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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第66層目

 17層に降りてすぐ、分身たちとピョンピョン飛んでいった姉御たちを見送り、俺達は相棒便で空を駆け抜ける旅をしている。


 姉御たちの姿はもう見えないが、まだこの階層に居るだろうし、ホオヅキさんの感知範囲が不明なため、一応ミュートルームを発動しておく。


「そいで、相棒はどうしたんだ?」


「んー、そうだね…じゃあ単刀直入に聞くけど」


「おっ、おう」


「カルマの中ってナニカいるの?」


「は?」


「それこそ僕の鬼みたいな、別の意思が」


「いや、そんなものいないが…」


 分身たちがそうかもしれないが、アイツらが外に居ない時は別に俺の中で何かを主張してくることはない。


 少なくとも相棒の鬼みたいに脳内でこちらへ語りかけてくる存在ではないから、俺としてはいない認識なんだが…。


「そうなの? 本当に?」

「僕になにか隠していない?」


 わざわざ走る速度を落とした相棒が、俺を背負う形から抱き抱える形に変えて、俺の目を覗き込んでくる。


 わー、まつ毛長〜い、キレ〜…。


 ってちげぇ、顔近ぇよ相棒。


「モード:スペース、タイプ:フィールド」


 相棒の足元に4畳程の広さの足場を生成し、ついでにチェストから椅子を出す。


「降ろしてくれ相棒。腰据えて話した方が良さそうだから椅子に座ろうぜ」


「分かった」


 相棒から降ろしてもらったついでに、ミュートルームの効果範囲を足場の端まで広げる。


 …少し届かなかったな。


 これは俺の風魔法の適性が低いせいだな。


 まぁ、4畳弱もあれば十分だろ。


「それで、どうして俺の中にナニカがいるってなったんだ?」


「えっとね、移心伝身でカルマから狐火スキルを借りたでしょ?」


「あぁ、相棒が自分に必要なデバフをかけながら攻撃出来ればと思ってな」


「その時にね、頭の中で鬼以外の声が聞こえたんだ」

「まるで道化師のようにおどけた感じで話しかけてきてね、鬼とは違った感じでうるさかったよ…」


 若干ウンザリした顔をしながら相棒はそう語るが、道化師の心当たりなんて皆目見当もつかない。


「それは悪かったが、生憎俺は道化師なんて知らないぞ?」


「本当に? 道化師はお気に入りの子とか言ってたけど…」


「お気に入りねぇ…」


 生憎、狐火スキルを手に入れて以降、そんな正体不明の何かが俺の中にいたことなんて一度もない。


 ただまぁ…。


「もし、可能性があるとするならだけどよ」


「うん」


「直感スキルかもしれねぇ」


「それはまたどうして?」


「あのスキルだけ、入手経路が不明なんだよ」

「剣術スキルは学園に入学した時、入学生が貰えるスキルオーブの中から選んで取得したものだが、直感スキルは10歳の覚醒の日の時点で持ってたからよ」


「たしかにそうだったね。カルマだけスキルがあって、みんなで羨んだ記憶があるよ」


「基本的にどれだけ才能があってもスキルが発現するのは15歳以降が大多数だからな」

「学校でもスキル持ちは俺だけだったし、そうなるさ」


 人魔震災(じんましんさい)以降、人類は10歳になった日にソウルとスキルが発現するようになったため、10歳の誕生日は覚醒の日と呼ばれている。


 ソウルは全ての人類が覚醒の日に発現するが、スキルに関してはほぼ居らず、発現する確率は数百万人に1人と言われている。


「だからもし可能性があるとしたら直感スキルだろうな」


「なるほどね」


「もしあれなら直感スキル貸してみるか?」


「そうだね、試してみようか」


「移心伝身…」


 直感スキルを相棒に貸し出そうとするが、全くもって移心伝身スキルが発動できる気配がない。


「移心! 伝身!」


 気張ってみたが、そういう感じではないらしい。


「カルマ? 大丈夫?」


「なんか分からんが、相棒に直感スキルを貸し出せねぇ」

「ちょっと他スキルを試してもいいか?」


「うん、いいよ」


「さんきゅ。じゃあちょうどいいし狐火にするか」

「移心伝身、狐火」


 ふっつーに貸し出せたな。


「相棒、その道化師の声は聞こえるか?」


「んー、全然聞こえないね。呼びかけても無反応だね」


「そうなると鬼人化を使った際の高揚感による幻聴か?」


「それは無いと思う。だって僕の中の鬼を押さえ込んでくれたから」


「なら俺には分からんな」

「少なくとも心当たりはねぇ」


「そっか」


「これ以上考えても今は答えがパッと出そうにねぇな…」

「ちょうどいいし一旦飯食おうぜ」


「そうだね。ついでに他にも貸し出せないスキルがあるか試してみよ」


「そうすっか」


 チェストの中からお互い自分が食べたいものを取り出し、夕飯の時間となった。


 姉御たちがどうしてるか知らんが、テキトーに食べながら移動してるか、合流地点で食べるだろ。


 というわけで、お互い食べたいものを食べながら貸し出せるスキルを確認した結果、直感スキルと並列思考スキル以外は問題なく貸し出せることが判明した。


 並列思考スキルに関しては、単純に今貸し出した時に万が一でも分身たちがバグると姉御たちに迷惑がかかるため、後日確認することとした。


 まぁこの感じなら問題なく貸し出せるとは思うがな。


 閑話休題(それはそれとして)


「大方の予想通り、直感スキル以外は貸せたな」


「そうだね。それと貸し出せるスキルの制限とクールタイムが判明したのは良かったかも」


「だな」


 そう、移心伝身スキルには制限があり、一度に貸し出せるスキルは1つまで。


 かつ、一度貸し出したら次に貸し出せるのは1分後ということが判明した。


 数に関してはハイゴン戦中に何となく察していたが、まさかクールタイムがあるとは思わなかった。


 今のうちに知れたのは相棒も言うように僥倖だったな。


「こうなると、めんどくさいが極限集中(オーバーロード)で記憶を探るか」


「反動は大丈夫なの?」


「ハイゴン戦で使用した分に関してはもう大丈夫だ」

「ただもう1回あの頭痛に襲われるのは気が進まないがな」


「なら別に今じゃなくてもいいんだよ?」


「いや、こういう事は気になった時にある程度探っておいた方がいいのさ」


 つーこって、痛いのは嫌だがソウルを発動するとしますかね。


 防御に極振りしたら頭痛も防げるのかねぇ。


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