第36層目
姉御との打ち合わせも終わり、通話を解散する。
モニターに表示されている時刻を見れば、そろそろ試験の結果が出そうな頃合いであった。
さすが姉御、時間管理完璧かよ。
「寝る準備したらいい感じに試験結果出てそうだな」
「そうだね、サーバーの混雑も解消されてそう」
「んじゃ、ちゃちゃっと寝る準備しようぜ」
「姉御も夜更かしはお肌の敵!とか言いながら通話抜けてったしな」
ダンジョンに数日単位で潜ったりしていた時点で今更な気もするが、そんなこと言った瞬間に姉御が満足するまでノックダウンの刑に処されるから絶対言わない。
ダラダラと寝る準備をしていたらあっという間に日付も変わり、試験結果を伝えるメールが届いていた。
結果も分かりきっているのでサクッと開封。
合格の二文字が大きく記載され、その下に免許の更新等、諸々の説明事項がつらつらと記載されていた。
…読むのめんどくせ。今度暇な時に相棒に要約してもらうか。
「ちゃんと受かってた?」
「もちろん、流石に落ちねぇよ」
「なら良かった。Eランクでも5%くらいの人が1回落ちるらしいからね」
「唐突にポンするカルマならやりかねないなって」
「相棒からの信頼がなくてお兄さん悲しい」
いや、この場合は信頼がありすぎるがゆえか?
まぁどちらにせよ嬉しくはないが。
「なんにせよこれでEランクダンジョンに潜れるようになったな」
「天狐レベルの敵はいないとはいえ、通常モンスターの強さは上がってるから油断はできないよ」
「そうだな、選定に巻き込まれる可能性もあるし準備は万全にしとくべきか」
なんとなーく嫌な予感はしてるんだよな。
またボス戦辺りで選定が来そうだが、直感先生は無反応だから分かんねぇや。
「明日は免許の更新と準備に割り当てて、潜り始めるのは明後日からにしよっか」
「りょーかい、んじゃ今日は寝るべ」
「うん、おやすみ」
「おやすみー」
床に敷いた布団で寝る相棒を横目に、眠りにつく。
ーーーーー
ということでやって来ました!
青い海!白い砂浜!雲ひとつない茜色の空!所々上陸している半魚人達!
んー、海パンみたいなのを何故か履いてるからギリギリ海水浴客と言ってもセーフか?
「これはパラソルが無くても快適に寝っ転がれたか?」
「ピクニックにしろ海水浴にしろ、なぜ毎度ダンジョンでやろうとするんだい?」
「ダンジョンの外でそんなことしてる時間はないからな。でもやりたいのでせめてダンジョン内でってところだ」
「いや、ところだって言われても…」
「気の張りすぎは良くないんだぜ?相棒」
「適度にリラックスしてこうぜ」
「はぁ、もう…」
「カルマはリラックスしすぎなんだよ???」
そんなこんな話していると、次の階層に向かう階段が視界に入る。
ここは階層の半分強が海となっているからか、そこまで陸地は広くないため、相棒の足と天の道なら30分も駆け抜ければ次の階層へと続く階段が見つかる。
「さーて、いい加減現実逃避は止めるか」
「やっとかい?」
「わりぃわりぃ。とはいえあれ見たら現実逃避の1度や2度したくもなるだろ」
「その意見は否定しないけどね」
上空からの景色+天の眼による海中の視点には、数十体の半魚人達が俺たちを追ってるのが嫌という程見えている。
「これがEランクか。まさか上空を通る相棒を補足して海中から追尾してくるとはな」
「嵐鎧状態なら多分引き離せたけど、それをしたらカルマが危ないからね…」
「それを言うなら俺も相棒と共にジャンプしておけば良かったってなるからおあいこさ」
「それよかこれ以上増えると普通にモンパニ案件になるからいい加減殲滅するぞ」
「分かったよ。じゃあ僕は地上のヤツらを蹴散らすね」
「任せた、俺は海中のヤツらをやってくる」
相棒の背中から飛び降り、パラシュート無しスカイダイビングを敢行する。
「タイプ:アイス、モード:フィールド」
STEP1:海面を氷魔法で凍らせ、5㎡サイズの足場を生成。
「タイプ:スペース、モード:ジャンプ」
STEP2:生成した足場の座標に空間魔法で転移。
色々検証した結果、転移前の慣性は転移後に反映されないらしい。
そのため急制動に耐える肉体さえあれば問題ない。
そんなことを考えながら次の手の為に頬当に触れる。
隣の俺にガワとなる氷槍を想像させ、俺は中に詰める炎を想像する。
「タイプ:アイス、モード:ランス」
「タイプ:フォックス、モード:バーニング」
「「タイプ:カオス、モード:インセンディアリー・ランス」」
STEP3:天の眼と熱感知スキルの組み合わせで特定した半魚人共に、呪いの炎を宿した氷槍を射出。
俺達の背後に創造した突撃槍が標的に向かって飛翔し、そのままの勢いで半魚人共に突き刺さる。
海中で踏ん張ることの出来ない半魚人共は氷槍の勢いで姿勢を崩し、そのまま封じられていた怨恨の炎で燃やし尽くされる。
いやぁ、恐ろしいな。
この炎は酸素ではなく敵対者の生命力を糧に燃えているから、海中でも関係なく燃え続ける。
程なくして現実逃避したくなるほど居た半魚人共は全て黒い霧となって海水に溶け、魔石や素材に変わった。
これ全部回収するのめんどいけど、それでスルーしたら姉御に何言われるかわからんし回収するか…
「タイプ:スペース、モード:カット」
「タイプ:スペース、モード:ペースト」
海中を漂う戦利品周りの空間を異空間に転送した後、俺の背後の氷の足場に再転送。
海水も一緒に転送したから足場がびっちゃびちゃになったが、水魔法との親和性のお陰で俺が濡れることはなかった。
ラッキー。
とりあえず何が手に入ったかを確認するのは後回しにして、纏めてチェストに突っ込む。
さてと、相棒の方から悲鳴と粉砕音が聞こえなくなったし、向こうも片付いたかな?
なんで魔法で一掃した俺と、物理一辺倒の相棒が、半魚人の数がこっちより3割くらい少ないとはいえ同時に終わってんだ???
お兄さんちょっとよくわかんないや。




