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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第52層目

 地上に降りてどれくらい時間が経ったことやら...。


 最初は俺も相棒もマジメに半魚人共の相手をしていたが、5分くらいでこのままじゃ埒が明かないと判断。


 相棒には最初より短いとはいえ、それでも刃渡り10m程あるチェーンソーを渡し、俺は天狐(スカイフォックス)の時に使った大鎌を担いで攻撃範囲が被らないように散開した。


 お互いに広範囲を攻撃できるようになり殲滅速度は格段に上がったが、如何せん斬り裂いても斬り裂いてもどこからともなく半魚人共が押し寄せてくる。


 つーか、広範囲攻撃と思って大鎌にしたけど、ぶっちゃけほぼ柄だから全然斬れないわ。

 数回振ってからそれに気づいたので、今はピッケルのように振り下ろし、横に倒した刃を手前に引くことで複数体纏めて斬り裂くことに成功した。


 だが流石に腕が疲れてきたので、ここらで一旦休憩を挟むべきか...。


「相棒!!!」


「なに!!!」


「一旦休憩取ろう!!!」


「分かった!!!」


 相棒と意思疎通が取れたので、さっさと氷壁の上に避難させてもらうとするか。


 周囲の半魚人共を軽く一掃してからジャンプで氷壁の上に戻る。

 同じタイミングで相棒も天の道(スカイロード)を使用して戻ってくる。


「お疲れ、相棒」


「カルマもお疲れ様」


「どうやら1時間くらい戦闘していたみたいだな」


「もうそれだけ時間が経過したと見るべきか、まだ1時間しか経過していないと見るべきか悩むね」


「とりあえずお互いの所感を交換して、それから判断しようぜ」


 チェストに格納している携帯食料からお互いに好きなものを取り出して、相も変わらず押し寄せてくる半魚人共と、それを押し潰す氷塊を見ながら消費したカロリーを補給する。


「割とサクサク倒していたつもりなんだけどな、全然減ってる感がねぇな」


「そうだね、倒しても次から次へと押し寄せてきていたからね...」

「でもちょっとずつだけど、押し寄せてくるモンスターたちが変わって来ていたのは気づいた?」


「あぁ、最初の方は14層目よりも上の階層にいた奴らばかりだったが、引き上げる前辺りは鎧着た個体や人魚も混じっていたな」


「だよね、だから一応はちゃんと数は減ってるんじゃないかな」


 確かに相棒の言う通り、倒していた半魚人共の見た目はどんどん変わっていたが、それってつまり()()()()()()半魚人共が押し寄せて来ているわけで...。


 そら1号たちが混成魔法で質量攻撃を繰り返しているのに、数が一向に減らないわけだ。

 俺らが倒したそばから、空いたスペースに下層で順番待ちしていた奴らが充填されているのだから。


「確かにこの階層の半魚人共は減っているが、その分下層から押し寄せて来ているかもしれない」


「それってつまり...」


「もうこのダンジョンでは溢れが発生しているってことだ」


 ダンジョンに着いてから直感スキルによる嫌な予感が消えていたから、おかしいなとは思っていたんだ。

 もうすでに溢れているんだ、そこに首を突っ込んでいるのに嫌な予感もくそもないってわけだ。


 くそったれ。


「迷ってる暇はなさそうだね、どう動く?」


 事態を理解した相棒がこちらに選択肢を渡してくれる。

 助かるぜ相棒、一緒に地獄を駆け抜けようぜ。


「15層目よりも上層もここと同様に溢れが発生しているだろうから、今帰還を目指したところで状況は好転するとは思えない」

「それよりも、現状の半魚人共の攻撃でこの氷壁を壊すことができていない以上、16層目の防衛戦を続けよう」


「それが結果として僕たちの安全と秋音先輩たちの援護になるんだね」


「あぁ、それに溢れが発生している以上、帰還箱は使えねぇ」

「階段で上層目指したところで前後から半魚人共に押し潰されるのがオチだ」


 本当なら溢れが発生する前に帰還箱で離脱する予定だったんだけどな。

 DEAが想定していた以上に半魚人共の数が増えていやがったな。


「さーて、援軍は当分期待できねぇ」

「半魚人共が尽きるか、俺らが死ぬまで終わらない防衛戦の開幕だぜ」


「僕らが死ぬことはないから半魚人共を殲滅しないとだね」


「ククッ、そうだな」

「全部殲滅しようか」


 休憩と意思疎通は完了したし、殲滅作業に戻るとするか。



 ―――――



 そう言えばゲームとかでよくある魔力、所謂M()P()と呼ばれる概念が無くて良かったと思うことは今日以上にないだろうな。


 魔法は対応するスキルを持っていて、自身が発動したい事象を想像することさえできれば、いくらでも魔法を使い続けることができる。

 ただ発現する魔法の規模は使用者の才能次第になるってのが一応ネックではあるか、それで相棒は普段魔法があまり使えないわけだし。


 なんでこんなことを考えているかって?

 休憩を終えてからかれこれ3時間、魔法を発動し続けているからだよ!


「カルマ、次!」


「はいよぉ!」


 狐火スキルで、着弾と同時に辺りに鈍足の呪いを付与する炎のイメージ。


「タイプ:カース、モード:スロー」


 その周囲を相棒が投げやすいように氷魔法で覆う球体のイメージ。


「タイプ:アイス、モード:スフィア」


「タイプ:カオス、モード:カース スフィア」


 着弾の衝撃で砕けやすいように工夫した氷の球を複数個一気に創造する。


「ほいよっと」


「ありがっ、とう!」


 相棒は氷の球でできた山から無造作に1つ手に取ると、その膂力を持って半魚人共に向けて投擲する。

 氷の球が半魚人に着弾するとその衝撃で氷が砕け、辺りに呪いの炎を撒き散らす。


 呪いの炎を身に受けた個体は進軍速度が落ち、後続に押し倒されて踏みつぶされ黒い煙に変わる。

 うーむ、やっぱり群衆事故って危ないんだな。


「あっ、投擲スキル生えた」


「おっ、いいねぇ」

「んじゃ、これ投げ終わったら一旦休憩しようぜ」


「そうだね、そうしようか」


 なんせ相棒はかれこれ3()()()ずっと投擲し続けてるからな。

 一向に半魚人共は数が減らないが、こっちの気力は減るからな、適宜休憩をしないとなんだよな...。


 こういう時、分身たちが疲れ知らずなのが助かる。

 そうじゃなければ今頃この砦の維持が出来ずに、俺たちは引き潰されていただろうな...こわ。


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