第60層目
空中に放り出された俺たちはそれぞれのスキルで体勢を立て直し、お互いの新たな獲物へと向かう。
物は試しとダゴンに向けて水と氷、そして炎の槍を射出。
予想通り、水と氷の槍はそのまま当たるも大したダメージは見られず、炎の槍は右腕を払うようにして迎撃された。
迎撃箇所からは煙が上がっているため、十分脅威足り得るだろう。
実際、ダゴンの意識がこちらへ向いたようなので、作戦に組み込んで良さそうだ。
炎魔法を起点とした槍やマシンガンなど遠距離からダゴンをチクチクしつつ、相棒たちから距離を取っていく。
その間に収穫できた情報として、炎魔法はたしかにダメージが通る。
だがしかし、如何せん俺の魔法の才能では攻撃力が足りない。
炎魔法の当たったダゴンの体から白い煙が上がる。
だが煙が消える頃には再生も終わっている。
この数ヶ月で判明したが、俺は魔法の汎用性が高い代わりに攻撃性能が抑えめらしい。
普段はそこら辺を混成魔法や突飛な使い方で補ってきていたが、今回みたいに真っ向から火力が必要な場合はちと苦手だ。
まぁ、それでも問題はない。
魔法以外にも俺には手札があるのだから。
せっかく炎魔法を使わせてもらえてるんだ、盛大にいこうか。
「英霊換装!」
「火之迦具土神」
ローブに変化していた外套が青白い炎に包まれ、裾が陽炎のように揺らめく羽織袴に変化する。
氷の大鎌も同様に青白い炎に溶かされ、そのまま炎が和弓の形に変化する。
和弓を握っても崩壊せず熱くないことから、おそらく空間魔法との合わせ技だと思われる。
ちなみに英霊模倣で変化する対象や理由は、使い手ながらイマイチ分かっていない。
直感スキルに導かれるまま、気がついたら使えるようになったものだからな。
まぁ今はそんなことどうでもいい。
試しに1射、射ってみようか。
炎の和弓に腐食の呪いを込めた狐火を混ぜた炎の矢を番える。
青白い和弓の弦を最大まで引き、蒼い矢が解き放たれる。
放たれた矢は蒼い軌跡を残しながら宙を翔け、ダゴンの左手に突き刺さる。
矢が刺さった左手は蒼い炎に包まれ、手首から先が腐って燃え尽きた。
唐突に姿を変えた俺が武器まで変えて攻撃してきたことに、ダゴンは反応しきれなかった。
しかし腐ってもCランク相当の意地か、何事もなかったかのように炭化した手首から手を生やした。
ったく、英霊模倣で最適化した混成魔法込みでも火力が足りないなんて嫌になるね。
やっぱり、ある程度物理火力も必要か。
和弓を2つに割って小太刀二刀に変化させる。
左の小太刀は火力を、右の小太刀は呪いを強く込める。
隠密スキル起動。
ハイドラ同様にこちらを見失ったダゴンの元へ接近する。
ダゴンの足元にすんなりと潜り込み、双剣を振り下ろす。
ゴムのような皮膚を小太刀に纏う炎で腐らせて燃やし、空間魔法で作成した芯となる刃で止まることなく縦に切り裂く。
足の腱を切られたことで体勢を崩したダゴンの背後に回り、両翼を切り落とす。
そのタイミングでダゴンが両腕を振り回すようにして俺を払い除けようとしたので、逆らわずに距離を取る。
切り裂いた箇所を天の眼で確認すると、今までと異なりだいぶ回復まで時間がかかっていることが分かる。
この調子でいけば削り切れそうだが、こいつらが大人しくやられてくれる気がしないんだよな。
まぁいいか。
大人しく倒れてくれるならそれでいいし、厄介なことになるなら相棒とまた作戦を組み立て直そう。
どうせ今回の防衛戦中に何度かソウルを使って敵に突っ込んでただろうから、まだ暴走まではしないだろうしな。
隠密スキルとジャンプの組み合わせでダゴンを翻弄して、左腕を切り裂き、右足を切り落とし、左目を腐らせ、胴体を貫く。
挙句の果てに首を切り落としたが、ダゴンは黒い煙に変わることはなかった…。
これはギミック系統のボスだな。
天狐よりは確かに強いが、それでもCランク相当かと言われると微妙ではあったから、ギミックボスなのは納得寄りではある。
こりゃ相棒と合流するべきかなと思っていたら、ダゴンが唐突に両腕を砂浜に叩き付けて砂埃を巻き上げる。
熱感知スキルが、ダゴンがハイドラの方に向かっていることを伝えてくる。
トリガーは不明だが、ギミックが次の段階に進んだっぽいな。
こっちも相棒と合流するか。
「相棒、どうだ?」
嵐鎧を発動している相棒に、理性を失っていないか一応警戒しながら声をかける。
「何回も倒しているんだけど、その度に完全復活してくるんだ」
「2、3回は楽しかったけど、それ以上は作業でしかなくてつまらなかったかな」
「なるほどな、自己回復で打たれ強いダゴンと無限残機のハイドラか」
「やっぱギミックボスっぽいな」
「そうだね、倒しても倒しても終わらないし」
はてさて、一体どんなギミックが来ることやら。
同時撃破系ではなさそうだが…。
相棒と警戒しながら見ていると、ハイドラが生成した水球に2体が飲み込まれていった。
お約束なんて関係ないとばかりに各種魔法を撃ち込むが、やはりお約束なのか全て水球に弾かれて終わる。
「お約束はお約束ってことか」
「意外とダンジョンってそういうところ律儀だよね」
「ほんとにな」
こういう変身やら合体やらの演出中に攻撃しても妨害が一切できないんだよな…。
勿体無いったらありゃしないぜ。




