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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第39層目

「よいせっと、これでこの階層の間引きも終わりだな」


 最後の一体を切り伏せ、黒い煙に変わったことを確認してから一息つく。

 あれから順調に間引きも進み、現在14層の間引きが終わったところである。


 このダンジョンに挑む冒険者が少ないのが原因なのか、相棒が(デコイ)を使うまでもなく、10歩も歩けば5体1組の半魚人(サハギン)に囲まれるレベルまで飽和している。


 次階層が中ボス階層ということもあり、不人気とはいえ、ある程度冒険者がここくらいまで降りて来ていそうなものだが、この一週間一度も鉢合わないのを鑑みると、ここまで飽和しているのも頷けるものがある。


「1号の回収作業と2、3号の討ち漏らし掃討作業が終わるまで、のんびりするか」


「そうしよっか」


 よしきた、こういう時のためにコレを入れといたんですよねぇ。


 いそいそとチェストからビーチチェアとパラソルのセットを取り出し、サイドテーブルの上にグラスに注いだ赤コーラをセットして寝転がる。

 もちろん相棒の分もセット済みである。


「バカンスかな?」


「良いだろ、この階層の安全は確保したし、どうせ次の階層はいつものボス前の通路で味気ないしな」


「それを言われたら何も言えないんだよね」

「ということで僕もご同伴にあずかろうかな」


 相棒が隣のビーチチェアに寝転がると、回収作業をしていた1号がこちらをチラ見した後、平然と作業に戻る。

 珍しいな。いつものアイツならこっちを指さして地団駄でもしそうなもんなんだが。


「そういえばカルマ、1号達役割変えたの?」


「いや、そんなことしてないが…どういうことだ?相棒」


「あれ?だって今そこで素材回収してるの2号だよ」


「は?嘘やろ」


 慌てて回収作業をしている分身の方を見れば、相棒の方を見ながら口に指を立てて、内緒だと言わんばかりにアピールしていた。


「お前ら、いつの間に…」


 俺が2号に近づくと、観念したのか地面に言い訳を書き出す。


 …なになに?


「1号が回収作業に飽きたから、ストレス発散がてら残党狩りをしたいと言い出したので交代した…と」

「となると諸悪の根源は1号か」


 俺がそう言うと、全力で首を縦に振る2号。

 いっそ清々しいまでに売り飛ばしたな、コイツ。


「まぁ基本真面目なお前が何も言わずにここで作業してるってことは、多分1号に口止めされたのと、自分も少し戦闘で疲れたとかそこら辺だろ」


 バレたって顔してるから正解っぽいな。

 お前さん、そういう所あるよな…2号。


「まぁいいや、回収作業はちゃんとしてくれてるし、相棒の刑は許してやる」

「ただちゃんと報連相はしてくれ?」


 んー、敬礼のポーズは一丁前に様になってんだよな。

 2号は割と他の分身達を優先するから、多分また報連相端折るだろうけど、今日のところはお咎めなしといこう。


 そんな事を考えながら2号に作業の続きを促して、ビーチチェアに寝転がる。


 あー、夕暮れ時の日差しがちょうどいいな。

 これで遠くの方から近づいてくる()()()()()さえなければ、最高のバカンスと言えるのに。


 俺たちが戦闘してる時に遠くで砂煙が上がっているのは認識していたが、いったいどうしたらそんな悲鳴が上がるのやら。

 ちょっくら天の眼(スカイアイ)で見てみるか。


 ビーチチェアに寝っ転がりながら、視界を砂煙の立ち上る方へと近づける。


 えーっと、ほんほん…えげつないなアイツら…。


「1号たちは順調そう?」


「順調にえげつないことしてるぜ」


「えげつないことって、何をしてるのさ」


「足を凍らせてから火炙りの刑で処して、生き残りを空間圧縮で吹き飛ばしてるだけだ」


「あー、それは確かにえげつないね」


 相棒は苦笑しているが、俺としては感心するばかりである。


 大雑把に1、3号の足元以外をくるぶし丈まで水魔法で領域を広げる。

 一定数の半魚人が足を踏み入れたら氷魔法で一斉に拘束。

 拘束した瞬間に座標指定した狐火で炎上。

 粗方燃え尽きて素材に変わり始めたら、生き残りの近くの空間を圧縮して解放。計2回の爆風を至近距離かつ足の自由を奪った状態で浴びせる。


 雑に領域を広げて凍らせるだけでいい1号と、座標指定が得意な3号だからできる合わせ技だな。


 ただ、いかんせん爆風で素材が散らばるのが難点か。

 まぁそれも辺り一帯を砂ごとカットして自分らの近くにペーストしてるから、回収作業も問題なさそうか。


 強いて言うなら、ペーストした際に一緒に回収してしまった砂が舞い上がることで、今みたいに1号達のいる場所が砂埃で軽い視界不良を起こしているのが難点か。


 まぁ俺らは天の眼があるからなんにも問題ないがな。


 そんなこんなで俺らが掃討組の作業を見守っている間に、回収作業を終えた2号を掃討組に合流させ、その間俺たちはダラっと休憩タイムに突入した。


「あいぼー、この後どうする?」


「んー、そろそろ1回帰還しようか」


「だよな、んじゃ中ボス倒して一旦帰るか」


「ここの中ボスは確か複数タイプだったはずだね」


「司令塔系がいるかいないかで変わるが、ここはどっちだ?」


「確か司令塔1体に取り巻き複数体だったかな」


「なら相棒のソウルの反動調整も兼ねて、ソウル使用の相棒が司令塔とタイマン」

「取り巻き共は俺と分身達で処理がいいか」


「そうだね、そろそろ1回発散しといた方がいいかも」


「んじゃ、それで行くか」

「おーい、お前らそろそろ次行くぞー」


 とっくの昔に悲鳴が鳴りやんだにも関わらず、立ち上り続ける砂埃に声をかければ、観念したように砂埃が風に流れて消えていく。


 砂埃が晴れた先には、恐らく氷魔法と空間魔法の合わせ技で造られたと思われるビーチチェアに寝っ転がった分身達がいた。


 仕事終わってるみたいだからなんも言わねぇけど、お前らほんとに自由人だよな…。


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