第63層目
Side カルマ
姉御に強制的に意識を飛ばされ、崩れ落ちる相棒を咄嗟に抱える。
「すまん、遅くなった」
「なんとか倒しきれたんで大丈夫っす」
「姉御たちがここにいるってことは、全滅させたんすか?」
「んーん、倒しきれてないよ」
「ほぼほぼ倒したなーって思ったらみんな逃げちゃってね、今1ちゃん達が追っかけてるところ!」
「私たちも残党狩りをしようと思いましたが、ホオヅキちゃんがウツボ達が水の中に包まれたと言うので、応援に駆けつけたのですが…」
「ウチらのバフデバフが届く前に終わっちゃったねー」
「なるほど、そうだったんすね」
「じゃあ俺もソウル解除していいっすかね、姉御」
「あぁ、選定が終わったなら大丈夫だ」
「了解っす」
「姉御、相棒のこと一旦任せるっす」
「あぁ、任せろ」
相棒を姉御に預け、反動を覚悟しながら英霊模倣を解除する。
羽衣と化していた外套が元に戻ると同時に、両腕が燃えるような痛みに襲われる。
それに加えて、いつもの激痛が全身に走る。
こうなったらもうヤケである。
極限集中を解除する。
頭が割れそうな程に痛い。
痛すぎる。
無理。
死ぬ…。
周りに人がいるとか関係なしに地面に崩れ落ち、頭を抱えて丸くなる。
「大丈夫ですか!?」
「かーさん大丈夫!?」
「カルマのソウルは反動デカめだからいつもこんな感じだ。ポーションでもかけてやればそのうち復活する」
姉御ぉ…その通りだけどよ…。
もうちょいこう、優しさを俺にくれてもいいんすよ?
クチナシさん達がポーションをかけてくれて数分後、とりあえず身体を蝕んでいた激痛から解放されたので立ち上がる。
未だに頭は痛いし、今度は倦怠感に襲われているが、これくらいいつもの事なので行動するだけなら支障はない。
「あー、お待たせしたっす」
「構わんさ。それよりもこの宝箱さっさとどうにかしな」
相棒を背負った姉御が指差した方を見れば、ハイゴンが居た場所に宝箱が出現していた。
「えっ、いいんすか姉御」
「もちろんだとも。2人が防衛戦をしてくれていなかったら、今頃地上まで溢れきっていただろうからな」
「そーだよー! それにウチらはDEAからの報奨金やドロップした魔石とかの売却金があるけど、かーさん達は一般の探索として防衛戦してたんでしょ?」
「それに1号さんたちから聞いていますが、ドロップ品も拾えてなかったそうですね」
「ならなおのこと宝箱の中身を貰ってください」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて…」
宝箱を開けて手を中に突っ込むと、大量の情報が頭に流れてくる。
あっ、これひとりじゃ無理ですね。
ということで分身達を一旦消して、再度ここに召喚する。
「1、3号、俺が宝箱から出した物を収納袋に格納する係な」
「2号は格納したアイテムの整理だ。一旦今回の防衛戦で入手したことが分かる感じで入れてくれればいい」
嫌そうな顔をした1、3号の背中を2号が叩き、渋々行動を開始する。
こういう時、2号が真面目な時の俺を引き継いでくれてて助かる。
これが熱中してる時の俺とかだったら目も当てられん。
こっちの話を聞かずに黙々と作業する人間ができてしまう。
それはさておき、大量に入ってる戦利品を出していくとしますか。
ーーーーー
なんかもうウンザリするほど宝箱から戦利品を出し続けること15分。
ようやく終わりが見えた。
残りはハイゴンが持ってたトライデントに、何度も再生していた鱗で作られたスケイルメイル、あとはスキルオーブが幾つかだな。
トライデントとスケイルメイルは効果次第だが、手元に残しておきたいかな。
スキルオーブに関しては半魚人や人魚たちが持つものの中に欲しいものがないから売却かなぁ…ん? ふむ。
15個ほどあったスキルオーブの中から、3つほど直感スキルによる売却ストップが入る。
ということは、おそらくこれらがハイゴンからドロップするはずだったスキルオーブってことか。
んで?
直感先生は俺が1つで、相棒に2つと…りょーかい。
サクッと俺用らしいスキルオーブを砕くと、脳裏に新しい知識が増える。
ふんふん、ほんほん…おぉう…。
いや、もしかしたらこのスキル入手できるかなぁと思ったが、まさか本当に手に入るとは。
「ステータス」
ソウル:極限集中
スキル:剣術、殺戮手段、直感、並列思考、移心伝身、隠密、天の眼、邪眼(NEW)、水魔法、氷魔法、空間魔法、狐火
ハイドラとの戦闘が長かったからか、邪眼スキルが取得できた。
邪眼スキルは人によって効果が違うのだが、俺の場合はドレイン系に属するようで、現時点では対象の生命力を一定時間ごとに奪う事ができるらしい。
どれくらい奪えて還元できるかはまた別途検証が必要であるが、これでまた1つ俺の継戦能力が上がったのは確かだ。
ドレイン系は人によって敵のバフや放たれる前の魔法等も奪えるらしいから、これからの成長が楽しみだ。
「そんなニヤニヤしてどうしたの、カルマ」
「おっ、起きたか相棒」
「いやなに、スキルオーブから邪眼スキルが手に入ってな」
「ふ、ふーん、系統は?」
なんか警戒するように相棒がこっちを見ている気がするが、一旦スルーする。
「ドレイン系だ。しかも初期効果が生命力吸収系」
「それは当たりだね…ちなみに使ってみた?」
「いやまだだ。でも相棒が良ければ使ってみてもいいか?」
「い、いいよ、ばっちこい」
右眼にかかる前髪を乱雑にかきあげ宣言する。
「貪食の魔眼!」
天の眼で確認したところ、どうやら右眼が青く輝いてるようだ。
かっこよくていいな。
気分上がるぜ。
なんか相棒が膝から崩れ落ち、絶望した顔でこっちを見ているがどうしたんだろうか。
「狩魔がぁ…狩魔が厨二病に戻っちゃった…」
おいこらどういうことだ、相棒。




