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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第51層目

 タクシーから降りた俺たちは、暗がりを静かに進み、DEAの裏口の前に着く。


 許可証が必要な時間帯は正面口が開いておらず、裏口から入らないといけないので少しめんどうだが致し方ない。


 あっ、監視カメラ見っけ。

 本当はちょっとダメなんだけど、時間に余裕が無いので許して欲しいという意味を込めて、相棒と一緒に申し訳なさそうな顔をしながら手を合わせて頭を下げておく。


 さて、そいじゃ作戦開始と行きますか。


 隠密スキルを発動し、外套の効果もあって静かに裏口を開ける。

 室内に視線が通ったので、天の眼(スカイアイ)で死角を捜索。

 発見した死角に相棒を連れてジャンプする。


 この時、1号が相棒と手合わせしていた時に使っていた、空間魔法による認識阻害魔法も展開しておく。


 ド深夜の、しかも人気のないダンジョンにあるDEAということもあり、死角が腐るほどあるのは助かる。

 この調子でジャンプを続ければ、誰にも見つからずにダンジョンまで...


「あれー?誰かそこにいるの?」


 ッ!

 なぜホオズキさんがここに!


 次の座標の選定はまだ済んでない、このままでは...!


「ふふっ、なーんて嘘!」

「草木も眠る時間のこの場所に、話題沸騰中のルーキー達がいるわけないよね!」


「今は掃討が上手くいかなくて、みんな1度戻ってきて会議室に缶詰中!」

「それに部屋の外に出てるのは、お手洗いに行きたくなった()()()()だから気のせいかー」


「はぁ、6層以降もモンスターいっぱい居るみたいだし、このままだとヤバいかも!」

「どっかに中層以降で足止めしてくれる人たち居ないかなー、なんてね!」


「いっけない、早く戻んなきゃとかちゃんに怒られちゃう!」


 そこまで言い残してホオズキさんは、会議室の方へと消えていった。


 情報提供感謝するぜ、ホオズキさん。

 めんどくさいギャルとか思っててごめんなさい、貴女は良いギャルだ!


 ホオズキさんの(げん)を信じ、死角を探すことよりダンジョンの近くに行けることを重視してジャンプを繰り返す。


 その後は誰にも会うことなく、ダンジョンの前にたどり着く。

 ここから先は試験会場と同様に一切のスキルが使えないようになってるので、大人しく姿を表して門へと向かう。


 門の前で待機している職員さんは、普段と変わらない格好をしているが、異様な圧を発している。


 いつ溢れるか分からないこのダンジョンの最前線で待機しているとなれば、それが職務とはいえ、さもありなんといったところか...


 職員さんに登録証と許可証を提示する。


「登録証と許可証、両方確認いたしました」

「現在のこのダンジョンの状況はご理解されていますね?」


「はい」


「支部長から、お2人が来たら通すように通達が来ております。16層目で防衛戦をしていただけることも聞き及んでおります」

「若いお2人を今のこのダンジョンに通すのは、ハッキリ言って自殺行為に加担していると言われても言い返せません」


 異様な圧を放っていた職員さん達からの圧が緩む。


「ですので、どうか私たちを自殺志願者を送り出した罪人ではなく、英雄の背中を押した賢人とさせてください」


 職員さん達が武器の刃先を天井に向けてこちらに敬礼をする。


「もちろんです、吉報をお待ちください」


「でも万が一の時は、逃げてきた僕たちを助けてくださいね?」


「承知しました、ではご武運を」


 職員さん達に見送られながら門を潜る。

 さぁ、16層目がどうなっていることやら。



 ーーーーー



 視界が戻ると同時に、イメージしておいた魔法を発動する。


「相棒!」


 座標指定完了。

 サイズは今の俺の限界、25m。

 さぁ、任せたぜ相棒。


「振り抜け!」


 特大の氷製チェーンソーを、相棒が有り余る膂力を持って振り抜く。


 階段付近に集まってきていた半魚人共が面白いように吹き飛んでいき、堪えた個体も回転する歯によって引きちぎられていく。


 相棒が180度振り抜く頃には、階段と帰還箱の周りにポッカリと開けた空間が完成した。


 だが、開けた空間もあっという間に押し寄せてきた後続によって瞬く間に埋まっていくが...


「おかわりをどうぞ!」


 返す刀でもう1度相棒が振り抜いたお陰で、開けた空間が再度出来上がる。


 けれどもこのままでは埒が明かないため、ここで一手を打つ。


「タイプ:アイス、モード:フィールド」

「タイプ:スペース、モード:ロック」


「タイプ:カオス、モード:アイスフォートレス」


 1度目の振り抜きと同時に呼び出しておいた1号達が、3号を中心にこの間の闘技場よりも強固な砦を、2度目の振り抜きでできた空間に創造する。


「とりあえず安全地帯は確保できたね、カルマ」


「あぁ、半魚人-勇者(サハギン-ヒーロー)で傷1つ付けられなかったコロッセオの強化版だからな、砦を維持できてる限りは、一旦安全なはずだ」

「だから3号、ここの維持は任せたぜ」


 こちらにサムズアップする3号を残し、相棒達と氷壁の上に立つ。


「さーて、相棒」

「楽しい楽しい防衛戦の始まりだぜ」


「方針はどうする?」


「相棒は(デコイ)を発動して、俺と一緒に氷壁に取り着くやつらのヘイトを買って掃討」


「分かった」


「1号はもう好きなだけ遠くに魔法ぶっぱなせ、遠慮はいらん」


 諸手を上げて喜びながら、早速各種属性の槍やら弾丸やらを射出し始める。


「2号は地上に降りた俺と相棒の援護をしつつ、余裕があれば1号と混成魔法を発動してくれ」


 こちらに敬礼を返した2号は1号の傍に行き、混成魔法を発動させていく。


 ...なんだあのクソデカ氷塊、ジャンボジェットくらいのサイズあるぞ。

 それを群れの真ん中に落とすとか、どシンプルな質量兵器じゃねぇか。


「んじゃ、ぼちぼち行こうか」


「職員さんに発破かけられちゃったからね、頑張らなきゃ」


「あぁ、そうだな」


 別に俺は英雄になんか興味はない。

 だが、職員さん達を罪人呼ばわりさせない為に、やるだけの事をやるだけだ。


「一旦、ソウルは温存の方向でいくけど異論は無いな?」


「うん、僕たちのソウルのデメリットは継戦に向かないから、それでいいと思う」


「そうだな。だがヤバければ速攻で使うし使えよ、命あっての物種だからな」


「もちろん」


 それじゃあ、1つ大きく深呼吸をして。


 ーーさぁ愉しもうか、終わりの見えない防衛戦を。


「背中は任せたぜ、相棒!」


「僕の方も頼んだよ、相棒!」


 ドッスンドッスンと大質量が降り注ぐ音を背に、相棒と氷壁から飛び降りる。


 BGMの締まらなさが、俺ららしいっちゃ俺ららしいか。

 強ばっていた体を解してくれてちょうどいいしな!

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