↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星喰らいの王  作者: のあずぅあーくぅ
28/54

第七章 黒星の残響 16

「――喰う」


その瞬間。


ノアの右腕から溢れた黒い影が、一気に膨れ上がった。


地下通路の空気が震える。


怪物が初めて“恐怖”みたいな反応を見せた。


無数の目が、一斉にノアを見開く。


だが、遅い。


ノアは核へ手を突っ込んだ。


ズブッ――。


嫌な感触。


脈打つ肉。


黒い侵食線。


それら全部を掴み取る。


怪物が絶叫した。


地下通路全体が揺れる。


壁が砕け、天井から石片が落ちる。


だが、ノアは止まらない。


ドクン。


《蓄積値:230》


黒星が歓喜していた。


右腕の黒い影が、核へ噛みつく。


ギチギチ、と。


生き物を食い千切るみたいな音。


怪物の身体中を走っていた侵食線が、一斉にノアの腕へ吸い込まれていく。


レインの顔色が変わる。


「おい、やめろ……!」


だが、ノアには届かない。


視界が黒い。


頭の中へ、膨大な情報が流れ込んでいる。


向こう側。


侵食。


黒い星。


そして。


“銀の瞳”。


ノアは息を呑む。


まただ。


また見える。


黒い世界の中。


巨大な黒星を見上げる“銀目の何か”。


人間じゃない。


化け物。


なのに――。


どこか、自分に似ていた。


ドクン。


《蓄積値:235》


怪物が崩れ始める。


無数の腕が灰になり、侵食線が消えていく。


地下通路を覆っていた黒い線も、次々と光を失い始めた。


ルナが息を呑む。


「消えてる……」


セシリアの目は、怪物ではなくノアを見ていた。


いや。


正確には、“ノアの右腕”。


黒い影が蠢いている。


まるで意思を持っているみたいに。


アークが血を流しながら苦笑する。


「……銀目、お前ほんと人間か?」


ノアは答えない。


答えられない。


今、自分が何をしているのか、自分でも分からなかった。


ただ。


黒星が、異常なほど満たされていく感覚だけがある。


ドクン。


《蓄積値:240》


その瞬間。


怪物の身体が、完全に崩壊した。


黒い灰になって消えていく。


地下通路の侵食線も、一気に薄れていった。


静寂。


雨音だけが遠く響いている。


終わった。


誰もがそう思った。


だが。


レインだけは険しい顔をしていた。


「……まずいな」


ノアが顔を上げる。


「何が」


レインはノアの右腕を見ていた。


「侵食を喰いすぎた」


ノアは眉を寄せる。


その瞬間だった。


右腕が、脈打った。


ドクンッ!!


《蓄積値:250》


「っ……!?」


激痛。


ノアが膝をつく。


右腕の黒い影が暴れ始めた。


まるで身体の中へ入り込もうとしているみたいに。


「銀目!?」


アークが顔を変える。


ノアの右腕。


黒い侵食線が浮かび上がっていた。


セシリアが目を見開く。


「侵食……!?」


レインが舌打ちする。


「違う」


「え?」


「侵食じゃない」


レインの赤い瞳が細くなる。


「黒星が進化しかけてる」


地下通路の空気が凍った。


ノアは息を荒げる。


右腕が熱い。


痛い。


脈打つたび、知らない情報が頭へ流れ込んでくる。


黒い世界。


門。


侵食。


星。


そして。


“喰った者”。


『もっと喰え』


声。


黒星の奥から。


『それでは足りぬ』


「黙れ……!」


ノアが低く唸る。


その瞬間。


黒い影が、一気に広がった。


ズルッ――。


床を這う。


地下通路の壁へ伸びる。


アークたちが後退る。


本能的に分かった。


危険だと。


ノアの瞳。


銀色の中へ、黒が広がっている。


レインが低く呟く。


「……ここが境界か」


「何言って……」


ルナの声が震える。


レインはノアから目を逸らさず言った。


「黒星持ちは、一定以上喰えば“向こう側”へ近づく」


ノアの呼吸が乱れる。


ドクン。


《蓄積値:255》


黒星が歓喜していた。


まるで、あと少しで何かへ届くみたいに。


その時。


ノアの脳裏へ、知らない言葉が流れ込んだ。


『第二段階解放条件、到達』


ノアの思考が止まる。


次の瞬間。


右腕の黒い影が、一気に形を変え始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。