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ボッチの俺が異世界で魔法使いになってボッチを脱却するまでの話。  作者: 神代家家長


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第3話 【ボッチはレベル上げに邁進する】

 

 俺は改めて真面目に土属性と水属性のレベルを上げることにした。


 とは言っても、あくまでも目的は木属性のレベル上げである。


 実際、俺の水属性のレベルが2になった時点で木属性のレベル上げにシフトしてしまったし、木属性がレベル2になったら再び水属性のレベル上げに戻った。


 そうして土属性がレベル3、水属性がレベル3になり、木属性もレベルが3になると、いよいよ本格的に土属性と水属性のレベル上げである。


 その頃になると俺は右手には土属性の魔力の塊を複数作り出し、左手にも水属性の魔力の塊を複数作り出し、それを掌でクルクルと回す遊びをするようになった。


 なんとなく、こうするとレベルが早く上がる気がする。


「アトゥムちゃん、凄い魔力制御ね。身体の魔力も安定して来たんじゃない?」


「そう?」


 母には魔力制御の精度は褒められたが、正直どうでも良かった。


 俺は今、木属性のレベル上げが楽しくて仕方なかったのだ。






 レベル3になった木属性の魔力で何が出来るのかというと、敵の足元から木の根を生やせて拘束することが出来るようになった。


 無論、唯の木の根なので刃物を使われれば簡単に切断されてしまうが、それでも土属性のレベル3よりは効果的だ。


「ふぅ。最近、暑くなって来たわね」


 そんなことを考えていたら母が最近の暑さに嘆いていた。


 季節は夏だ。


「暑い、か」


 ちょっと思いつくことがあった。




 ◇◇◇




 翌日から俺は風属性の練習を開始した。


 風属性は水属性よりも俺と相性が悪いが、出来ない訳ではない、と思う。


 魔法学校の教室で風属性の練習をしていると……。


「皆さん、注目してください。今日は大事な話があります」


 先生が教壇に立って生徒の注目を集めていた。


「私は今まで皆さんに一極集中して属性を練習するように言ってきましたね」


 確かに先生は一極集中を推奨しており、複数の属性を育てることには否定的だった。


「それには理由があり、人間には成長限界というものが定められているからです」


(成長限界?)


「一極集中すれば1つの属性を限界まで極めることが出来ると言われています。けれど2つの属性を極めようと思ったら半分くらいまでしか極めることが出来ないのです」


「…………」


 それは単純に時間が足りなかっただけでは?


「よって複数の属性に手を伸ばすことは才能の無駄遣いになると言われています。皆さんもなるべくなら一極集中で属性を極めるようにしてくださいね」


「…………」


 なんとなく先生の視線が俺に向いている気がする。


 いや、今も風属性の練習をしてレベルを上げようとしてますけどね?


 でも次は水と風を合成して氷属性にして母に冷たい飲み物をプレゼントしたいのだよ。


 その為に俺は今、風属性のレベルを上げることに集中しているのだ。


(先生には悪いけど、こんなの楽しくて止められませんわ)


 本当に成長限界とやらがあるのだとしても、今世の俺は挑戦することを諦めたりはしないのである。




 ◇◇◇




 やはり俺にとって風属性は苦手だったようで、レベル1になるまで1週間も掛かってしまった。


 とはいえ、次はお楽しみの水と風の合成のお時間だ。


「うぅ~ん」


 土と水の合成は成功させたわけだから、そんなに手間取らないかと思っていたが、これは以前とは全く違う。


 新しく覚えた風属性はやはり俺とは相性が悪かったのか、そっちに引っ張られて合成の難易度が上がっている気がするのだ。


 1度成功したからと言っても2度目も上手くいくと思うのは虫が良すぎたようだ。


(これは……時間が掛かりそうだな)


 本格的に暑くなる前に完成させたかったが、これでは難しそうだ。




 ◇◇◇




 気付いた時には既に暑い季節は過ぎ去り俺は2年生に進級を果たしていた。


 ちなみに氷属性はまた完成していない。


 風属性は既にレベル3になっているのだが、肝心の合成が上手く言っていない。


(なにが駄目なんだろうな。イメージが足りないのか?)


 氷くらいはイメージ出来ているつもりだが、もっと細かくイメージする必要があるのだろうか?


(氷の結晶までイメージする必要があるとか?)


 確か氷の結晶というのは六角形の花みたいなものだったと思うが、それをイメージして右手に水属性の魔力、左手の風属性も魔力を生み出し、それを合成する。


「あ」


 なんか上手くいったっぽい。


 やはり具体的なイメージが不足していたということなのだろうか?


 木属性の時はもっと適当だったんだけど。


 ともあれ、自己投影魔法を確認してみる。



・アトゥム

 土属性 レベル5

 水属性 レベル5

 木属性 レベル5

 風属性 レベル3

 氷属性 レベル0



「よしよし」


 狙い通りに氷属性が現れたのでほくそ笑む。




 ◇◇◇




 やはり氷属性は俺と相性が良くなかったのでレベル1にするまでに10日も掛かってしまった。


 だが、これで念願の氷が作れるようになった。


 次に暑くなる季節が来たら母に氷を作ってあげよう。


 まぁ、大分先の話になるので、それまでになるべく氷属性のレベルも上げておきたいところだ。






 ところで俺は2年生に進級した訳だが、クラスは同じくDクラスだったので担任は一緒だ。


 クラスの面子はいくらか変わっていたが――友達の1人も居ない俺には関係なかった。


 まぁ、要するに進級してクラス替えが行われようと真のボッチである俺には関係ないということだ。


 そんなことより今は属性のレベル上げの方が重要だ。






 俺が現在扱える属性は土属性、水属性、木属性、風属性、氷属性の5つ。


(流石に手を広げ過ぎたかなぁ)


 先生が言っていた成長限界の話もあるし、あまり平らに成長させるのはよくない気がする。


 このまま上位属性が1つもないまま成長限界が訪れたらと思うと怖くなるが……。


(ん? 木属性とか氷属性にも上位属性ってあるのかな?)


 合成した属性にも上位属性があるのか考えて――頭が痛くなって来た。


(止めとこ、これ以上考えると本気で頭痛が起きそうだ)


 俺は深く考えることを止めた。




 ◇◇◇




 俺はレベルの低い氷属性を中心に他の属性のレベルを上げるべく地道なレベル上げを行っていた。


 基本的には属性の魔力の塊を作って掌の上を回転させることにしているが、最近は属性の塊で綺麗な球体が作れるようになって来た。


 ちょっとだけ母に追いつけた気がして気分がいい。


 無論、魔法の実力的にはまだまだ追いつけていない筈なので、これからも精進する次第だ。


(どうすっかなぁ~)


 そんな俺が今考えていることは、最後の火属性を習得するかどうか。


 ハッキリ言って俺と火属性の相性は最悪と言っても良い訳で、その火属性を習得する為には苦労することは目に見えている。


 そもそも今のところ火属性と合成したいと思える属性なんてない訳で、今から火属性を習得することは将来の為に念の為でしかない。






 そんなことを考えながら俺が魔法学校へ行く準備をしていたら……。


「あ、アトゥムちゃん。今日は魔法学校はお休みにしなさいね」


「へ?」


 母に今日は学校を休みにするように言われた。


「なんで?」


「この風の音、聞こえない? 嵐が来ているのよ」


「あ」


 そう言えば属性のレベル上げをしていたので、そっちにばかり集中していたが、確かに外からは五月蠅いくらいの風の音が聞こえて来る。


「学校を休まないといけないレベルの嵐なの?」


「というより、真面に馬車が走れなくなるくらいの嵐よ」


「マジかぁ~」


 窓の外を見ると確かに強風が吹き荒れており、今日馬車に乗るのは危険な気がする。


 そうして窓の外を眺めていたら唐突に視界が白く染まって……。




 ドォォ―――ン!




「うぉっ!」


 唐突な閃光と轟音に驚く。


「雷も鳴っているわね」


「ビックリしたぁ~」


「うふふ。大丈夫よ、アトゥムちゃん。この家には結界が張ってあるから雷くらいでは破られないわ」


「結界……」


 要するにバリアみたいなものが張られているということなのだろうけど……。


「母さん、凄くない?」


「ふふん。このくらいは朝飯前よぉ~」


「…………」


 母のレベルが高過ぎて全く追いつける気がしないんですけど。


(それにしても……雷か)


 雷属性って、どうやったら出来るかな?


 雷を発生させる為には雷雲が必要で、雷雲を発生させる為には……。


(水を火で蒸発させて雲を作り、更に風で気圧を操作して……やっぱり火属性が必要になるな)


 苦手な火属性の習得が必要になりそうで、俺は深く嘆息するのだった。




 ◇◇◇




 苦手とはいえ火な日常的に身近にあるものなのでイメージするのは難しくなかったのだが、それを属性として習得するには途轍もない苦労が必要だった。


 具体的に言えばレベル1にするのに1ヵ月以上もの時間が必要だった。


「……やっと出来た」


 俺の両手の間には小さなマッチ程の火が灯っており、俺の1ヵ月の苦労が報われた瞬間だった。


(……疲れた)


 今回は本当に疲れた。


 元々苦手で相性の悪かった火属性を習得するのは並大抵のことではなく、この1ヶ月は苦労と苦悩の連続だった。


 もう何度諦めようと思ったか分からない。


 その苦難を乗り越えて、やっと火属性がレベル1になったのである。


(火属性なんて大嫌いだ)


 今回のことで俺は本格的に火属性が嫌いになった。


 これから苦手な火属性を使って雷属性に挑戦しなくてはならないかと思うと気が遠くなる。


 そんな憂鬱な気分で授業を受けていたら……。


「そう言えば、皆さんの属性レベルは今どのくらいでしょうか?」


 先生が不意に質問して来た。


 生徒達は次々に自分の属性レベルを答えていくが、そのレベルを聞いて俺は《おや?》と思う。


 生徒達の属性レベルは平均すると6~7くらいだったからだ。


 大幅に寄り道している俺と大差がないことが意外だった。


 早い奴ならもう上位属性になっている者がいても不思議ではないと思っていたのだ。


 だが現状、高い者でもレベル8であり、まだまだ上位属性にはなれそうもない。


「良い調子ですね。このままいけば卒業までには皆さんも上位属性になっているかもしれません」


(卒業って、まだ3年以上も先じゃねぇか)


 それなのにレベルを後3つか4つ上げるのに、それだけの時間が掛かると言っているのだ。


(なんか俺の認識がズレているのかね?)


 なんでクラスの奴らは一極集中で属性レベルを上げているのに、そんなに苦労しているのだろうか?


「ここで先生からアドバイスです。魔力の感覚は1人1人違うのでコツのようなものを教えてあげることは出来ませんが、長年の研究から魔力の制御力を上げるとレベルが上がりやすくなるという統計が出ています。レベルが上がりにくくなったと感じる人は魔力の制御力を上げてみると良いかもしれません」


(あ~。そいうことか)


 元々異なる属性同士を合成するには驚異的な制御力が必要だった。


 だから俺の魔力制御力は格段に向上している――気がする。


 だからクラスの奴らのように属性のレベルを上げることに苦戦する気持ちを共感出来なかったのだろう。


 俺の属性レベルが低いのは寄り道ばかりしているからであって、まだレベルが上がりにくいと感じるほどではなかったのだ。


(はぁ。練習しよ)


 俺は早速、火属性の魔力の塊を作って掌の上で回転させるのだった。




 ◇◇◇




 火属性と水属性を合成して、その上で風属性の調整を行う。


 口で言うのは簡単だが、それは並大抵のことではなかった。


(駄目だ。上手くいく気がしない)


 そもそも3属性を合成するという試み自体が初めてのことなのに、そこに苦手な火属性を含まれているのだから難易度はベリーベリーハードだ。


 普通に考えて成功するわけがない。


(しかし俺は諦めない)


 何故なら雷属性って勇者っぽくて格好良いから。


 出来たら母にも自慢出来そうだ。


(ムフフ。雷撃とか披露したら驚かせられるかも)


 母の驚く顔が今から楽しみだ。


 そんな妄想をしながら俺は雷属性の習得に挑むのだった。






 当たり前だが上手くいかない。


 雷雲どころか雨雲さえも作り出せない。


 というか火属性と水属性の合成すら上手くいかない。


 やはり俺は致命的に火属性が苦手なのだ。


「母さん。母さんって火属性を扱える?」


「扱えるわよぉ」


 そう言って母は右手の一指し指を立てると、その先端に小さな火を灯して見せる。


 見事な制御力と言わざるを得ない。


「アトゥムちゃんは火属性が苦手みたいねぇ」


「……仰る通りで」


 母から見ても俺は火属性が苦手に見えるらしい。


「相性の悪い属性を扱うのは難しいからねぇ。使い続けて慣れていくしかないわねぇ」


「やっぱ、そうだよねぇ」


 やはり、どう転んでも近道はないらしい。


「お母さんを驚かせるのは、まだまだ先になりそうねぇ」


「……ナンノコトヤラ」


 密かに母を驚かせようという計画が何故かバレている。


 母親ってのは、どうしてこんなに鋭いのだろう?


 それとも11歳の子供なんて、母親から見ればすべて丸分かりなのだろうか?


(そんなに分かりやすいかなぁ?)


 顔をムニムニと弄ってみるが、自分ではよく分からない。




 ◇◇◇




 ボッチになって困るのは移動教室などを生徒間の伝達を終わらせてしまう場合だ。


 教えてくれる友達がいないので、気付けばポツンと教室に取り残されてしまう。


「アトゥム君。次の授業は校庭で模擬戦だよ」


「お、おう。そうだったのか」


 親切なクラスメイトが教えてくれる時は良いのだが、そうでないと教室で1人で待ちぼうけする羽目になる。


 実際、俺は今までに何度か待ちぼうけしたことがある。


 今日は親切な女生徒が声を掛けてくれたので、俺は女生徒の後を付いて歩きながら今日の授業に付いて考えを巡らせる。


 魔法学校の授業の中には実戦を想定した模擬戦を行う実技がある。


 具体的には魔法で戦う模擬戦だが、教師がペアを作らせて好きに模擬戦をさせるという方式の為――ボッチの俺は常に見学組だった。


 まぁ、他人の模擬戦を見るのも勉強になるから構わないのだが。


「アトゥム君」


「ん?」


 俺の前を歩いていた女生徒が立ち止まって声を掛けて来る。


「私の名前、分かる?」


「分かるわけないだろ」


 女生徒に限らず、俺はクラスメイトの名前なんて1人も知らないのだから。


 ぶっちゃけ、担任の名前でさえうろ覚えだ。


「そっか。そうだよね」


 女生徒は納得したように頷いて――そのまま名乗りもせずに前向いて歩いて行った。


 なんとなく大きなチャンスを逃した気がする。




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