9
「この生徒は、授業中に私の話を聞いておらず、私が青い炎を作るように指示したのに、青い不死鳥を作ったのです。そして、他の生徒のことを危険に晒していると私が注意したら、自分はただ単に青い炎を作っただけだと楯突いたのです。生徒の身を危険に晒したのに、何の罰も与えないのは、おかしいと私は考えます」
うまく言うわね。流石は魔法学園の教授になった人。でも、この人は見落としている。私が、不死鳥の現物を見せられることを。
「お言葉ですが、デリュー教授。私は、生徒たちの身を危険に晒してなどおりません。その証拠を、学長にお見せいたします」
私はそう言って指をパチンッと鳴らしながら「マタスターゼ」と呪文を小声で言い、さっき作った不死鳥を思い浮かべる。
つい昨日習得したレベル13の魔法、思い浮かべたものを思い浮かべた場所に移動させられる魔法。相手が魔力で抵抗して、私が抑えられる範囲までだけど。1秒も経たないうちに、私の横にさっきの青い不死鳥が現れた。
青い不死鳥って名前も可哀想だから、名前を付けてあげようかしら。そうね、シオンにしましょ。凛々しさと可愛らしさを兼ね備えているわ。私はシオンの顎の辺りを指で撫でた。自分でつくった炎だから、熱さを感じないのかしら。
「この不死鳥から、生徒たちを危険に晒す魔力は感じられますか、学長?かなりの魔力があるあなたになら分かるでしょう、そこのデリュー教授と違って」
デリュー教授、私が感じ取った魔力はせいぜいレベル30までいけるかどうかくらい。確かに私はまだレベル30まで達していないけど、絶対にレベル90は越えられるのよね。私の勘がそう言っている。
考えてみると、ゲームのルディシアは才能を無駄にしていたのよね。折角こんな才能を持っているのに、勿体ないわ。確か、レベル3までしか達していなかったわよね。ヤバいわ、それは。私が呑気にそんなことを考えていると、ヴィクト様が私の方に歩いてきた。
「その不死鳥を俺の腕に乗せろ。自分ではっきり確かめたい」
ヴィクト様のそういうところ、好感が持てるわ。やっぱり百聞は一見にしかず。自分で確かめてみないと。
「分かりました」
私はそう答えてヴィクト様の腕に自分の腕を近づける。腕と腕が微かに触れ合う。シオンがヴィクト様の腕に乗り移ると、私はすぐに腕を引いた。デリュー教授が見てるもの。変な噂が立ったら困るわ。まあ、今の私は男っていう設定だけれど。
「よく出来ているな。お前の魔力を分けたんだな?」
ヴィクト様の質問に、私は頷いた。ただの炎の鳥なら自分の魔力なんて与えなくてもいいけど、シオンには水への耐久性と命を吹き込んでいるもの。
今日出せる魔力の限界値の3分の1くらい使ったわ。普通の授業の課題に使うには勿体ない量だけど、シオンは永遠に存在するもの、ごくたまに魔力の補給が必要だろうけど、安いものだわ。
あ、ヴィクト様が答えを求めてこっちを見てる。人の言葉を無視する礼儀知らずの悪女になんてなりたくないわ。
「はい。だから僕は熱く感じませんね」
私が余裕の笑みを見せると、ヴィクト様の唇の端が上がった。
「そうか。この不死鳥は火を吹いたりすることはないのか?」
「僕が指示しなければ、自主的には致しませんね」
私が答えると、ヴィクト様は分かった、と小さく呟いた。
「デリュー教授、そういうことだ。危険には及ばない。報告に感謝する」




