… メリメリ…」本来は鉄鋼よりも硬いはずの、姫昌の手にある数十本の千年の蓍草が、不気味なほどの静寂の中で一斉に二つに折れ曲がった。遥か遠き無極からの見えざる重圧が、殺気も怨念も伴わず、ただ内包しきれぬほどに偉大すぎる存在の重みとして、轟音とともに姫昌の魂へと圧い被さった。彼は開いた口が塞がらず、言葉を発することもできなかった。幻象が砕け散るその瞬間、西岐の賢王は玉座を見ることも、神仏を見ることも、崑崙の頂や霊霄宝殿を見ることもなかった。無限の時間の奔流の闇の中で、彼はただ、五本の指の形をした一つの山が、虚無の寂寥の中で孤独に、高く聳え立っているのを見た。その山の麓に、結跏趺坐する一人の男の影があった。抑圧されているが、それは幽閉ではなく、自己隔離であった。その者が呼吸をすれば、天地全体が愕然として縮み上がり、その者が眠りについて初めて、三界全てが虚構の秩序に従って運行することを許されるのだ。そして幻象の中で、その者は姫昌の盗み見を感じ取ったかのようであった。夢幻の漆黒の夜の帳の中で、一双の眼が開かれた。皇族の紫金色を帯びた両の瞳孔は、宇宙のブラックホールのように深淵にして冷酷で、彼の矮小な魂を無関心に一瞥した。「ブワッ!」姫昌は天を仰ぎ、赤黒い鮮血を吐き出して玉の机を真っ赤に染め上げた。視界は砕け散り、魂は究極の畏敬の念によって千の欠片に引き裂かれるかのようだった。大きな物音が外の者を驚動させた。戦甲を身に纏った息子の姫発が慌てふためいて扉を破って飛び込んできて、血溜まりに倒れ伏す父を見るや、激しく震える父の身体を急いで抱き起した。「父上! 父上! いかがなされました!? 刺客でございますか?!」姫発は恐慌状態に陥り叫んだ。姫昌は血に染まった両手で、震えながら息子の鎧の裾をきつく握りしめた。いつもの賢哲なる双眸は今や、言葉では筆舌に尽くし難い恐怖に満ち溢れていた。彼は最後の生命力を振り絞るようにして、一字一字を囁いた。幽冥の国からのこだまのように濁った声は、未来の武王の生涯に付き纏うこととなる預言を帯びていた。「発や… 違う… 天命など存在せぬ… 封神榜も… 闡教も… 截教も… この江山すらも… すべては… すべてはただの安っぽい継ぎ接ぎの茶番劇に過ぎぬ。我らは… 我らは血を流して殺し合い、盤上で勝敗を争っているが… その真の主人は… 眠りについておられるのだ…」姫昌は激しく咳き込み、唇の端から血を溢れさせ、南の天空の彼方へと絶望の眼差しを向け、その目は虚ろになった。「幾千万… 幾千万の時を経ようとも、あの五本指の山の下で眠る御方を、絶対に目覚めさせてはならぬ… もし… もし彼がその紫金色の両目を開けば… このすべての歴史も… 万物の生霊も… 塵一つ残さず抹消されてしまうであろう…」西伯侯の最後の警告は静寂の夜闇に溶け込み、計り知れぬ恐怖に震える父を抱きしめる姫発を残した。それは、五行山の麓で時の鼓動を数えながら横たわる者の、見えざる操作の中で台頭する一つの王朝の幕開けであった。




