11話
男たちはうねうねと蛇行しながら続く洞窟の通路を、手のひらの灯りを頼りに駆けていた。
不意に背後で何かが地面に落ちる音がする。先を走っていた二人は振り返り、橙色の帯に巻かれて地面に倒れた仲間を見た。
視線の先、小走りで追い付いてきたフードの男の姿が映る。フードの中は暗く、うっすらと笑みを浮かべた口元くらいしか見えない。それが嫌に不気味だった。
「さっきのガキと一緒にいたやつか」
「初めましてかな。シェラトゥ教団の人でしょ?」
シエルは気さくに声をかける。
拘束されていない二人は目を見合わせ、シエルに向けてその腕を真っ直ぐに構えた。頷き合い、タイミングを合わせて攻撃しようと計るものの、それより前に頭上を何かが通り過ぎて行く。同時に、背後で何かが壁にぶつかる音が響く。
背後を振り返ると、洞窟の壁に突き刺さった杭――三本の杭を繋ぐように発光する壁が道を塞いでいた。退路を断たれた二人はゆっくりとシエルを振り返り、忌々しげに睨みつける。
「お前……シルヴァ・エルネスだな」
「さぁ、誰それ」
懐から取り出したワイヤーを振り回しながらシエルはとぼけてみせた。
その様子を見て、男の一人が鼻で笑う。シエルはフードの中で眉をひそめる。
「知っているぞ。お前は禁書を強奪しようとして、たかが学生に負けて捕まったそうじゃないか。俺たち二人を相手にして、お前に勝ち目なんかないだろ」
それを聞いて、もう一人も笑う。気が抜けた様子で改めて〈盾〉を構える二人を見て、シエルは大げさに肩を落として溜息をついてみせた。
確かに学生に負けたのは事実だけどね。
ワイヤーが空を裂く音が響く。同時に男のうち一方の〈盾〉が両断され、真っ直ぐ伸ばしていた腕は肘を失っていた。
何が起きたのか理解できない男の呆けた顔が、次の瞬間には痛みと恐怖で醜く歪む。絶叫が響く洞窟の中、残った男は腕を振るい、手のひらに生み出した炎を解き放つ。赤い波が岩肌を舐めるようにシエルへと迫り、地面と天井を繋いだ石柱に阻まれ左右に割れた。
驚愕に目を見開き、それでも次を準備する男の伸ばした腕、その手の甲から赤く染まった杭が生え、二つ目の絶叫が響き渡る。男が睨みつけた先、シエルは石柱に背を預け、のんびりとした動作でワイヤーを引いた。呻き声と共に引きずられた男が地面に倒れる。
「君たちには聞きたいことがあるんだ。神の使徒として口が堅いのは美徳だけど、三つもいらないから早めに話すことを勧めるよ」
赤く染まった杭を引きぬき、拘束されて動けない男の目の前に垂らして見せる。
恐怖に顔を歪ませる者、必死に失った腕を押さえる者、膝をついた体勢のままエルネスを睨みつける者、三人の男のそれぞれの反応を観察しながら、シエルは一番会話が成立しそうな自分を睨みつける男へと歩み寄る。
「こ、こんなことをしていいと思ってるのか。教団はお前を」
「僕を?」
お前を……その先が続かない。
なぜなら、この男にこれ以上失うものなどないのだから。




