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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第67層目

 あんまり気は進まねぇが、そろそろ腹を括るとするか。


「相棒、俺が探ってる間に合流場所まで向かってくれ」


「分かった。振り落とさないよう気をつけるけど、念の為鎖で固定しておくね」


「あぁ、頼んだ」


 あんまり遅くなると姉御にドヤされそうだからな。

 どうせ相棒に運んでもらうんだから、効率良くいかないと。


 相棒に身を委ね、俺はいつも通りのルーティンを行う。


 目を閉じて深く深呼吸をし、意識を深く落としていく。


「ソウル、極限集中(オーバーロード)、起動」


 さて、あまり時間をかけすぎると、ようやく治った頭痛にまた襲われるから、チャキチャキやろうか。


英霊喚起(ヒロイックコール)


 対象はもちろん直感スキル。


 さて、お前の記憶を見させてもらおうか。


 …。


()、英霊喚起!」


 …。


 やべぇ、何も見えねぇ。

 一旦別スキルを試すか…。


 とりあえず並列思考でいいか。


「英霊喚起」


 ()()()()スキルの記憶の海に降り立つ。


 ここにちゃんと来るのも久しぶりだな。


 いつもは基本的に目的地(模倣対象)が決まっているのでササッと移動してしまうのだが、今回に限ってはスキルの記憶に用があるのでここに留まる必要がある。


 さてさて、ここには誰がいる事やら…。


『やぁ、本体』


 |What's?《はぁ?》


 背後から唐突に声をかけられたため、驚いて振り返れば目の前に誰かがいた。


 いや、正確には俺がいた。


 何言ってるか分からねぇと思うが、俺にもよく分からん。


 とりあえず異常事態ではあるので、数回バックステップして距離を取り、臨戦態勢で相手を伺う。


 ちっ、スキルは軒並み反応無しか…。


 ここはスキルの記憶という名の俺の精神世界。


 スキルが使えないのもやむを得ないが、そうなると久しぶりに素手での戦闘になるか…。


 鳴無流の技は一通り学んでいるから、無様な姿を晒すことにはならんだろ。

 そう思いながら拳を固く握って構えるも、向こうは苦笑いを浮かべるだけで動こうとしない。


 …こちらの出方を伺ってるのか?


『あー、本体?』

『そんな警戒しないでくれ、俺は分身だよ』


 おっとぉ?


「それはおかしいな。1号たちは今姉御たちと行動中だ」

「分身達が消えてしまうほど俺らとの距離は開いていないから、勝手に俺の元へ帰ってくることもない」


『そうだな、俺は1号たちではない』

『んー、便宜上0号とでも呼んでくれ。1号たちにはそう認識されている』


 0号だと?

 どういうことだ…。


『不思議に思ったことはないか、本体』

『24時間、ダンジョン内外問わず使用可能なインフィニティチェスト』

『尾が4本あった天狐(スカイフォックス)のドロップにも関わらず、3体しか創造できない分身』


 …臨戦態勢を解除する。


『もし仮に0号が既に存在していたとしたら?』


「どちらの現象にも説明がつくな」


『だろう? 本体が聡明で助かるよ』


「世辞は要らねぇよ。単刀直入に聞くが、0号はいったい何用でここに来た?」


『そうだな。端的に言えば伝書鳩ってところだ』


「直感スキルからのか?」


『あぁ、そうだ』

『「僕を使うにはまだまだ早い。もっと強くなってから喚起して(呼んで)ね」だとさ』


 0号は道化師とやらとコンタクトが取れるのか…。


 それにこの言い分だと、道化師は英霊模倣ヒロイックイミテーションの対象みたいだな。


「それで、直感スキルの誰から伝言を頼まれたんだ?」


 英霊喚起で呼び出せる記憶は、基本的に1つのスキルに複数存在する。


 例えば剣術スキルであれば、以前呼び出した素戔嗚尊を筆頭に、ヘラクレスやジークフリートなどの剣を振るった逸話のある者たちが呼び出せる。


 だから直感スキルの中の誰かだと思うんだが、生憎一度も覗いたことが無いから心当たりがないんだよな…。


『悪いけど本体に伝えることはできない』


「道化師に口止めされてるからか?」


『あぁ』


「それなら仕方ない」

「ちなみに直感スキルには道化師以外に英霊喚起の対象になりそうなやつはいるのか?」


『さぁな? あくまでも俺は本体の分身なんだから、本体以上のことは知らないさ』


 それはそうかもしれんが、現に道化師の事を0号は知っているわけだ。

 それなら他にも居るのか聞くのは妥当だろ。


 まぁそれはいい。


 それよりも今大事なのは――。


「0号から見て道化師は敵か? 味方か?」


『さぁな。本体が今後も()()()()()なら味方なんじゃないか?』


「おいおい、道化師側が笑いを求めるのかよ」


『あぁ、だって本体たちが勝手に道化師って言ってるだけだからな』

『あの人はどちらかと言うと――だ』


「どちらかと言うとなんて言った?」


『だから――だって』


「ダメだ、ピンポイントに聞こえねぇ」


『あー、すまん』

『それなら多分、伝言を聞いた時に俺が話し過ぎないよう制限か何かをかけられたっぽいな』


「さよかい。なら仕方ねぇ」


 0号に制限がかけられてるなら、これ以上聞いたところで時間の無駄になりそうだな。

 それにソウルの反動もあるし、そろそろ戻るとするか。


「今日のところはそろそろやめようと思うが、そういえば0号は今後創造してもいいのか?」


『それはやめとけ。ぶっちゃけ本体が気づいてないだけで、俺一人で並列思考の3分の1使ってる』

『だから表に創造された瞬間、渡される思考が1つじゃチェストが維持できん』


「おまっ、いつの間にそんなに持ってたんだよ」


『仕方ないだろ。本体がクラウド化なんてことしたから、その処理に思考回してんだよ』

『あとついでに言っとくが、分身達の性格バックアップもそこにあるから、もれなくアクセスできなくなって使い勝手落ちるからな』


「そうかい。それはすまんかった」

「んじゃ、これまで通り0号は創造しないでおくわ」


『そうしてくれ。俺は中で悠々とチェスト内のもの食べながら、あの人と本体達を眺めてんのが愉しいんだから』


 おいこら。

 シレッと盗み食いと道化師に日頃から接点あることを言うな…。


「はぁ…」

「言いたいことは色々あるが、0号には世話になってるみたいだし不問にしとくわ」


『さんきゅ』


「それと、道化師になんか食いたいもんあったらリクエストするよう伝えてくれ」

「誰か教えてくれたら作ったる」


『ほいよっと。そう伝えとくわ』


 0号に伝言を頼み、英霊喚起を解除する。


 あー、一旦諸々整理したい気分だが、今はそれよりもまた頭痛に襲われるのが嫌すぎる…。


 相棒から即時再生借りようかな…。


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