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闇修験 石動玄斎の異世界紀行 〜こっちでは冒険者稼業で食っていく〜  作者: 黒木吼


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7話 イベェ―ルの冒険者 〜朽ちた盾〜

夕暮れが森を染め、薄暗い影が木々の間に伸びる頃。

ガルド率いる討伐隊は、ゴブリンの集落の近くに到着していた。


斥候が様子をうかがう。

作戦は、日没後に二手に分かれての奇襲攻撃と本隊突入だ。


先鋒の奇襲隊は、集落に接する断崖の上へと登る。

弓と魔法による攻撃でゴブリンを撹乱し、その隙に掃討隊が突入する段取りだ。


奇襲攻撃のメンバーは総勢七人。

その指揮はガルドのパーティーメンバーであるミリアが担う。


一応、リベェ―ル村が主導する作戦であるためだ。

その指揮下には、ゴールドランクの冒険者も含まれている。


ソニア。

エルフの魔術師で、主に火炎系の魔法を得意としていた。


ランクとしてはリサは格下であるが、ソニアは下手に口を挟まないようにしていた。


だが、状況は変わった。

断崖から見下ろした集落の光景に、奇襲隊の表情が変わる。


人影——いや、それも青年のような者が、集落の中に入り、ゴブリンに襲われそうになっていたのだ。


「人間……か?」


誰かが小さく呟く。


奇襲隊は揉めた。

作戦通りに動くべきか、それとも助けるべきか。意見は分かれる。


だが、時間は待ってくれない。


「計画通りに奇襲作戦は決行する。でも、魔法攻撃はしない」


ゴブリンの集落に迷い込んだのか、思惑があって入り込んだのか。

どちらにせよ、魔法攻撃は人を巻き込む恐れがあるため、まずは弓だけでの奇襲攻撃を行う。


ミリアはリーダーとしての判断を下した。


ソニアが口を開く。


「いいの? 本隊の冒険者に被害が出るかもしれないわよ?」


そんなことはリサもわかっている。

だが、ガルドなら守ることを選ぶ。

そして、本隊にいるガルドなら、なんとかしてくれるはずだ。


その考えを、ソニアは感じ取ったのか。


「リーダーはあなただもの。そう決定したならかまわないわ」


だが、異を唱える冒険者もいた。


「ミリアちゃんよ。本隊にはおれの仲間もいるんだ。そんな甘っちょろい考え、納得できねーな」


イルベールの冒険者の一人、ミリアとも馴染みのあるドノヴァンだった。


「ドノヴァン。申し訳ないけど、これは奇襲攻撃隊の最終決定よ。もう時間もないわ」


ドノヴァンはムスっと黙り込んだ。


月がのぼりはじめたとき、奇襲攻撃が幕を開ける。


矢が降り注いだ。

しかし、弓だけでは十分な効果は得られていないようだった。


ミリアは少し焦り始める。

ソニアは後ろの方で、そっと魔力を杖に込め始めた。

いつでもミリアの援護ができるように。


そのとき。


ドノヴァンは息を止め、そっと弓の狙いを絞った。

ゴブリンではなく、「人」の方へと。


今ならまだ本隊の突入に間に合う。

魔法攻撃の必要性は一目瞭然だ。


——恨むなよ。


引き絞られた弓は、必殺の威力を持って人へと解き放たれた。

「シュン!」


矢は——空を貫き地面に突き立った。


ドノヴァンは目を見張る。

確かに、必中の矢だったはずだ。


人が消えた。

まるで、最初から存在しなかったように。


ソニアも唖然としたが、気を取り直し魔法を放った。


轟炎。

ソニアの魔法が、ゴブリンの相当数を消し飛ばす。


そして森に伏せていた冒険者たちが集落へとなだれ込んだ。

混戦の中、ゴブリンたちは次々に倒れ、やがて集落は掃討された。

ーーー


戦闘後、冒険者たちは村の中心に集まり、奇襲隊を率いていたミリアに問いかける。


「なぜ、魔法が遅れた?」


ミリアは説明する。


「人がいたのよ。でも突然消えて……」


リサが言いかけたその瞬間。

空気が震えた。


「ドゴーーン」


集まった冒険者たちに雷撃の魔法が降り注ぎ、次々と倒れていく。


洞窟の奥から、ゴブリンキングと取り巻きたちーーゴブリン100匹以上が現れた。

機を伺っていたかのように。


邪悪な笑みを浮かべながら。


冒険者は雷撃により、ほぼ行動不能に陥っていた。

ゴールドランクの二人も例外ではない。


防御力を高める金属製の防具を着込んだ者たちほど、被害が大きい。

雷撃に金属は脆弱なのだ。


ガルドは鎧の中で、かなりの傷を負っているのだろう。

燻った煙が上がっている。


しかし、ただ一人、倒れ伏すことなく膝をついたのみで耐えていた。

墓標にたつ、朽ちた盾のように。


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