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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第2章 巻き込まれる英雄見習い

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第37層目

少し体調を崩していましたが復活です。

更新を再開していきますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。

 ロングコートを翻して残心する相棒の元へジャンプする。


「随分早かったな、相棒」


「防具の性能と相性のおかげかな」


「なるほどな、だいぶ馴染んできたみたいだな」


 改めて、相棒を足先から頭頂部まで眺める。


 装飾の少ないシンプルな黒のロングコート。

 最低限の装甲を付けて機動力に振り切ったスキニーパンツと、両腕の可動域を損なわない程度の装甲に留めた軽鎧。

 紅色のガントレットはそのままに、駆け回ることを意識した紅色のブーツ。

 相も変わらず鎖を腕に巻き付けている姿は、だいぶ様になっていた。


天狐(スカイフォックス)倒した時に出た防具が僕のスタイルに合ってて助かったよ」

「お陰で余計な出費をしなくて済んだからね」


「だなぁ、びっくりするくらいボロボロだったもんな相棒」


「しょうがないよ、Dランクのボス相当はそれだけ強いってことなんだから」


「そしてその防具を身につけているから、魔法フル活用の俺と変わらない殲滅力になると」


「そうなるね、便利なんだこの()


 そう言いながら右腕を振り回す相棒の前腕を覆うように、三本の爪が具現化している。


「あいにく僕は魔法を使う素質が少ないみたいだけど、この爪に魔法を込めることくらいはできるからさ」


 その言葉と共に爪が燃え上がり、稲妻が走り、風音が鳴り止まなくなる。

 ……相変わらず風魔法の隠匿性はズルいな、これだけ爪の全容がいまいち分からん。


「それに半魚人達は事前調査から火属性に弱いことが分かってたからね。この炎の爪を振り回してたらすぐだったよ」


「そういうもんかい」


「うん、Eランクでも低階層ならこんなもんだよ」

「それよりカルマの方もだいぶその頬当になれてきたんじゃない?」


「んー、俺はむしろ慣れてきたせいでちょっと物足りないってなってるな」


 天狐が落とした頬当の効果は、単純に最大3人の俺を()()することができる。


 これの何がやばいかと言うと、普通の分身系スキルは使用者の()()()()()操作が必要となるのに対し、俺の場合は並列思考の1つを明け渡すことで()()()でこちらの考えや行動を汲み取り即座に反映してくれる点だ。


 なので理論的には可能だが実践は不可能と言われていた、異なる性質の属性による混成魔法がいとも容易く発動可能となった。


 ついでに言うなら、存続可能距離に限りがあるとはいえ5階層くらいなら行動可能。

 並列思考がないだけの俺なのでチェストも使用できる。

 ソウルは流石に使えないが、スキルは並列思考以外全部使える。


 それだけにな、3人しか増えないのって正直もったいないよな。


「あーあ、天狐が9尾だったら良かったのに」


「分身数が増えるかもしれないからかい?」


「そうそう、天狐が4尾だったから3人までしか増やせないと思うんだよな」


「でも9尾だったらAランクのボス相当だから、今の僕たちじゃ天地がひっくり返っても無理だと思うよ」


「ちぇー、取らぬ狸の皮算用ってことかよ」


「そういう事だね、今は寝ずの番をせずに済むようになったことを素直に喜ぼ」


「そうだな」


 そんな事を話している間に、さっき創造した分身が相棒が殲滅して散らばっていた魔石や素材の回収を終え、こちらに手を振って消えていった。


 仕事をこなしてすぐに消えるあたり、俺そっくりである。


 それはさておき、魔石の数だけでも30くらいあるということは、ざっと100体倒したってとこか…。


「相棒、不人気ダンジョンとはいえここまで増えてるのはヤバいな」


「そうだね、短期間攻略よりも時間をかけて各階層を狩っていこうか」


「そうすっか。じゃあ予定変更を姉御に伝えるために1回外出るか」

「ということで相棒、今度は帰還箱までおなしゃす!」


「はいはい」

「どうする?半魚人に見つからないように行く?」


「いや、まだ時間もあるし本当に数が飽和しつつあるかの確認も兼ねて、海上を高度低めで駆け抜けていこう」


「ん、分かった」


 ということで快速サズキ便しゅっぱーつ!



 ーーーーー



 とうちゃーく!


 …はいいんだけど、どうすっべなこれ。


 とりあえずここはひとつ。


「ハハッ、見ろ!(サハギン)がゴミのようだ」


「お約束だねぇ…満足した?」


「うむ!」


「じゃあどう殲滅するか考えてね」


「んー、1つ試したいことがあるからそれ次第かな」

「ちょっと待ってな」


「僕はいいけど、半魚人達がどれだけ待ってくれるかは未知数だからね」


 相棒の言葉通り、地上を軽く埋め尽くすくらいいる半魚人共は、上空にいる俺達になんとかちょっかいを出そうと肩車してみたり、2人(?)がかりで1人を投げてみたりと色々試している。


 …そのうちクソデカ人体ピラミッドでも作り始めそうだなこれ。


 そうなる前にちゃちゃっと殲滅しますか。


 とりあえず空間魔法でそこら辺の空間を10mくらいの棒状に圧縮固定して手に取る。


 空間が抉られた余波で発生した暴風は相棒が気合いで耐えてくれました。

 …ごめんて、帰還したら甘いもん奢るから許してや。


 元々が空間なので重さ皆無のこの棒に、昔水魔法で行使したチェーンソーのイメージを、今度は氷魔法で再現する。


 傍目には何もない空間を、氷の歯がギュルンギュルン回ってるように見えるな。


「あーいぼ、地面に降り立って一回転」


「おっけー」


 ちょっとまださっきの暴風事件に怒っているのか、勢いよく砂浜に着地した相棒が、自身が起こした砂埃を払うかのように一回転する。


 当然のようにおぶわれていた俺も一回転。

 すると手に持った氷製チェーンソーも一回転するわけで…。


 砂埃が落ち着いた頃には、辺りにいた半魚人が8割方薙ぎ払われていましたとさ。


 …代償は俺の両腕の筋繊維です。

 チェーンソーに触れた瞬間に胴体泣き別れしてたとはいえ、重さはちゃんとかかるわけで、それでも離さないようにしてたら筋繊維もぶっ壊れるわなと。


「相棒、あとは頼んだ…」


「分かった、ちょっと待っててね」


 俺を砂浜に下ろした相棒が爪を構えて残党に突撃してくのを眺めながら、創造した分身にポーションを腕にかけさせる。


 大量の雑魚を処理するにはもってこいだけど、今度からは相棒に持たせよ。

 俺じゃいくらポーションあっても足んねぇや。


 嬉々として残党を狩っていく相棒を眺めながら、固く心に誓う。


 …あと、思ったよりちゃんと怒ってる感があるので、姉御にオススメの詫びスイーツ聞いておこ。


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