第42話 レアアイテム・・・ゲット?
俺たちは塔から一旦街に戻り、中途半端になっていた買い物を再開した。事件がひと段落して気が大きくなっていたのと、シャルムのくれた報酬がかなり多かったので、ちょっと買いすぎてしまったかもしれない。すっかり忘れてたが、帰る途中で花子がギルドの依頼の植物も採取してくれたんで、さらに収入がプラスになった。
高くて迷っていたテントも大きめのが買えたし、花子が野菜の栽培をしたいというんでそれっぽい種を片っ端から買ってやった。花子は今回、頑張ったからな。ついでに二人の服も買ったぞ。俺も『飛蝶のナイフ』というちょっといいナイフを買ってしまった。なんとこれ、マジックアイテムで、投げた後勝手に手元に戻って来るんだよ。かなーりお高かったんだけど・・・・・・。
そんな風にショッピングを楽しんでいた俺たちのところに、見知った人物が顔を出した。俺たちが助けたみつあみメイド、フィーレちゃんだ。
「よ、怪我の具合はどうだ?」
「はい、おかげさまで傷跡も残らないぐらい綺麗に治っています」
そうか、治ってるならよかった。女の子の体に傷が残っちゃかわいそうだからな。
「ところで、アムネイアお嬢様がまたクルク様にお会いしたいと・・・・・・」
「うーん、あのお嬢様が?」
正直、あのお嬢様はちょっと苦手なんだよな、俺。たまに変な目で見られてるようでムズムズするというか。でも、今回シャルムが一応助かったのは、あのお嬢様のおかげではあるからなあ。
「まあ、お礼も言わなきゃいけないから、一度お屋敷に行くよ」
「はい、お待ちしております」
俺が了承するとフィーレちゃんは嬉しそうに頭を下げた。
今回はシャルムもいないし、俺一人で行ってもよかったんだが・・・・・・ゲル子と花子がどうしても離れそうにないので一緒に連れて行くことにした。自分たちが目を離すと俺が無茶して怪我をするとでも思っているらしい。前科があるので強く否定はできない。
俺たちは応接間に通され、3人並んで豪華なソファに腰掛けた・・・・・・んだが。
「おい、なんだそのでっかいの」
「・・・・・・けろっ けろけろっ」
お嬢様の隣にででんと鎮座しているのは、いつか庭で見たあのでっかいカエル。こいつ、やっぱり置物じゃなかったのか。そして、この家で飼われてんのか?
「この子の名前は『ケロケロ・ケロッパ』です」
なんだそのギリギリなネーミングセンスは。いや、俺が人のことをいえた義理はないのかもしれないが。それにしても、でかくて不細工なカエルだな。
「仲良くしてやってくださいな」
「よろしゅう、たのんまっさ」
「・・・・・・しゃべった?!」
なんかおっさんみたいな声でしゃべったぞ。不細工な上に不気味だな。
「ああ、この子は実は普通のカエルじゃないのよ」
「見れば分かる。そんなでかいのが庭や畑にゴロゴロいてたまるか」
「ジャイアントフロッグって名前の魔物の変異種でね」
「・・・・・・おい、街中で魔物飼ってるのかよ!」
北エリアの連中に見つかったら、異端扱いで処刑されるぞ。
「あら、自分だって似たようなもんじゃないの」
そう言ってゲル子と花子のほうに目を向けるアムネイアお嬢様。・・・・・・まさか、ばれてんのか?お嬢様に聞こえないようにひそひそ声で花子を詰問する。
「おい、花子、お前らバレるようなことしたんじゃないだろうな」
「何にもしてないわよ。毎日大人しくしてたし。ケロッパがバラしたんじゃないの?」
うーん、そうか。確かに魔物同士ならお互いが分かるものなのかもしれない。・・・・・・そういうもんか?俺が納得しかかったとき、ゲル子から爆弾発言が飛び出す。
「いやー、クルクさん、師匠とお知り合いだったんですねえ。びっくりです」
「おいゲル子、師匠ってどういうことだ。このお嬢様と知り合いなのか?!」
「師匠は、わたしたちの文字のお師匠様ですよ~」
「ゲル子ちゃんたちは私の貴重な同好の士なのよ。仲良しさんなのよね」
おい、じゃあ、最近こいつらが変なことを覚えてきてるのは・・・・・・アムネイアのせいだったのか?なんとなく怪しいやつだと思ってたが、本当にろくでもないな。
「いやあ、アムやんと同じ趣味とかホンマ下衆いわー ワシついていかれへんわー」
「高尚な趣味と言っていただきたいわね ホホホ」
そう言って優雅に口元を隠して笑うアムネイアだが・・・・・・ここはなんだか危険な香りがする。とりあえず用件を済ませて早めに帰ることにしよう。
「そういや、あの『賢者・・・・・・の石』、助かったよ。名前はサイテーだが、効果は確かだな」
「あら?あの『賢者タイムの石』が使えたの?いつどういう風に使ったのかしら。オカズの選択を間違えたときとか?」
オカズって何だ・・・・・・夕食のメニューとかそういう意味だよな?是非そうであって欲しい。
お嬢様が興味津々だったので、俺は今回の事件について簡潔に要点だけ話した。シャルムが元のままの姿では生き返れなかったってことも含めてな。
「あら、では死んだ人が生き返ったってわけ」
「まあ、だいぶ姿は変わっちまったんだけどな。そういえば、石は3個あったといってたよな。まだ1個あるってことなのか?」
「それが・・・・・・普段使うこともないんでその辺にほっぽり出しておいたら、どこに行ったか分からなくなっちゃったのよね。まあ、そのうちどこかから出てくるんじゃないかしら?」
そんな扱いでいいのかよ、一応マジックアイテムだろ!
「まあ、なんにせよあなたがアレを使えたってことは、やっぱり私の思ったとおりだったってことよね。で、聞くけど、あなたの『能力』ってなに?元の名前は?」
「は?能力?・・・・・・って罠の解除とか鍵開けの技術とかのことか?」
「とぼけなくていいのよ。ひとりにひとつ、必ず持ってるでしょ。ちなみに私の能力は『妄想創造』。以前の名前は、安藤加奈。日本人、年齢はヒミツ」
「・・・・・・言ってる意味が全然分からん。頭、大丈夫か?」
いや、最初からあんまり大丈夫じゃないかもしれんな。変人だし。
「アムやん、この兄さん全然話についてっとらへんで」
「でも、ケロッパ。彼が『転生者』で間違いないんでしょ?」
「そら、他の二人は魔物やからな。それに、この兄さんたぶん能力は『飼育』系か『魅了』系やろ。こうやって近くにおるだけで、体の芯からずっきゅん来よるわ」
「気色悪いこというな、おっさん声しやがって」
「いややわぁ、両性類の愛はフリーダムなんやで」
・・・・・・このカエル、今すぐ窓の外に捨てたい。
「とにかく、あなた。前世の記憶があるんじゃないの?」
「それはあるような、ないような」
よく覚えてないが、前世があったことは覚えてる。でも、どんな前世だったかはさっぱり思い出せん。なんか夢を見たけど、夢の内容は忘れたっていう感覚に近いな。
「神様に会って、特別な能力もらったりしなかった?」
「いや、そんな記憶はないぞ」
「うーん・・・・・・何らかの事故だか手違いだかがあって、忘れちゃってるってことなのかしら?せっかく能力があるはずなのに、使えないのはもったいないわね」
「そんなこといわれてもなあ」
そもそも記憶がないんだから、そんなこと言われたって困る。とりあえず、このアムネイアお嬢様には俺と違ってはっきりした前世の記憶と、神様にもらった能力ってのがあることは理解した。だからまあ、ちょっと変人になっちゃったんだろう。きっとそうだろう。
「ところで、『妄想創造』ってのはどういう能力なんだ?」
「それはね・・・・・・」
お嬢様の話では、なにやらマジックアイテムを作れる能力なんだそうだ。ただし、通常作れるものはこの世に普通にある(といってもだいたいはかなり高額なんだけど)魔法のアイテムだけ。つまり、火が出る杖とかそんな感じのやつだな。何年かに一度、本人の妄想力が極限まで高まったときだけ、理屈や常識を超えたとんでもないアイテムを生み出すことができる。ただし、なんでも作れるわけじゃなくて・・・・・・その時お嬢様が夢の中で見たアイテムだけ。で、使うことができるのもお嬢様自身か、他の転生者だけということらしい。とはいっても、街を出たことないお嬢様では、俺以外の転生者には会ったことがないらしいが。
「『賢者タイムの石』もそんな感じでだいぶ前に作ったやつなのよ。だから、作ろうと思ってもホイホイ量産することはできないの」
「どうせならもっと使いやすいモノを作れよ」
「作れるものは、私が夢で見たものだけだからね。自分じゃ決められないの」
「ちなみに、他に今まで作ったものは?」
そういうと、ケロッパが口を大きく開き、カーッペッと痰でも吐き出すような仕草をする。きたねえな、と避けようとするとテーブルの上に何か細長いものが2つ吐き出された。
「ケロッパの固有能力、『無限貯蔵』です。いくらでも物が入るので持ち運びに超便利」
「もっと上品に出すことはできないのか?」
「出し方がアレなので、食料などを入れる気にならないというのが難点です」
こころなしか、出てきたものもちょっとヌルヌルしてるしな。
「で、これは?」
「そっちの小刀が『ムラムラサメ』。名前の通り、普段は小刀だけど持ち主がムラムラすると大きくなるので持ち運びにとっても便利。ちなみに極限まで大きくなると魔法攻撃が一発放たれるけど、半日ぐらいクールタイムがあるから気をつけて」
「いくら持ち運びに便利でも、常時ムラムラしながら戦闘するとか不可能だろ」
「こっちの長槍は『ゲイ掘る具』ね。どこにいても狙った尻は必ず貫く追跡機能付き。射程距離は制限なしの無限大よ」
「能力はすごいような気はするけど、攻撃できるのは尻限定なのかよ!」
ろくでもないアイテムばっかりで、本当にがっくりだ。これが才能の無駄遣いってやつか。
「わー、さすが師匠!すごいアイテムばかりですね」
「そうでしょうそうでしょう」
「師匠、なんか畑仕事に役に立つようなアイテムくれませんか」
「じゃあ、このガチガチの土でも負けずに穴を掘れるスコップ『ガチムチ君』をプレゼントするわ。能力開放のコマンドワードは『俺は岩場だってかまわず掘っちまうんだぜ』よ」
「師匠、ありがとうーー」
おい、お前ら。あまりこいつを煽るな。ますます調子に乗るだろ。
「まあまあ、ちゃんとあなたにもプレゼントを用意してるわよ」
「『ムラムラサメ』も『ゲイ掘る具』もいらんぞ!」
「そう言うと思って、ちゃんと普通のアイテム。ホラ、『転移の腕輪』」
な・・・・・・『転移の腕輪』だと?
『転移の腕輪』ってのは、使うとあらかじめ登録した場所に瞬間移動できるマジックアイテムだ。1回こっきりの使い捨てで、運べる人数も制限があるが、盗賊なんかに襲われたときとか、いざって時に身を守れるすごいアイテムってことで、1つで軽く豪邸が建つぐらいの値段はするんだぞ。
「しかも、使い捨てじゃなくて何回も使えるようにしてある。その代わり、腕輪にはめ込んだ魔石と着用者の魔力をごっそり、その都度消費しちゃうけどね」
「繰り返し使える、だと。どんだけレアなアイテムなんだよ」
「ああ、転売とかはダメだから。世の中に他に存在しないから、ろくでもない人たちに目をつけられちゃうかも。こっそり使ってね」
「あ、ああ、分かった・・・・・・」
転売できないとしても、なかなか恐ろしげなアイテムだぞ、これは。
「魔石はともかく一度に魔力をごっそり使うと着用者が危ないから、普段から着用者の魔力の一部を健康に支障がない程度に吸い取って溜め込むように作ってある。吸収できる魔力の量は着用者が持ってる魔力の量によるから、魔力の多い人のほうがより早く必要量が溜まる。えーと、あなただと、そうね、あ、ケロッパ、魔力鑑定石ちょっと出して」
「あいよ げろりん」
お嬢さまに言われてちょっとヌルヌルしている鑑定石の上に、いやいや手を置く俺。ちなみにこの鑑定石も本来ならかなりの高額アイテムだ。なぜかこんな不当な扱いを受けているけれども。
「しょぼっっ」
「うるせー!」
俺だって自分に魔力がないことぐらい分かってる!
「うーん、このぐらいだと、半年に1回使えればいいほうじゃないの。誰か魔力の多い人に着用を頼みなさい」
「ゲル子も花子も魔法を使えないんだから、頼めるわけないだろ」
アマナならもっと早く充填されるかもしれないが・・・・・・いや、こんなレアアイテム、実家に持っていくのはいろいろ危ないな。
「登録の場所は3つまでだから。モチロンそのうち1つはうちの屋敷に固定してあるわよ。これで今後も気軽にウチまで遊びに来れるわね」
「その呪いみたいな固定仕様、外すことはできないのか」
「アムやんはこっち方面では天才やで。性格はちょっとアレやけどな」
「とにかく、なんだか暇になったらまたいらっしゃい。原稿書いてるとき以外は相手してあげるわよ」
「いや、できればごめんこうむりたい・・・・・・」
なんだかものすごいものをもらってしまったわけだが・・・・・・代わりにどっと疲れた。明日には街を出て、一旦家に帰ろう。そうしよう。




