↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星喰らいの王  作者: のあずぅあーくぅ
19/54

第七章 黒星の残響 7

広場の空気が歪む。


男が笑った瞬間、周囲の温度が一気に下がったような感覚が走った。


生徒たちは後退り、誰も近づけない。


教師たちもようやく広場へ現れ始めていたが、その足は止まっていた。


近づけない。


本能的に理解している。


相手が危険すぎる。


ノアは短剣を握ったまま、静かに呼吸を整える。


心臓は速い。


だが、思考は異様なほど冷静だった。


黒星。


百を越えてから、明らかに何かが変わっている。


視界。


感覚。


情報量。


全部が増えている。


風の流れすら見える。


周囲の視線も。


敵意も。


恐怖も。


世界が、やけに鮮明だった。


「銀目……」


アークの声。


振り返らなくても分かる。


焦っている。


でも前へ出ようとしている。


セシリアは逆だ。


冷静だが、剣を抜くタイミングを探っている。


ルナは詠唱準備。


だが、まだ動かない。


全員、ノアの判断を待っていた。


ノアは小さく息を吐く。


逃げるか。


戦うか。


普通なら逃げる。


間違いなく。


勝てる相手じゃない。


だが。


「……試す価値はあるか」


男の能力は未知数。


だが、“見えない”わけじゃない。


完全に理解不能なら、ノアは今ここで死んでいる。


つまり、何かしら法則がある。


なら。


攻略できる。


黒星が脈打つ。


《蓄積値:103》


ノアは地面を見る。


さっき消された石畳。


綺麗すぎる。


破壊じゃない。


焼却でもない。


“削除”。


空間ごと消えている。


そして、発動前に共通点があった。


男が視線を向けた場所。


そこが消える。


「視認型……?」


ノアは小さく呟く。


男の眉が、わずかに動いた。


当たり。


ノアの思考が加速する。


見て、消す。


つまり逆に言えば、“見えなければ使えない”。


だったら。


「ルナ!」


「っ、はい!」


「光を」


ルナは一瞬で理解した。


魔法陣展開。


次の瞬間。


広場全体が白光に包まれる。


閃光。


生徒たちが悲鳴を上げる。


視界封殺。


同時に、ノアは動いた。


真正面じゃない。


斜め。


死角。


男の視線が通りにくい角度へ潜り込む。


速い。


だが男は微動だにしない。


「なるほど」


静かな声。


「理解が早い」


直後。


ノアは全身の毛が逆立つ感覚を覚えた。


危険。


反射的に身体を捻る。


その瞬間。


肩が“消えた”。


「――ッ!!」


激痛。


制服ごと、左肩の一部が削り取られる。


血が舞う。


広場が凍りついた。


ルナが顔を青ざめさせる。


「ノア!!」


だがノアは倒れない。


痛みを無理やり押さえ込む。


思考を止めるな。


見えた。


今の瞬間。


男は“見ていない”。


視線じゃない。


もっと正確には――。


“認識”。


視界だけじゃない。


位置を把握された瞬間に消される。


ノアの呼吸が浅くなる。


面倒すぎる。


だが。


完全無敵じゃない。


ノアは痛みを堪えながら笑った。


「やっと分かってきた」


男が初めて目を細める。


「……ほう」


「お前、自分で認識できてる対象しか消せないんだろ」


沈黙。


その反応だけで十分だった。


ノアの頭の中で盤面が組み上がる。


認識。


つまり情報。


だったら、情報量を飽和させればいい。


ノアは叫ぶ。


「アーク! 正面!」


「おう!!」


轟音。


アークが真正面から突撃する。


盾を構え、地面を砕きながら一直線。


男がそちらを見る。


その瞬間。


セシリアが動く。


左側面。


超高速。


さらにルナの光魔法。


視界妨害。


情報を増やす。


選択肢を増やす。


脳へ負荷をかける。


ノアは血を流しながら後方へ回る。


黒星が激しく脈打つ。


《蓄積値:108》


増え続ける。


頭の中へ情報が流れ込む。


敵の重心。


呼吸。


筋肉。


視線。


意識。


全部が見える。


ノアは歯を食いしばった。


この状態、長く使えば危険だ。


でも。


「今だけなら――!」


ノアが地面を蹴る。


男の背後へ潜り込む。


短剣を振る。


普通なら当たらない。


だが。


男が初めて“防御”した。


キィィン!!


金属音。


広場がざわめく。


「防いだ……!?」


「今の攻撃を……!?」


教師たちすら驚いていた。


男はノアを見た。


赤い瞳。


そこへ初めて、“興味”が浮かんでいる。


「面白い」


ノアは息を荒げる。


肩の出血が酷い。


だが止まれない。


ここで止まれば死ぬ。


男は静かに言った。


「やはり、お前は特別だ」


黒星が脈打つ。


ドクン。


《蓄積値:110》


その瞬間だった。


ノアの背後。


空間が、割れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。