↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星喰らいの王  作者: のあずぅあーくぅ
14/54

第七章 黒星の残響 2

視界の端が黒く染まる。


ほんの一瞬。


だが、その感覚は今までとは明らかに違っていた。


冷たい。


深い。


まるで、底の見えない闇を直接覗き込んだような感覚。


「……ノア?」


ルナの声で、意識が引き戻される。


気づけば、ノアは無意識に胸元を押さえていた。


黒星の脈動が異様に強い。


ドクン。


ドクン。


鼓動のたびに、頭の奥へ冷たい波が広がっていく。


「おい、大丈夫か?」


アークが眉を寄せる。


セシリアも無言でこちらを見ていた。


「……平気だ」


短く返す。


だが、完全な平気ではなかった。


何かがおかしい。


黒星が、ただ反応しているだけじゃない。


“呼ばれている”。


そんな感覚があった。


「各班、配置につけ!」


師範の声が訓練場に響く。


周囲の生徒たちが一斉に動き始める。


ざわめき。


足音。


武器の音。


緊張感。


学院全体が、一気に戦場へ変わっていく。


ノアは小さく深呼吸した。


今は集中しろ。


黒星の違和感は気になる。


だが、まずは模擬戦だ。


「行くぞ」


四人は訓練場を離れ、学院西棟へ向かう。


石畳の通路を進みながら、ノアは周囲を観察していた。


既に複数の班が移動している。


足音を隠している班。


あえて騒いで威圧している班。


奇襲狙いで姿を消している班。


性格がそのまま動きに出る。


ノアは視線だけで全体を分析する。


「二班は正面衝突型。五班は待ち伏せ狙い。七班は……」


「なんで歩いてるだけでそこまで分かるんだよ」


アークが呆れたように言う。


「足運びと視線」


「は?」


「正面衝突を狙う奴は周囲じゃなく前を見る。待ち伏せ型は死角を確認する回数が多い」


「……怖ぇよ、お前」


ノアは答えず歩き続けた。


学院西棟。


そこは古い校舎で、今はほとんど使われていない区域だった。


廊下は薄暗く、窓から入る光も弱い。


だからこそ、奇襲には向いている。


「ここを使うんですか?」


ルナが周囲を見回す。


「あぁ」


ノアは静かに頷いた。


「ここは音が響く。少人数でも人数を多く錯覚させやすい」


「なるほどな」


アークが感心したように笑う。


セシリアは壁へ触れ、静かに言った。


「……来る」


次の瞬間。


廊下の奥で爆音が響いた。


同時に、複数の足音。


ノアの目が細くなる。


早い。


予想より接触が早い。


「三班か」


「分かるのか?」


「足音が重い。装備が多い」


アークが苦笑する。


「相変わらず化け物みたいな分析してんな」


ノアは壁際へ移動しながら周囲を確認した。


敵は五人。


前衛二人。


後衛三人。


典型的な安定編成。


問題は――。


「……誘導されてるな」


「え?」


ルナが目を瞬かせる。


ノアは廊下の床を見る。


わずかに擦れた跡。


さらに壁。


不自然に削れた痕。


誰かが先にここを通っている。


しかも、意図的に。


「別班が三班をここへ誘導した」


「はぁ!?」


アークが驚く。


「つまり俺たちは――」


「挟まれる」


その瞬間。


後方。


別方向から足音が響いた。


セシリアが即座に剣を抜く。


ルナが魔法陣を展開。


アークが盾を構える。


完全に包囲だった。


「面白くなってきた」


ノアは小さく呟いた。


恐怖はない。


むしろ、思考が加速していく。


黒星の脈動が強くなる。


ドクン。


視界が鮮明になる。


音が遅く聞こえる。


敵の動きが、手に取るように分かる。


前方の三班。


後方の別班。


普通なら挟撃。


不利な状況。


だが。


「逆に利用する」


ノアは静かに言った。


「アーク、正面で暴れろ」


「おう!」


「セシリア、左通路を封鎖。ルナは光魔法」


「分かりました!」


「了解」


次の瞬間。


ノアが床を蹴る。


同時に、ルナの光魔法が廊下を埋め尽くした。


閃光。


視界が白く染まる。


敵たちが反射的に目を閉じる。


その一瞬。


ノアは動いた。


短剣が空気を裂く。


足音を消し。


呼吸を殺し。


敵の死角へ滑り込む。


「なっ――!?」


三班の前衛が反応した時には遅かった。


短剣が星札を掠め取る。


その直後。


アークが真正面から突っ込んだ。


「うおおおおッ!!」


轟音。


盾の衝突。


壁が揺れる。


完全に意識がアークへ向いた瞬間。


後方から来ていた別班が突撃する。


「今だ!」


「取れぇぇ!!」


混戦。


三班と別班が激突する。


ノアは後ろへ下がりながら、小さく息を吐いた。


成功。


敵同士をぶつけた。


戦場は力だけじゃない。


誘導できる。


操作できる。


その時だった。


黒星が、再び脈打つ。


今までで最も強く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。