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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第48層目

お互いにモヤモヤした思考を整理する時間が欲しかったので、真夏の日差しに焼かれながら黙々と俺の家へと向かう。


こういう時、喋らなくても意思の疎通ができるのが有難い。


今回の依頼は姉御の名義で受注しているため、俺らがブッチしたところでDEAからのお咎めは特に無いはずだ。


まぁ印象は悪くなるかもしれないが、春に先生に言われた俺たちが高評価されてるってのが本当なら、そこまで問題はないはずだと思いたい。


ちっ、不確定要素が多すぎてどう転ぶか分からねぇ。

最悪、枷を付けられることなくダンジョンに潜り続けられるなら俺はそれでいい。


俺の最終目標は相棒を人に戻すこと、そのためにはこんな所で死んでられねぇんだ。

だから姉御が天下布武とどんな交渉をしたかは知らんが、今回の条件を呑むことはできない。


...姉御もそれを分かっていると思ったんだがな。


思考に耽っていると、隣の相棒が足を止めた。

っと、気がついたら家の前まで来てたんだな。


「なぁ」

「ねぇ」


相棒と声が被る。


目を合わせれば、真剣な眼差しをこちらに向けていた。

恐らく俺も同じような目を向けていることだろう。


何を言わんとしてるかはわかる、俺も同じだからな。


「天下布武にカチコミに行こう」

「万城目先生に交渉内容の確認をしよう」


あれぇ???


「相棒?」

「カルマ?」


「えっ、相棒今なんて?」


「万城目先生に交渉内容の確認しに行こ?って言ったよ」

「そういうカルマはなんて言ったの?」


「俺は天下布武にカチコミに行こうぜって言ったぜ」


あるぇえ???


おかしい、相棒のあの目は完全にカチコミに行くやつの目をしていたはずだ。

もちろん俺も同様にガンギマってたと思う。


今はお互いに鳩が豆鉄砲を喰らったような顔してるけどな。


「僕も少しカチンと来てたから殴り込みは頭によぎったし、カルマなら言いかねないと思ったけどさ」

「まさか本当に言うとは...」


「なにヤレヤレって首振ってんだ相棒」

「相棒だって目が雄弁に物語っていたじゃねぇか」


「そんな事ないと思うよ?」


「いーや、絶対俺と同じ目をしてたね」


「ふふっ、そんなことないよ」


「こんにゃろ、可愛く誤魔化しやがって」


相棒がそれやると死人が出るんだよ。

ほら見ろ、向こうから歩いてきていたお姉さんがお前の顔見てショートしたぞ。


これだから無自覚美男子は...


「僕の目が何を語っていたかは一旦置いといてさ、流石に天下布武にカチコミへ行く前に、先生のところに行こ?」


「えー、どうせ契約時の守秘義務がーとか言って教えてくれねぇぜ?」


「だとしても義理は通しとくべきだと思うよ」


「それを言われるとなんも言い返せないけどさぁ...」


たしかに何かしら事情を知ってるであろう先生に聞かずに、1足飛びに天下布武へ行くのは不義理か。

それにこんなペーペー2人がアポ無しで向かったところで、門前払いが関の山だろうしな。


なら空気感だけでもいいから、先生に事情を聞きに行って、天下布武へのアポを取ってもらうが吉か。


「しゃーねぇ、なら先生のところ行くか」


「その必要は無いぞ、問題児コンビ」


背後に車が止まる音がし、聞き覚えのある声がする。

と言うかこの呼び方するのは1人しか該当しない。


俺たちが振り返ると、案の定車から降りてきた万城目先生が居た。


「言いたいこと、聞きたいことは色々あると思うが、一旦移動しよう」

「ここで話してたら暑すぎて真面目な話もできん」


「それならうちに上がってってください」

「歓迎するっすよ」


「そうか、助かる」


「父上たちもまだ帰ってかないっすから、車は駐車場に停めてもらって大丈夫っす」


「わかった」


「んじゃ相棒、俺らは先に中入ろうぜ」

「先生をもてなす準備をしなきゃな」


「ん、わかったよ」


さーて、根掘り葉掘り聞かせてもらうからな先生...!


ーーーーー


相棒が入れてくれた紅茶で口を湿らせながら、相棒とアイコンタクトを取る。


...そうだな、今回は相棒主導で頼むわ。

俺だと感情が先行してやらかす気がする。


「万城目先生、まずは軽いところから聞きます」

「どうしてこんなにも早くカルマの家に?」


「多方こうなる事が予想できていたからだ」

「秋音から2人が居なくなったと連絡が来た時点で既に家の近くにはいたさ」


こうなることは想定内かよ、ならどうしてこないだ言ってくれなかったんだ。


「そうですか、万城目先生たちはこうなる事が予想できてたんですね」


「まぁな、何年2人を見てきたと思う」


「ではどうして3日前に教えてくれなかったんです」


「むしろあの日の俺は、秋音が言わないように止める役だった」


...!

ちっ、そこまでして隠してきたか。

いったい何が目的だ?


「良くも悪くも2人は目立ちすぎたんだ」


「ハル坊並の昇格スピード、1度の攻略での収入」

「周りを嘲笑うような希少スキルに装備を揃えた少数精鋭」

「挙句の果てに容姿に優れていて、態度や性格も良いときた」


それの何が悪いってんだよ。

「それの何がいけなかったんですか」


「持たざる者の妬みや僻みってやつだ」

「そうやって燻ってたヤツらが今回の騒動に便乗して、お前らに汚点を付けようとしたのが今回のことに繋がる」


なんだよそれ、くだんねぇ。

実力主義の冒険者が出る杭を打ってどうする。

自分がより飛び出た杭になれよ。


「じゃあその感じだと天下布武にも僕たちを快く思っていない人がいると」


苦々しい表情を浮かべた先生が頷く。


「その連中がハル坊不在の日に俺らとの会議を組んだ、騒動の解決は早い方がいいとか言ってな」

「あとは簡単なことだ、学園時代からお前ら2人に誰かが加わるとパフォーマンスが落ちて嫌がるのが知れ渡ってるからな」


「クチナシさん達を加えるように条件付けしたんですね」


「あぁ、そうなるな」


狡いことしやがる...


「それにしても、どうしてあの2人だったんですか?」

「秋音先輩の幼馴染なんですよね?」


「そっちもそっちでやっかみだ」

「クチナシがハル坊の妹なんだよ」


妹がやっかみの対象ってどういうことだ?


「ほんでもってハル坊は...シスコンが酷いんだ」


酷いんだ...巷では勇者って言われてるのに。

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