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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第50層目

 あれから半月が経ち、8月が終わりを迎える頃。

 俺たちは先生からの連絡を待ちながら、日帰りでダンジョン探索をしていた。


 ぶっちゃけ俺らが今1番欲しいのは経験なので、1つのダンジョンに挑み続けるのではなく、近場のEランクダンジョンを転々としている。


 ボリュームゾーンであるG〜Dランクまでは、自分のランク未満のダンジョンに入ることができない。


 だからこそ色々なダンジョンを味見したい俺らとしては、そろそろ県外を視野に入れつつあるといったところで、次はどこにしようかうちで作戦会議をしているのが現状だ。


「ねぇカルマ?」


「どした、相棒」


「秋音先輩のファスタ見た?」


「いや、全然開いてねぇから見てないや」

「どうかしたん?」


「それがね、半月経ってまだ5層目までしか掃討が進んでないみたい」


「は?」


 たしか俺らが抜けた穴に、()()()()()()()()()文武常道の1パーティが入って掃討を進めていたはずだ。


「文武常道の先輩たちは何してんだ...」


「それがなんか、先輩たちと僕たちを知らない人たちで一悶着あったみたいで、上手いこと連携が取れていないみたい」


「もしかしてその状態で名護弥大の人たちは、姉御の言葉を免罪符に好き勝手やってんのか?」


 苦々しい顔で頷く相棒を見て、連日していた嫌な予感が強くなる。


「相棒、この状況で16層目以降はどうなってると思う」


「分からないね、まだギリギリ持ちこたえてる気もするけど、カルマが聞いてくるって事は嫌な予感がするんだね」


 今度は俺が相棒に苦々しい顔をしながら頷く。


「どうする?カルマ」


「四の五の言ってられない...か」

「相棒、先生とリュウに一報入れておいてくれ」


「分かった」


「俺は父上に連絡を入れる」

「父上から許可貰って、今日のド深夜に【半魚人】へ行く」


「リュウの方は詳細伝えた方が良い気がするから、通話で伝えとくね」


「さんきゅ」


 父上に連絡する前に1号たちを呼び出して、俺と相棒の装備品のチェックをしてもらう。

 常日頃から点検しているから早々問題は無いはずだが、こういう時こそ使う前にチェックが必要だ。


 だから2号、お前を中心に頼んだぞ。


 ということで父上に電話をかける。

 この時間だとギリギリ残業終わったかもしれないけど、もう少しだけ働いてほしい。


 DEAは24時間ダンジョンに入ることができるが、22時から5時までの間は良からぬ冒険者の侵入を防ぐため、受付で許可を貰う必要がある。


 だが今回に関してはそんなことをしている間に、【半魚人】にいる他の冒険者に絡まれる気しかしないので、父上の権力を頼る形になる。


 許可証がQRコードで助かった、ビバ電子化!


『どうしたんだい、カルマ』


 っと、許可証について考えてたら父上に繋がった。


「父さん!嫌な予感がするから今から言うダンジョンの許可証発行してもらえる?」


『ホントはダメなんだけどね、カルマが僕のことを父さんと呼ぶからには緊急なんだろう』

『理由を教えて、それで判断するよ』


「うん、父さんに情報上がってるかもだけど、Eランクダンジョンの【半魚人】がお盆時点で溢れ1歩手前だったんだ」

「でも掃討の進捗が悪いみたいで、半月で5層しか終わってないらしい」


『なるほど、それは確かにマズイけど、そこに2人が行っても変わらないよ?』


「普通に合流するならね」

「でも僕らは15層目まで攻略が終わってる」


「...だから16層目で防衛戦をするよ」


『...生きて帰ってくる算段はあるんだろうね』


「もちろん、俺も相棒も命かけてまで尻拭いするつもりはない」

「ただ、こうなった原因は俺らにもあるから、やれることをやりたいだけだよ」


『そうか、わかったよ』

『でも流石に許可証を僕が発行するのは色々とマズイから、同期に発行してもらったのを送るね』


「ありがとう、助かる」


『日付変わるまでには許可証送るから、それまでにできるだけの準備はするんだよ』


「もちろん、俺も相棒もちゃんと帰れる準備するさ」


『ならよし、紗綺君にもよろしくね』


「うん、それじゃあ頼んだよ父上」


『任せといて』


 父上との通話を終えて一息つく。

 相棒の方はまだ通話中か。あの感じからして今はリュウと話してんのかな。


 リュウの父親がCランククランのサブオーナーをしているため、万が一の応援要請ができるように相棒にリュウへの連絡を頼んだ。


 日付が変わるまであと2時間くらいか。

 相棒の方もそろそろ終わるだろうし、そしたら少し仮眠取るか。


 次いつ寝れるか分かんねぇからな...



ーーーーー



 日付も変わり、人々が寝静まった夜の道を俺らを乗せたタクシーが走る。


 この調子ならあと10分もしたら着くだろう。

 最終打ち合わせをしておくか。


「相棒、この後の流れは大丈夫か?」


「うん、予定通りでいいよね?」


「あぁ、イレギュラーが起きない限りな」


「分かった、でも秋音先輩には言わなくていいの?」

「万城目先生も自分からは伝えないって言ってたし...」


「あぁ、言わなくて大丈夫だ」

「今は文武常道のゴタゴタをどうにかする方が先決だからな、下手に俺らが時間を稼いでくれるとか思わせない方がいい」


「そっか、なら伝えないでおくね」


「さんきゅ」


 最後の打ち合わせを終え、緊張を解すために他愛もない話で目的地までの時間を潰す。


 今回の防衛戦は義憤でも罪滅ぼしでもなんでもない。

 ただ、積もり積もった鬱憤を尽きることの無いモンスターにぶつけるだけ。


 ...要するに八つ当たりだ。


 お盆前の騒動も、姉御の対応も、天下布武の舐めたヤツらに対する鬱憤も。


 全部全部、纏めてぶつけてやる。

 ...だから俺らがスッキリするまで、簡単に尽きてくれるなよ。

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