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ボッチの俺が異世界で魔法使いになってボッチを脱却するまでの話。  作者: 神代家家長


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第4話 【ボッチは冒険者の志す】

 

 雷属性を習得するのに偉く時間が掛かった。


 まず練習の為に雨雲を作り出そうとして火属性と水属性の合成を試して成功するまで3ヵ月掛かり、そこから雷雲を作り出すまで6ヵ月も掛かった。


 お陰で俺は魔法学校の3年生に進級を果たしてしまい、残りは時間は2年を切ってしまった。


 現在の俺のステータスは……。



 ・アトゥム

 土属性 レベル7

 水属性 レベル7

 木属性 レベル7

 風属性 レベル6

 氷属性 レベル5

 火属性 レベル4

 雷属性 レベル1



 こんな感じである。


「流石に手を広げ過ぎた」


 なんと俺は7属性持ちである。


 しかも、これから雷属性のレベルを上げる作業が待っている。


(でも流石に、ここらで打ち止めかなぁ)


 もう、これ以上の合成は思いつかないし、これ以上増やすのは本格的に成長限界とやらに影響しそうだし、この7つを重点的に上げていくことにしよう。




 ◇◇◇




 俺は自宅から――というよりも住んでいる村の近くにある林にやって来て、1本の木を前に集中していた。


 そして右手の一指し指を立てると……。


「ライ●ィ~ン!」


 某国民的RPGの雷撃呪文を唱えて木に雷を落とした。


「よし!」


 流石に名前は冗談だが、その効果は本物だ。


 まだ雷属性のレベルは3だが、狙い通りの雷を落とせるようになった。


「くくく。いずれはギガとかミナも使えるようになってやるぜ」


 流石に超広範囲の雷撃攻撃は近所では試せないけど、レベルが上がればいずれ出来るようになるだろう。


「ふふふ。これぞ、まさに勇者の魔法」


 1人で悦に入って、暫くは余韻を楽しんだ。






 そうして俺が十分に満足して家に帰りつくと……。


「こうかしら?」


「ほわっつ?」


 何故か母が掌から雷撃を出していた。


「か、母さん? それは一体……」


「アトゥムちゃんがやっているのを見て、真似してみたのよ」


「おうふ」


 俺があんなにも苦労した雷属性を、こんなにもあっさりと。


「ひょ、ひょっとしてお母様は他にも使えたりするのでしょうか?」


「これのこと?」


 そう言って母は木を生やしたり氷を生み出したりして見せる。


「orz」


 木属性と氷属性まで。


 俺の今までの苦労は一体何だったのだろう?


「属性を合成させるなんて面白いわねぇ。久しぶりにお母さんも魔法を楽しめたわ」


「そっすね~」


 この瞬間、俺のアドバンテージはゼロになったのだった。


 酷いよ、母さん。




 ◇◇◇




 なんか一気にやる気を失ってしまった。


 まぁ、それでも惰性で属性のレベル上げはするんだけどね。


(ウチの母が天才過ぎるんだよなぁ)


 既に現役は引退して専業主婦の筈なのに、魔法の腕は全く衰えていない。


 属性を合成させるというのは俺の――というか前世の記憶から着想を得て実現させたアイディアなのに、それを出来ると分かったら即座に再現して見せるところが天才過ぎる。


(というか母さんって俺が思っている以上に俺のことをよく見ていたんだなぁ)


 そうでなければ属性の合成になんて辿り着けるわけがない。


 そんなことをボンヤリと考えながら俺は属性の魔力の塊を掌の上で高速で回転させていた。


(というか母さんって普通の元冒険者で普通の元魔法使いだと思っていたけど……絶対に普通じゃないよ、あの人)


 きっと俺が知らないだけで現役時代も色々とやらかしているよ。






 母のことで色々と悩みはしたものの、母がそんなに凄い人だと分かったので――ちょっと相談してみることにした。


「母さん俺、15歳になって魔法学校を卒業したら冒険者になろうと思ってるんだけど」


「……本気?」


 何故か母には冒険者になると言ったら正気を疑われた。


「駄目なの?」


「だって冒険者って基本的にパーティを組んで活動するのよ? アトゥムちゃんってパーティを組めるような……知り合いっているの?」


「…………」


 ここで友達とは言わずに知り合いと濁してくれたのは母の優しさなのだろう。


「1人じゃ駄目?」


「駄目じゃないけど、1人で出来る仕事なんてたかが知れているわよ」


「むぅ」


 これは困った。


 まさか俺がボッチであることが障害になるとは。


「一応ソロでも活動出来ないことはないけど、それには最低限にでも自衛出来る能力が必須よ」


「自衛……」


 確かに正面から敵が来るだけなら魔法で何とかなりそうだが、不意を打たれたら一巻の終わりだ。


 俺が自衛手段を手に入れる為には……。


「…………」


 チラリとリビングの方に視線を向けると――俺達に会話に聞き耳を立てていた父と視線が合った。


「任せろ! お父さん、張り切っちゃうぞ~」


「……お願いします」


 俺は13歳にして初めて父に師事し、自衛能力を身に着けることにした。




 ◇◇◇




 何をするにしても最低限の体力がなければ話にならないということで、魔法学校が休みの今日は父と一緒に村の外周を走ることになった。


「ぜぃ……。 ぜぃ……。 ぜぃ……」


「どうした! どうした! もっとペースを上げて走れぇっ!」


 勿論、貧弱で運動不足の魔法使いである俺に体力なんてあるわけもなく、ヒィヒィ言いながら走る羽目になった。


 一応、火属性の中には身体能力を向上させる魔法なんてものもあるのだが、それは身体のエネルギーを燃焼させることで身体能力の限界を引き出す系の魔法なので、使うと大幅に体力を消耗するのだ。


 つまりランニングには全く役に立たないどころか逆効果だ。


 結果、俺は疲れ果ててぶっ倒れるまで父によって走らされることになったのだった。






 気付いたら俺は家のベッドに寝かされており、母に回復魔法を掛けてもらっている最中だった。


「母さん、父さんが想像以上にスパルタでした」


「まぁ、お父さんもアトゥムちゃんに頼られて張り切っていたからね。今まではお母さんに師事してずっと魔法のことばかりだったから嬉しかったみたい」


「……もうちょっと手加減して欲しかった」


「そうねぇ~。流石に倒れるまで走らせるのは少しやり過ぎかしら」


 流石の母も倒れるまで走らせるのはやり過ぎだと思ったのか、部屋の片隅では母に説教済みと思われる父がションボリと正座していた。


「あなた。自警団の子達とは違ってアトゥムちゃんは貧弱なんだから、もうちょっと手加減して上げて頂戴」


「……あい」


「…………」


 そりゃ自発的に自警団で訓練しているような奴と比べられても困るけど、そうハッキリと貧弱と言われると傷つく。


(これからはランニングを日課にしよう)


 貧弱という不名誉は早々に返上しなくては。




 ◇◇◇




 魔法学校に通いながらのランニングは想像以上にきつかった。


 魔法学校から帰って来てからのランニングは気力が持たないので早朝にランニングをしているのだが、早起きはつらい。


 というか……。


「よぉ~し! アトゥム、今日も父さんと一緒に走るぞ!」


「……うん」


 誘っていないのに毎回のように同行してくる父にペースを乱されて辛い。


 本当に誘ってないし、当初は1人で早起きして走る予定だったのに――当然のように母は早起きて見送って来たし、父は同行するべく準備万端だった。


 どうして、この夫婦は当然のように俺の行動を先読みしてくるのだろう?


 やっぱり、そんなに分かりやすいのだろうか?






 そうして朝のランニングの後は馬車に乗って魔法学校へ向かう。


 勿論、暇があれば属性のレベル上げに邁進だ。


(そういや、母さんには冒険者になると言ってしまったが、冒険者ってどんな仕事なんだろ?)


 つい宣言してしまったが、俺は冒険者がどんな職業なのかすら知らないのだ。


(今度、母さん……と父さんに聞いてみるか)


 今後は母だけでなく父にも頼ることにしよう。






 魔法学校で授業を受けながら俺は考える。


(決定的な話だが、俺はあくまで後衛の魔法使いであって、前衛の戦士じゃない)


 父の訓練を見学した結果だが、戦士というのは気配を感じ取ったり、直感で危険を避けたりすることが出来る。


 無論、俺にはそんなことは出来ない。


 つまり俺がソロで冒険者をする場合、不意打ちには滅法弱いということだ。


 特に背後から奇襲を受ける場合は無防備なので危険だと言える。


(うぅ~む)


 俺は魔力の塊でソフトボール大の球体を作って手元に浮かべる。


 そして球体を細工して眼球の形を象る。


(これで見えたりしないかな?)


 魔力というのは俺の身体から出ていて、この球体は俺の身体と繋がっている。


 それなら視覚をリンク出来ても不思議ではないのだが……。


(うぅ~むむむ)


 そんなに簡単に出来るのなら誰も苦労なんてしないのだ。






 帰宅後、母に相談してみた。


「ははぁ~。これを目の代わりにして背後からの奇襲を防ごうって考えなのね」


「……そうです」


 1から10まで説明しなくても理解してくれる天才の母が頼もしい。


「そうねぇ。出来ないことはないと思うけど、自分の目と疑似的な目を同調させるには、きっかけが必要だと思うわよ」


「きっかけ?」


「分かりやすいのは……痛みね」


 母が言うには眼球に針で穴を空ける痛みを意識出来れば――疑似的な目を俺の眼球としてリンク出来るかもしれない、ということだった。


「怖いよ」


「まぁ、やってみましょう。大丈夫よ、お母さんがちゃんと治してあげるから」


「ちょっ……! 待っ……! ぎゃぁぁぁぁっ!」


 俺は身体をガッチリと押さえつけられて、針で眼球を刺されるという恐怖体験に悲鳴を上げる羽目になった。


 結果として俺は疑似眼球とリンクして見ることが出来るようになったが――2度と体験したくないですわ。




 ◇◇◇




 俺の背後に浮かべた疑似眼球によって視覚が確保されて、俺には背後の死角がなくなった。


 だが根本的な話をすると人間というのは2つの眼球で視界のバランスを取っているわけで、それが3つになったら当然のように脳が混乱する。


 疑似眼球が見えるようになった俺は直ぐに脳が混乱して平衡感覚を失い――パタリと倒れた。


「気持ち悪ぃ~」


 俺は目を瞑って疑似眼球の視覚に集中する。


 これは――暫くは慣れるのに時間が掛かりそうだった。






「これも面白いわねぇ」


「…………」


 例によって例の如く、母は俺の疑似眼球をあっさりと再現して肩に浮かべて楽しんでいる。


 俺は針で眼球を刺されるという恐怖体験をしたのに、母は成功させた俺を観察しただけであっさりと出来るようになってしまった。


「ずるいよ、母さん」


「うふふ」


 俺が責めても母は笑うだけで全く堪えていない。


 この人、完全に俺の上位互換なんだよなぁ。


「お詫びという訳じゃないけど、アトゥムちゃんに良いことを教えてあげるわ」


「良いこと?」


「ええ。お母さんは生まれつき光属性だったんだけど、付随して他の4属性が付いてくることが昔から疑問だったのよ」


「……そうだね」


「だから4属性の全部を合成してみたの」


「…………は?」


 なんかサラッと凄いこと言っているんですけど?


「そうしたら、なんと光属性になったのよ。凄いでしょ?」


「そ、そう……ですね」


 凄いのは簡単に4属性を合成してみせた母なのでは?


 いや、適性のなかった光属性を得られる可能性を見出したことも十分凄いんだけど。


「これでアトゥムちゃんも光属性を習得出来るわね♪」


「……難易度ウルトラマックスなんですけど?」


 3属性を合成する雷属性でも相当苦労したというのに、4属性の合成とか想像も出来ないレベルなんですけど?


「頑張って♪」


「あ、はい」


 光属性は欲しいので頑張りますけどね。






 これ以上、属性を増やすつもりはなかったのだけど、それが光属性とあっては話は別だ。


 貴重な回復魔法を使える属性だし、それを持っているだけでも安全度は段違いとなる。


(それに世間からの評価も上がるだろうし)


 今までは土属性の平凡な子供程度の評価だったが、俺が光属性を習得出来れば母の息子として遜色ないと言われるかもしれない。


(あの超絶天才の母と比べられても困るけどな)


 そもそもボッチの俺が世間の評価とか気にするわけもないし。


 ともあれ、4属性の合成に挑戦した俺なのだが……。


「難しいよぉ、母さん」


 そのあまりの難易度に思わず母に愚痴を吐いてしまった。


「どれどれ。お母さんが見てあげるわよ♪」


「…………」


 どうして楽しそうなのだろう?


 ひょっとして息子の指導が出来て楽しいのだろうか。


「さぁさぁ。始めるわよ♪」


「……はい」


 母の指導は想像通りにスパルタだったと明記しておく。




 ◇◇◇




 俺が光属性を習得するまでに1年近い時間が掛かった。


 朝は父と一緒にランニングで、夜は母と一緒に授業。


 そういうサイクルを1年も続けた結果として俺は光属性を習得することに成功した訳だが……。


「つか……れた」


 疲れ切ってグッタリと机の上に突っ伏した俺がいた。


「さぁさぁ。大事なのはここからよ、アトゥムちゃん」


「ほぇ?」


「回復魔法を使えるようにならないと意味がないでしょう?」


「……そっすねぇ~」


 そうだね。光属性を習得しただけでは片手落ちで、回復魔法を会得して初めて成果と言えるのである。


 母のスパルタ授業はまだ続くようだ。




 ◇◇◇




 母に影響を受けたのか、何故か父まで俺にスパルタ指導をするようになってしまい、気が付けば俺は回復魔法を使えるようになるのと同時に、前衛というほどではないがそれなりの体力が付いていた。


 こう言っちゃなんだが、ハッキリ言って父の指導はいらなかった。


 疑似眼球で死角はカバー出来るようになっていたし、俺はソロでも冒険者とやっていく準備は出来ていたのだ。






 そうして両親の指導を受けていた俺は、気付けば魔法学校の卒業が目の前に迫って来ていた。





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