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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第73層目

 黙々と焼きおにぎりを頬張り、豚汁で口を潤す。

 醤油の香ばしさと味噌の旨味が口いっぱいに広がり、日本人で良かったとしみじみ思う。


 昨日までがどうだったかは気絶していたから分からないが、昨晩と比べたら食器が触れ合う音しかしない今朝の食卓は、とても静かなものだ。


 天の眼(スカイアイ)で周囲をチラ見すれば、しょげた顔でモソモソと焼きおにぎりを食べ進める相棒に、微妙に頬を赤らめているクチナシさんたち。そして全員を呆れた目で見ながら、二号に出させた昨日のバーベキューの残り肉まで食べている姉御がいた。


 あっ、クソ。

 俺も肉を食べたい!


 姉御に続くようにチェストから陸牛(ランドオックス)のステーキ肉を取り出し、サイコロ状にサクッと切り分けて机の真ん中へ置く。


 焼きおにぎりに豚汁、それにサイコロステーキというガッツリ朝食ではあるが、冒険者は身体が資本だしいいだろ、うん。


 箸休めに置いてあるしば漬けが「このメニューは荷が重い!」と訴えてる気がするが、無視である。

 気合いで頑張れ。


 そんなことを思いながらおろしポン酢でサイコロステーキを頬張っていると、肉を食べて満足したのか姉御が口を開いた。


「この後の予定を話すから、子供じゃないんだからいい加減切り替えろ」


 姉御にそう言われ、ようやく三人が再起動する。


「予定って言っても、40層にある帰還箱から帰って報告して終わりじゃないんすか?」


「大まかにはそうだが、その報告が問題だ」

「まずはDEAに今回のモンパニが収束したことを報告する必要がある。これはカルマとサズキに任せる」


「了解っす」

「分かりました」


「今回の掃討戦の本部には私が報告しに行く」

「でもって、最大の問題点だが……」


 なんかあった……あぁ、もしかして。


「おそらく待ち構えているであろう遥斗……ハルをどうするかだが、クチナシにかかってるからな」


 やっぱそうだよなぁ……。


 激重シスコンお兄ちゃんが待ち構えてない訳ないか。

 つか、なんなら後ろから追ってきてんじゃねぇの?


 口に出したらホントに来そうだから言わないけど。


「はる兄さんなら、とかちゃんがまだ帰還してないって追いかけて来てそうだよねー」


 あっ、フラグが立ったな。


「ハルのやつの帰還予定は今日だったはずだよな?」


「えぇ、確かお兄ちゃんは今日のお昼くらいに戻ってくる予定ね」


「それならちょうどかち合う可能性が高いか」

「ハルが早めに帰還していて、私たちを追いかけていない限りな」


 さらにフラグが補強されたな。


 もはやここまで来ると、フラグを乱立させた方が逆に折れるんじゃないか?

 いやだぜ、激重シスコンお兄ちゃんに妹と仲良くご飯食べてるところ見られるの。


 しかも見張り番していた時の感じだと、そのまま移籍の件まで言いかねないし……。


「いくらお兄ちゃんでも、一緒に溢れを抑えに行った人たちを置いて、一人先に戻ってくることは無いと思うわ」

「むしろそんなクランリーダーは嫌だわ」


 すまん、クチナシさん。


 貴女が移籍する予定のクランリーダーは、相棒が一人で知らないところの溢れの予兆があるダンジョンへ潜って五日も音信不通になったら、全部ほっぽり出してそのダンジョンへ突撃します。


「クチナシ、そこの馬鹿共はどっちかが数日音信不通になったら、確実に一人先に帰ってそのままダンジョンへ突撃するぞ」


「「ははははは……」」


 あらら、バレてーら。


 そして相棒も同じこと考えてたんかい。


 あーあ、クチナシさんが頭抱えちゃってら。


「でもウチも、とかちゃんとあーちゃんが連絡取れないってなったら、できるだけ早く帰って追いかけるかなー」


「っすよね!」


「うん! だって、ウチが行くまで二人とも勝てなくても負けないからねー」

「そこへウチが加わったら負けないよ」


 両手を握り込みながらホオヅキさんが力説する。

 たしかにあれだけのバフを掛けられるなら、均衡を崩すことは容易だろう。


「だそうだ。それに逆の立場ならクチナシもそうするだろ」


「それは……そうだけど」


 気まずそうにしながらクチナシさんは目を逸らす。


 まぁつまりはだ。


「全員似た者同士ってことっすね!」

「それはそれとして、結局ハルさんはどうするんすか?」

「追いかけてきてる読みで待つか、ササッと帰還するか」


「確かモンパニ後のボスリポップは一週間は無いんですよね。今日で六日目だから一応一日は猶予がありますけど……」


「定説ではそう言われてるが、たかが二十年弱の定説なんて当てにならんからな。既にリポップしてる前提で動くつもりだ」


「それならハルさん待つんすか? Bランク冒険者がいれば通常のEランクのボスなんて赤子同然だと思うっすけど」


「いや、私たちだけで行くつもりだ」

「Bランク筆頭レベルの冒険者に対する選定に巻き込まれてみろ。塵も残らんぞ」


 それは確かにそうだな。


「つまり結論としては……」


「少し休憩したらこのキャンプ地を撤収、階段を降りてボス部屋へ直行する」

「という事で行動開始は一時間後とする。それまでは各々ゆっくりしてろ」


「「「「はい」」」」


 さて、一時間休憩が貰えたことだし、俺はのんびり仮眠でもするかな。


 俺らが脱線しながら話してる間に二号を中心にして粗方の片付けは終わってるからな。

 俺がビーチチェアで寝ててもいいだろ。


 という事で一号、そこを退くんだ。


 それは俺のビーチチェアなの分かってるだろ……!

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