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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第75層目

 漆黒に染まっていた視界が元へ戻る。


 ……とりあえず選定の通達はなし、姉御達が来るのを待つか。


 天の眼(スカイアイ)を発動して辺りの地形を把握すると、基本的に今までの階層と変わらず、3割くらいが砂浜で残りは海といったところだ。


 並行して発動した熱感知スキルにも特に反応はない。

 取り越し苦労だったか……?


「どうだ、カルマ」


「今のところ反応は無しっすね、選定の通達も無いっす」


「そうか、珍しいな」


 警戒態勢そのままに、後からやって来た姉御へ現状を伝える。


「それにしては帰還箱が見当たらないわね?」


「そうっすね、俺が見渡せる範囲内には見えないっす」


「となると……カルマ、ソウルなしで海面を凍らせることは可能か?」


「できるっすけど、姉御が言うのはこの部屋の海面全部っすよね?」

「それなら少し時間が欲しいっす」


「あぁ、多少時間がかかる分には問題ない。頼んだ」


 分身たちを呼び出して全員でイメージを共有する。


「ホオヅキさん、魔法強化系のバフあるっすか?」


「もちもちだよー! マジックアップにダブルアップ!」


「助かるっす」


 さぁ、イメージしようか。


 それは全てを凍らす氷の息吹。

 それは命をも凍らす極低温。

 それは時の止まった永久凍土。


 混成なれど単一属性の四重奏(カルテット)。


「タイプ:カオス、モード:コキュートス」


 俺たち4人の手から吹き出る空色の風が、進路上の全てを凍らせながら扇状に広がっていく。


 凍った海面が波に砕かれる度にさらに分厚く凍らせ続け、ついには視界内を一(・)部(・)を除いて凍らせることができた。


「姉御、これ以上は凍らないっすね」


「そうか、よくやった」


「あーちゃん、1箇所だけ凍ってないところあるけどいいいのー?」


「あぁ、構わん」

「そろそろ来るだろうから全員戦闘態勢をとれ」


 姉御の言葉に呼応するように、海中から熱源がこちらへ近づいてくる。


 3号にコキュートスの維持を任せ、1、2号と共に武器を構える。


「相棒、カウント5で突っ込め」


「了解」


「5、4、3」


 熱源が海面を覆う分厚い氷塊を砕きながら、こちらへと近づく。


「2、1」


 1番表層の氷塊にヒビが入る。


「0!」


 俺の合図と共に相棒が風魔法で自身の背を押しながら吶喊。

 それと同時に氷塊が砕け、海中から半魚人より大きく、ダゴンjrよりは小さい人型のシルエットが飛び出してくる。


「姉御、アイツは?」


「半魚人-将軍(サハギンジェネラル)、Dランク相当のモンスター……つまるところこのダンジョンの正式なボスだ」


「将軍様っすか。……ってことは」


 俺が口にする前に、凍結しなかった海面と将軍が出てきた海面から、半魚人や人魚がわんさか出てくる。


 ……またかよ、もういいよ雑魚ラッシュは。


「はぁ……姉御、雑魚対応は俺がしとくっすから、2人を連れて相棒の方へ行ってほしいっす」


「分かった、行くぞ2人共」


「えぇ」

「はーい」


 相棒の元へ駆けていく3人に、雑魚どもが近寄っていくのが見える。


 このままだと相棒に合流する前に、雑魚どもと合流することになりそうだ。


「まぁ、そうは問屋が卸さないってな」

「2号、合わせろ」

「タイプ:ファイヤ、モード:カーテン」


「タイプ:カース、モード:スワンプ」


「「タイプ:カオス、モード:ファイヤモート」」


 雑魚どもの進路上へ、天の眼で見下ろしている高さからガスバーナーのごとく炎を吹き降ろす。


 吹き降ろされた炎が先頭集団を焼き焦がし、そのまま砂浜を溶かして炎の沼へと変えていく。


 そして炎のカーテンは横へ横へと広がっていき、この部屋を相棒側と俺側で分断する。


 うん、上手いこといったな。

 という事で2号にこの炎の堀の制御を任せる。


「さて1号、いつも通り討伐数勝負と行こうか」

「負けた方が帰還後ダッツ奢りでどうだ?」


 こうでもしないと雑魚狩りのモチベが湧かないからな。


 そう思いながら横を見れば意気揚々と頷く1号。

 そうでなくっちゃな!


「よっしゃ、じゃあ雑魚狩りと洒落こもうか」

「殺戮手段(キリング・チョイス)!」


 お互い背後に死神とルーレットを携え、炎の堀を越えることを諦めた雑魚どもへと突っ込む。


 さて、とりあえず半魚人を水魔法で倒すとかいう馬鹿げた手段を考えるか。


 恨むぞ、裁定者!



 ーーーーー



 Side サズキ


 僕の右拳と、立派な西洋甲冑を着込んだ半魚人のハルバードが衝突する。


 硬質な金属同士がぶつかる音が響き、お互いに弾かれて距離が開く。


 そんなことをかれこれ5回ほど繰り返している。


 どうやら現状、僕と目の前の半魚人の膂力は拮抗してるみたいだね。


 鬼人化(きじんか)を使用してしまえばサクッと終わるだろうけど、そうすると後に控えてる諸々へ響くので安易には使えない。


 となると次の手は、後ろから聞こえてくる足音の主達に助力を求めることかな。


「サズキ! 空を駆けて8秒後に後頭部!」


 秋音先輩の声が聞こえた瞬間、こちらへと放たれた水の槍をジャンプして躱し、そのまま天の道(スカイロード)を発動して宙を駆ける。


 てっきりカルマが来るかと思ってたけど、秋音先輩たちとは……あぁ、なるほど。


 眼下に見える炎のカーテンの先では、大量の半魚人や人魚に何故か水魔法を乱射してるカルマと、刀を振るう1号が見える。


 確かに雑魚処理ならカルマ1(・)人(・)の方が早く終わるもんね。


 じゃあこっちはサクッと終わらせて、あっちに合流しようか。


 この状態だとそこまで強くは無いけど、やらないよりマシということで右脚に雷を纏う。


「鳴無流ーー轟雷鬼(ごうらいき)」


 そんなことを考えながら、秋音先輩たちへと注意が向いていた半魚人の後頭部へかかと落としを喰らわす。


 首が凹むように撓んだ後、衝撃を吸収しきれなかった体が勢いよく地面へと倒れ込む。


「バカサズキ! コンマ5秒くらい合わせろ!」


「わっ、ごめんなさい!」


 ……カルマ以外に合わせるの久しぶり過ぎてミスっちゃった。

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