第21話 花子のいる日常
こうして花子が押しかけ的に仲間になって早や数日。花子はいつもマイペースなゲル子と違って感情的でおしゃべりで、我が家はよくいえばにぎやかに、悪く言えば騒々しくなった。
植物に関する知識は本人が言うだけあってそれなりにあるようで、森に生えている山菜や食べられる木の実などがとれるようになってうちの食生活には彩りが出た。今まで俺が遺跡の宝箱で拾った薬草や乾燥ハーブらしきものもさっぱり用途が分からなくて適当にその辺に山積みしてたんだが、仕分けしてくれというと半日ほどかけてきっちり用途・種類別に分けてくれた。作業ぶりを見る限りでは意外とまじめで几帳面なところがあるようだ。仕分けしてもらったなかには用途に困るような薬草(食べると発熱するものや、惚れ薬の材料なんかもあった)もあったから、そうしたものをまとめて実家で引き取ってもらうとそこそこの金になった。
そうして少しまとまった金が入ったので、ご褒美も兼ねて花子に服を買ってやることにした。ゲル子と同じく裸でいることに別段恥じらいがあるわけではないようだが、夜の森は元いた遺跡よりも寒いのかたまにくしゃみをしていたから、俺なりの気遣いだ。
「大きすぎてぶかぶかね」
「仕方ないだろ、実家では俺の服を買ったことになってるんだから」
「あんまりかわいくないし」
そういいながら、余った袖や裾を引っ張りながらくるっとまわってみせる花子。初めて服を着るくせに、色々と文句が多い。身体の形状からしてズボンは履けないのでローブのようなだぼっとした服にしたんだが、肩幅が合わないので全体的にずり落ち気味で、それが不愉快らしい。直してやりたいところだが生憎裁縫は苦手だから、ひもで締める形で調整してやることにした。
「わたしはとってもとっても満足ですよ」
「アンタは身体のほうを合わせれば済むのかもしれないけど、こっちはそうはいかないのよ」
ゲル子のほうも人間形態では肩幅が余っているんだが、細かいことは気にならないのか縦横に伸び縮みしながらはしゃいでいる。
実のところ必要ないだろうと思ってゲル子の分は買ってきていなかったのだが、服に袖を通す花子の姿を見ながらきっと自分もプレゼントがもらえるものと期待に体を膨らませているゲル子の姿を見てしまうととても「おまえの分はない」などとは言えず……。結局ゲル子には俺の普段着を何枚か分けてやったんだが、古着でも一向に気を悪くする様子もなく、頬ずりするように布地に体をこすりつけながら何度も感謝の言葉を口にしていた。
「そのうち町に行ったら、もっといい服を買ってやるよ」
「本当?絶対だからね。うんとかわいいのにしてよね」
「金が貯まったらな。頑張って稼げよ」
そういうと、花子は「まっかせなさーい!」と小さいこぶしで胸を叩いた。いずれ俺の装備も買い換えたいとは思っているから、それと一緒にこいつらにも何か買ってやろうかな。




