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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第62層目

Side サズキ


 鬼神妖狐(きじんようこ)かな…なんてカッコつけたけど、()()()()()()()()()()


 破壊衝動を訴える声はまぁいいよ。

 僕のソウルの代償だし、慣れてるから。


 でも、もう1つの()()()みたいな声が分からない。


 分からないは言い過ぎたかな。

 ほぼ確実にカルマから借りた狐火スキルが悪さしてるんだから。


『悪さなんて、心外な』

『ただただ僕のお気に入りの近くにいる半鬼半人(はんきはんじん)のサポートがしたいだけさ』


 …これはさっさとハイゴンを倒してカルマを問い詰めないとだね。


 なんなら熱田さんにでも連行して、霊媒系スキル持ちの人にお祓いしてもらおうかな。


『ははっ、僕を祓うのか』

『人の子には厳しいと思うけど、数万単位の贄を用意してソウル複数発動ならワンチャンあるかもね』


 それはあまりにも無茶苦茶じゃないか。


『そ れ に』

『僕は邪神や悪霊の類じゃないよ』


 何を根拠にそんな事を!


『それはね…教えてあげてもいいけど、今は目の前のことに集中したらどうだい?』

『君の中の鬼君は僕が止めておいてあげるから、存分にやるといいさ』


 えっ、どういう…。


『それじゃあ頑張ってねぇー』


 ちょ、待って!


 気付けば心の中でそう叫んでいた。


「相棒、どうした!」


「ごめん!なんでもない!」


「分かった、後で聞く!」

「それよりも本当に大丈夫なんだな?」


「うん!大丈夫だよ!」


 道化師が言った通り、破壊衝動を訴える声が今は聞こえない。


 仕留めるなら今のうちだね。


「カルマ!援護より撃破を!」


「…了解!」


 ハイゴンから放たれる魔法や熱線を、何故か生えてきた尾の先に灯る狐火が迎撃する中、天の道(スカイロード)を駆け抜ける。


 僕の才能じゃ致命傷になり得る箇所を狙ったものを迎撃することしか出来ないけど、かすり傷はすぐに癒えるから問題ない。


 このまま突っ込む!


 ウツボの口でどう持ってるか不明なトライデントが的確に僕を狙ってくるけど、柄を蹴り飛ばして回避。


 海蛇の目が僕を焼き切ろうとするけど、背後から飛んできた火矢に口内を焼かれて中断される。


 胴体に開く大きな口の目の前まで駆け抜けたけど、絶対なにかあるから直角に移動。


 そのままハイゴンの上空に駆け上がると、丁度口から濁流のごとく黒い液体が吹き出していた。


 液体に触れた砂浜から煙が上がってるから、強酸性なのかな…ちょっと厄介かも。


『そんな鬼ぃさんに朗報だよ、轟雷の腕(ごうらいのかいな)だっけ?あれの炎版できるようになってるよ』


 …。


劫炎の腕(ごうえんのかいな)


 僕の両手が蒼い炎に包まれる。


『その炎は脆弱と腐食の呪いが込められてるよ、上手いこと使いなね』

『あと、僕はもう1分くらいしたら彼の元に戻るつもりだから、それまでに決着つけなね』


 えっ、何を勝手に…。


『だって君の鬼の相手するの疲れたもん、五月蝿いし話聞かないし』

『ということで頑張ってねー』


 また消えてったよ…。


 1分ね。

 それだけ貰えれば十分かな。


 きっとカルマが僕に合わせてくれるから。


 天の道(スカイロード)を駆け上がり、ダンジョン内における高度限界まで歩を進める。


 ハイゴンがギリギリ視認できるような高さだけど、やろうか。


 紐なしバンジージャンプを。


 天の道(スカイロード)を解除して、重力に身を任せて落下を開始する。


 落下の浮遊感に慣れたタイミングで天の道(スカイロード)を再発動。


 天の道は、空気中に()()()()()()()()()()()()()を生成して空中を走れるようにするスキル。


 だから重力と力場を釣り合うように発動すれば…。

 蹴りつけてジャンプするように加速することができる!


 1度蹴り跳ねる事に流れる景色が加速して、ハイゴンの姿が大きくなる。


 それと同時に、ハイゴンの気を引くために魔法を乱射していたカルマが、和弓に矢を番え、弦を引き絞っているのが見えた。


 流石だね。


 じゃあ、あとは僕がぶち抜くだけだ。


 両手を組むようにして握りしめ、勢いを殺さないようにしながら半回転。


「鳴無流――斧振鬼(ふぶき)


 握りしめた両手をハイゴンの首元目掛けて振り下ろす。


 脆弱と腐食の炎がハイゴンの身を焼き、僕の両手が胴体を2つにかち割っていく。


 それと同時に、ウツボと海蛇の口内を撃ち抜くように極太の矢が飛来する。


 僕の両手が核のようなものを砕いた感触がしたのと同時に、ハイゴンの左右の腕が弾き飛ぶ。


 ハイゴンにぶつけた事でだいぶ削れたとはいえ、それでも残っていた勢いそのままに着地。


 両足が痺れて辛いけど、気合いで舞い上がった砂煙の中から抜け出すと、カルマが弓を構えながらこちらへ来ていた。


「ハイゴンは?」


「砂煙が酷くてわからねぇけど、熱感知スキルに反応はない」


「ということは」


『英雄選定を超えた事を確認』

『選定者よ』

『英雄を超えよ』


『英雄を超えよ…ね』

『じゃあね、楽しみにしてるよ』


 いつもの選定が終わったことを告げる声が脳内に響いたと同時に、道化師の意味深な声がした。


 でも問い返す前にソウルが強制的に解除され、それどころではない。


 やばい。


 足りない。


 もっと、もっと、闘争を…!


 闘争心に脳が支配され、近くにいたカルマに襲いかかろうと振り向く。


「ゆっくり寝てな、サズキ」

「ソウル、勧善懲悪(わるいこ、だれだ)


「秋音…先輩…」


 頭に衝撃が走り、視界が黒くなっていく。


 あぁ、まだまだ暴れたかったなぁ…。


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