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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第56層目

Side カルマ


 おぅおぅ、相棒がいつにも増して吠えてら。

 流石にこれはなんかスキル入手してんな?


 天の眼(スカイアイ)でチラ見してる感じ、一定範囲内の敵に怯みと自己バフか?

 吠えた前後で微妙に鎖を振るう速度とか違うんだよな。


 まっ、スキルの詳細は後で聞けばいいや。

 それよりも、ようやく半魚人共の追加に終わりが見えてきた事の方が今は大事だ。


 氷壁を降りた頃は平日朝の満員電車並の過密具合だったが、今は定時退社した社会人の方々による満員電車並の密度である。


 なっ?ちょっと減っただろ。

 この調子なら明日には半魚人共の追加もなくなりそうか?


 そんなことを考えながら、作業的に半魚人共の首を刎ねていると、脳裏に新たな知識が増える。


 っと、ふんふん。

 ...使いづらくね?

 まぁいっか、やってみよう。


殺戮手段(キリング・チョイス)!」


 俺がスキルを宣言すると、隠密スキルや認識阻害している空間をガン無視するレベルの大きさをしたルーレットが2枚出現する。


 ただ、周囲の半魚人共はそれに気がつくことなく、姿を消した俺を探してキョロキョロしている。

 どうやらこのルーレットは俺にしか見えないっぽいな。


 それはさておき、いつの間にかそれぞれのルーレットの背後に、目深くローブを羽織り、背中に大鎌を背負った死神っぽい個体が出現していた。


 コイツらが裁定者ねぇ、処刑人の間違いでは?


 そんなことを思っていたら、死神達がルーレットに手をかけて勢いよく回し始めた。

 カラカラと小気味いい音を奏でながらルーレットが回り、やがて止まる。


 なになに?

 左のルーレットは炎のマスで、右のルーレットは3と記載されたマスに止まったみたいだな。


『執行者よ、おのが敵を3体燃やし生を摘め』

『さすれば祝福を賜らん』


 なるほどな。

 左のルーレットに描かれてる絵の手段で敵を右のルーレットの数だけ倒せば、バフがかかるわけか。


 いっちょ、やってみますか。


 近くにいた半魚人の四肢の腱を切り裂き、動けなくなったところに腹部へ1突き。

 瀕死の重体となったところへ狐火を頭部に放つ。


 数秒藻掻いた後、黒い煙となって消えた。

 それと同時にメインの思考に残:2というアナウンスが届いた。


 やっぱトドメが指定方法なら良いみたいだな。

 んじゃサクッと残りの2体燃やすか。


 先程半魚人を倒した際に隠密スキルが解けたため、こちらを視認した半魚人共が向かってきているからちょうどいい。


 半魚人共の進行方向に、くるぶしが浸るくらいの水の床を展開。

 床の中ほどまで来たところで水を氷に形態変化させて捕らえる。


 氷の床から腹部に届く長さの棘を生成して串刺しにしたところで、先程と同様に頭部を燃やしていく。


『裁定終了、執行者に祝福を』


 ふむ、条件は達成したからバフを貰えるはずだが、体感できるものはないな...。

 ということは肉体強化系統では無さそうだ。


『汝が道を違わぬことを我らは望む』


 そう言ってルーレットごと死神は消えていった。


 道を違わぬことねぇ、お前らの考える道が何かは知らんが、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。


 という事で早速やりたいようにやるかね。

 イメージするは敵対者を呪い焼く腐竜の吐息。


「タイプ:カース、モード:ブレス」


 両手で輪っかを作って腕を伸ばし、その輪の中を吐息が通るイメージで息を吹く。

 輪を通り過ぎた吐息に青白い火が灯り、大きな炎となって半魚人共を飲み込んでいく。


 肺活量の続く限りブレスは続き、最終的に前方70°前後を扇状に燃やし尽くした。


 やっぱそうか、魔法の威力が増幅されてる。

 となると殺戮手段の名の通り、指定条件のクリアでクリアした手段のバフが手に入る感じだな。


 数字の方については、ブレスを吹き終わったタイミングでバフが切れた感覚がした。

 サブ思考のカウントが正しければ、討伐指定数×1分間バフが継続する認識で間違いないだろう。


 少しの手間で、普段何かに付与したり、半径2mくらいを燃やすことで精一杯の狐火スキルをここまで強化するバフが得られる殺戮手段スキルは使い勝手が良さそうだ。


 だが、もちろん失敗した時のデメリットもデカい。


 ただ、終わりが見えてきたとはいえまだまだ敵の多い現状は、デメリットに怯えてる暇なんて無いのでガンガン使ってくけどな。


 つーか反対側にさっき見たルーレットが見えるから、早速1号達が使ってるしな。

 本体の俺が怯えてられっかっての。


 というわけでもっかいいくぜ。


「殺戮手段!」


 ーーーーー


 あれから何度も殺戮手段を発動しては条件を達成し、入手したバフで半魚人共の殲滅を繰り返した。

 分身たちもミスなく条件を達成し続けたようで、失敗した時のペナルティを受けてる様子は見えなかった。


 あれだけ大勢いた半魚人共も追加がほぼなくなり、目に見えて数が減ったのでラストスパートといったところだ。


 それこそこのペースなら30分もあれば、掃討し切るだろう。


 分かってらぁよ、直感先生。

 まぁそう上手くもいかないよな...。


 先程まで上層を目指して突き進んでいた半魚人共が、一斉に下層の方へと引き返していく。


 一見溢れが終わったように見えるが、この様な現象は一度も聞いた事がない。


 諦めて帰ったというよりも、最後の進行のための準備をしに行ったと言われた方がしっくりくる。


「カルマ」


「相棒、どう見る?」


 こちらに近づいてきていた相棒に現状の確認をする。


「そうだね、まだ終わってない...かな?」

「最後に大きな花火を打ち上げようとしているって言われたらしっくりくるよ」


「やっぱそうだよな」

「一旦姉御に判断を仰ぐか」


「うん、そうしよっか」


 俺らと話している間にこちらに来ていた分身たちと共に氷壁の上に戻る。


 そろそろぐっすり眠りたいんだがなぁ。

 最後にもう一仕事する準備するか。


 カツカレーでいいかな?

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