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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第74層目

 さて、仮眠を取ったおかげで見張り番の疲れもある程度リフレッシュできた。

 あとは帰還したあとに寝れれば十分だろ、それよりも帰還した後にのんびりできることの方が嬉しい。


 気炎万丈、気分上々、意気揚々ってな。


 後ろから迫ってきてるかもしれない悪鬼羅刹の化身に捕まると、いよいよ帰還が遅くなりそうなので、ちゃちゃっとボス部屋を通過して帰還箱を通りたいところだ。


 その後ならいくらでもクチナシさんとの感動の再会(人身御供)にしてくれて構わない。


 俺たちはDEAに報告したら帰るので、また日を改めて訪ねてきて欲しい、姉御のことをな。

 こっちには当分の間来ないで欲しい。ただでさえ防衛戦やらなんやらで疲れてんだから、ゆっくり休みたい。


 そんなことを考えていると、集合時間となった。


「よし、それじゃあ40層に降りてこのダンジョンから帰還するぞ」


 姉御の言葉に全員が頷き、階段を降りていく。


「やっと帰れるね、カルマ」


「そうだな、かれこれ半月はこのダンジョンにいるからな……」

「もう9月も半ばなんて信じらんないね」


「そうだね。シルバーウィークも近いくらいだし、僕たちはのんびり休もうか」


「だなぁ、食料のストックも底が見えてきたし、ストック貯め直しつつのんびりすっか」

「買い出しとかは任せたぜ、相棒」


「1、3号を借りて沢山買ってくるね」


 流石に外で大っぴらにチェストの中へ突っ込むのはマズいからなぁ。

 まぁ相棒なら力任せに大量運搬できるから、日用品程度ならそんな問題でもないが。


「ねー、かーくんはどれだけご飯のストック持ってるのー?」

「この5日間、ウチらが増えても全然問題なさそうににごくんが配ってくれてたよー?」


「あー、まぁ俺ら2人で2ヶ月分くらいっすかね?」

「基本的に一気に作り置きするんであんま分かんないっす」


「すごー! でもそんなに一遍に作ったら腐っちゃわない?」

「かーくんのバッグ? スキル? は容量大きそうだから量は問題なさそうだけど、時間経過はむずかしーじゃん?」


 やっべ、どうすっかなぁ……。

 つか、俺らの呼び方がシレッと変わってら、別にいいけど。


「確かにそうね。2号さんのお手伝いをしてる時、野菜の鮮度がとても良かったのは私も気になってたわ」

「ただホオヅキちゃん、臨時でパーティを組んでいて、いずれクランに移籍させていただく身だとしても、まだ私たちは正式に加入した訳じゃないから、あまり詳細なことを聞いてはだめよ」


「ぶー、わかったよとかちゃん……」


 あっぶねー、助かったぜ。

 流石クチナシさん!


「でも推測するのは自由だと私は思うわ。だから一緒に考えましょ」


 そう言いながらこちらにウインクしてくる姿は憎たらしいほど様になっている。


 悔しいが推測するのは自由だし、それだけの材料を俺たちが出してしまっている以上仕方ないか。


「どうする? カルマ」


「どーもこーもねぇよ、全ての推測に黙秘権を行使する」

「ホオヅキさんには表情の微細な変化すら気づかれそうな気がするからな、気をつけろよ相棒」


「うっ、苦手なんだよねそういうの……」


「なに、帰還するまでの辛抱さ」

「それ以降は全部姉御に丸投げしてしまえばいい」


「聞こえてるぞ、バカルマ」


 げっ……。


「ったく、どの道私もそう詳しくは知らんからな。今度詳細に話してくれるなら引き受けてやろう」


 そういや0号のこと相棒に言ったっけか?

 つーか、あの時のことなんも共有してなかった気すらするな……。


「あー、うっす」


「その時がきたらちゃんと話しますよ、秋音先輩」


「うっすうっす」


 姉御にギロリと睨まれたが、そんな事よりも相棒に共有漏れしてた事の方が一大事なので、一旦無視する。


 やっぱ疲れてんだな、俺。

 帰ったら絶対寝よ。そして起きたら沢山のんびりするんだ……!


 前から聞こえてくる姉御たち三人の推測を柳に風と言わんばかりに聞き流し、階段を降りているとようやく40層にたどり着いた。


 いやー、長かった、ほんとに。


「当たり前だが、先約は居ないみたいだな」


「っすね、とりあえずハルさんが先行していた可能性はほぼ無さそうっすね」


「そうみたいだな」


 んー、地味に直感先生が反応してんな。

 こりゃそういうことかねぇ……。


「姉御、嫌(・)な(・)予(・)感(・)がするっす」


「ちっ、そうか」

「全員、扉をくぐったらすぐ戦闘になっても問題ないな」


 クチナシさんたちが、まだリポップしていないはずのボス部屋にまるで何かいるかのような姉御の問い掛けに困惑しながらも頷く。


 それを横目に見ながら相棒とアイコンタクトを取り、自分の体を改めて確認する。



 ーーーーー



 軽く飛んだり跳ねたり、相棒と組手をして体に問題ないことを確認できたので、扉の前で待っててくれた姉御たちの方へ向かう。


「お待たせしたっす」

「お待たせしました」


「問題ないな?」


「うっす」

「はい」


「予め初動だけ共有しておく。サズカル達が先行して内部を確認、ただのボスであればソウルの使用は控えて私たちを待て」

「もし選定であれば私たちを待たずにソウルを使用して臨機応変に対応しろ」


 まぁ、それが妥当だわな。


「私たちは2人が入った後に突入するが、突入後ボスがなんであれ速攻でソウルを使用、効果が確認でき次第サズカルは攻勢に出ろ」

「初動については以上だ。質問があるやつ……は居なさそうだな」


「はいはーい! もし何もいなかったらどうするー?」


「そんときゃ人騒がせなおバカの頭を叩いて終わりだ」


 うへぇ……。

 まぁでも実際、最後の最後にボスがリポップしてんのはダルいから、ボス部屋の中に何もいない方がいいわな。


 ただこういう時の直感先生からの反応は当たるんだよなぁ。

 だから警告って言ってる訳だが。


「相棒、予め火魔法借りてもいいか?」


「うん、いいよ」

「移心伝身(いしんでんしん)、火魔法」


「さんきゅ」

「じゃあ扉開けるっすよ」


 相棒から借りた火魔法を意識しながら、扉の先の漆黒へ体を浸す。


 よっしゃ。何がいても焼き魚にしてやるから覚悟しとけよ……!

 塩焼きにしてやる!

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