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ボッチの俺が異世界で魔法使いになってボッチを脱却するまでの話。  作者: 神代家家長


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第2話 【魔法学校でボッチを極める】

 

 ついに俺も10歳になって魔法学校に通うことになった。


 今は入学初日ということで早起きして定期馬車の到着を待っているところだ。


「頑張ってね、アトゥムちゃん」


 母は俺の為に態々早起きして見送りに来てくれた。


「うん。この割符を見せれば馬車に乗れるんだよね?」


「そうよ。大事な物だから失くさないようにね」


「うん」


 言ってみれば定期券のようなものなので値段も高かった筈だし、確かに失くしたら大変だ。


 そうしている内に馬車が来たので俺は割符を見せながら乗り込んだ。


「行ってきます、母さん」


「いってらっしゃい」


 こうして俺は母に見送られて魔法学校に出発したのだった。






 予定通り30分ほどで隣街に辿り着き、俺は魔法学校に到着した。


「ふむ」


 勿論、これからどうすれば良いのかなんて分からなかったのだが魔法学校の校門には大きな掲示板が張り出されており、そこにクラス分けと各自の名前が書かれていた。


 その中から俺は自分の名前を探し出す。


(俺は……Dクラスか)


 早速、俺は魔法学校の中に入ってDクラスを目指す。


 少し手間取ったが俺は問題なくDクラスに到着してガラガラの教室に入る。


(特に席は決まっていないみたいだな)


 今なら空いている席なら自由に座っても良いということだ。


 というわけで俺はボッチ御用達の窓際の1番後ろの席を確保した。


 ボッチといったらここだろう。


 そうしてボッチらしく俺は続々と教室に人が集まって来るのを尻目に――机に突っ伏して寝たふりをして過ごすことにした。


(そういや前世でも学校では常にこうだった気がする)


 友達のいなかった俺は休み時間になる度にこうして寝たふりで時間を潰していたのだ。


 そうして寝たふりで時間を潰していると、やがて教室の席は埋まり、時間になったのか教室の前の扉がガラリと開いて――若い女性の教師が入って来る。


 若いと言っても母よりは少し年上って感じの女性だが。


 女性は教壇に立つと表情をキリっとさせて自己紹介を開始した。


「皆さん、初めまして。私はこのクラスの担任を務めることになりましたアリアンヌと申します。これから1年間は私がクラスの担当となりますのでよろしくお願いしますね」


 魔法学校は基本的に5年制になっており、10歳~15歳までの期間を過ごすことになる。


 担任の話では1年毎にクラスは上の学年へ上がることになり、その際にクラス替えも行われるようだ。


(多分、成績によってクラスが変わるんだろうなぁ)


 あくまで俺のイメージだけど。


「それでは最初に皆さんには順番に自己紹介をしてもらいましょう」


(げっ!)


 ボンヤリとしていた俺は自己紹介と聞いて顔を引き攣らせる。


 ボッチにとっては超絶苦手なイベントだった。


 幸い俺は後ろの席に座っていたので自己紹介は最期になるので考える時間はあったのだが……。


「アトゥム。よろしく」


 それだけ言って俺は席に着いて窓の外を眺めて誤魔化した。


 教師も生徒も《それだけ?》って顔をしているが、ボッチにはこれが精一杯なんだよ!


「こほん。それでは早速ですが授業を始めましょうか」


 前世の学校なら顔合わせとホームルームが終われば初日は終了ということも少なくなかったが、魔法学校はあくまで親に金を出してもらって通っているので効率重視らしい。


「まずは、この石を後ろの席に回して行ってください」


 そう言って先生が先頭の席に規定の数の石を置いて行き、それが順番に後ろに回されて俺の手元にも届く。


 摘まんで観察してみるが、それは濁った水晶のような不揃いの形の石だった。


「行き渡りましたね。それでは皆さん、配られた石に魔力を流してみてください」


「???」


 俺達は困惑するが、それぞれに言われたとおりに石に魔力が流し込む。


 このくらいなら魔法学校に通う為には最低限出来るようになっているので問題なく俺も石に魔力を流す。


 結果、石は色が変わって赤、青、緑と変わった後――黄色に安定した。


「色が変わりましたね。それは皆さんがそれぞれの得意な魔力の属性を表しています。例えば赤になった人は火属性です」


「よし!」


 石が赤に染まった少年が先生の話を聞いてガッツポーズを取る。


 火属性、格好良いし強いよね。


「青は水属性、緑は風属性、黄が土属性です」


「え~」


 どうやら俺は土属性らしい。


 そして、どうやら土属性は不人気のようで俺と同じく石が黄色になった生徒は露骨に不満そうな顔をしていた。


 まぁ、土属性って地味だからな。


「それでは次にこの紙を回してください」


 先生は生徒の不満を聞き流して、さっきと同じ要領で紙を配っていく。


 俺も手元に回ってきた紙に目を走らせるが……。


(なんだ、こりゃ?)


 奇妙な図形が書かれているだけで意味不明だった。


「皆さんに配った紙は簡易的ではありますが魔法書です。その紙に描かれている図形に魔力を流すことで《自己投影魔法》を習得することが出来ます」


「マジかぁ~」


 まさか初めての魔法がこんなに簡単に習得出来るとは思っていなかった。


 俺は早速、魔法書とやらに魔力を流してみると、件の魔法書はボロボロに崩れて塵になって消えてしまった。


(なんだ、こりゃ?)


 焦って周囲を見回すと、そうなっているのは俺だけではないようで皆も同じようにボロボロになった魔法書に焦って周囲を見渡していた。


「ボロボロになって消えてしまったと思いますが焦る必要はありませんよ。そういう仕様なのです。簡易的な魔法書というのは魔法を習得すると消えてしまうように出来ているのです」


(先に言ってよ)


 焦ったじゃねぇかよ。


「それでは早速ではありますが自己投影魔法を使ってみましょう」


 いきなり使ってみろと言われた困惑したが、周囲の奴らが《自己投影》と唱えているのを見て俺も習ってみる。


「……自己投影」


 呟いた途端に俺の目の前に半透明なウィンドウが現れる。



・アトゥム

 土属性 レベル0



 どうやら、この魔法は俺のステータス的なものを表示する魔法のようだが……。


(これだけ?)


 あまりの情報量の少なさにガッカリしてしまった。


「はい。皆さんの前に名前とそれぞれの属性の表示が現れたと思いますが、それが現在の皆さんの状態になります」


 先生の話のよると、この魔法は過去の偉大な大魔法使いが開発した魔法で、自分の魔法的な能力を視覚化する為に作られた魔法のようだ。


 この魔法は非常に便利だった為、後世の魔法使いによって改良に改良を重ねられ、魔力消費を少なくする為に余分な機能を徹底的に削除された結果、簡易的な魔法として完成したらしい。


 お陰で俺達のような初心者でも習得は容易だったが、完全に完成した魔法ということで既に改良の余地がない魔法としても有名なのだそうだ。


「さて。皆さんの属性には恐らくレベル0と表記されていると思いますが、これは自分の使える属性を認識することで表記されます。とは言ってもレベル0では実際に魔法を使うことは出来ません。このレベルを1にすることで初めて魔法を使うことが出来るのです」


「へぇ~」


「ちなみに属性魔法のレベルは最大で10となっており、レベルが10となった時点で上位属性への道が開けるのです」


「上位属性?」


「例えば火属性の上位属性は炎属性。水属性なら流属性。風属性なら嵐属性。土属性なら地属性となります。まぁ、最低でもレベル10にならなければいけないので簡単ではありませんけどね」


(なるほど、ね)


 どうやら俺は土属性を極めて地属性を目指すのが王道のようだ。


「それと、皆さんの中には居なかったようですが、世の中には特殊な属性として光属性と闇属性を持っている人もいます。光属性は石が白くなり、闇属性は石が黒く染まります」


「へぇ~」


「光属性は魔法の中でも稀有な回復魔法に適性を持つ属性であり、同時に灯りを点ける魔法なんかも使うことが出来ます」


(ん?)


「逆に闇属性は呪いなどに適性を持つ属性で、一般的には危険な属性として注意されています」


 俺は途中、疑問に思ったが――直ぐに先生の説明に流されてしまった。


「ともあれ、今日のところは皆さんの属性を意識して属性のレベルを上げることに専念してみましょう。得意な属性なら直ぐにレベルも1に出来る筈です」


 俺は言われたとおりに自分の土属性を意識してみる。


 ちなみにクラスの中では要領のいい奴が直ぐにレベル1になっていたが、俺がレベル1になることはなかった。






 魔法学校の授業が終わり、俺は家に帰ってから母に尋ねてみた。


「ねぇ。ひょっとして母さんって……光属性だったりする?」


「そうよ。知らなかった?」


「…………」


 知らねぇよ。


 灯りを点けるとか普通の魔法だと思ってたわ。


「先生が光属性って凄く珍しい属性だって言ってたよ」


「ふふん。お母さんは同期の中では凄く注目された魔法使いだったのよ。魔法学校ではアイドルだったのだから」


「そ、そうなんだ」


 うちの母は想像していた以上に凄い人だったらしい。


 俺にとっては普通のオカンなんだけど。


「ちなみに光属性って本当に特殊な属性でね。アトゥムちゃんも自己投影魔法は習得したでしょうから分かると思うけど、光属性って光属性だけが表示される訳じゃなくて、同時に火属性、水属性、風属性、土属性の4つが付いて来るのよ」


「何それ、ずるい」


 俺は土属性1つだけだったのに、母は光属性に加えて4つの属性がセットが付いて来たそうだ。


「お母さんに文句を言われても困るわよ。そういう仕様だったんだから」


「むぅ」


 ちなみに母は基本的には光属性を上げていたが、息抜きに他の属性も上げて結構万能な魔法使いだったらしい。


 ついでに言うと光属性はレベル10になると聖属性になるらしく、回復魔法では右に出る者がいなかったそうな。


「母さんって凄かったんだね」


「ふふん。もっと褒めてくれても良いのよ」


「ちなみに土属性のレベルは……」


「まだ3ね」


「…………」


 やっぱり土属性って人気ないんだ。




 ◇◇◇




 土属性のレベルが1になるまで俺は3日も掛かった。


 やっと最低限の魔法の体裁は整ったと言えるのだが……。


「何これ」


 土属性レベル1では魔力を少量の砂に変えるのが精々で何の役にも立たなかった。


 周りを見渡してみるが、他の土属性も似たようなもので机に砂を撒き散らしている。


 一方で火属性だった者は机の上で小さな炎を生み出して一喜一憂しているし、水属性だった者は机の上のコップを水で満たしてご満悦だ。


 風属性の者は周囲に風を発生させて――土属性が生み出した砂を撒き散らして怒られていたが。


(土。土。土)


 レベル1では役に立たないと悟った俺は早々にレベル2にするべく無心で頑張っていた。




 ◇◇◇




 俺が魔法学校に通い始めて3ヵ月が経過して、俺の土属性のレベルは3になった。


 言ってみれば土属性に限れば母に追いついたと言えるのだが――全く嬉しくない。


 おまけに土属性レベル3で出来るようになったことと言えば、地面に土の壁を作ることくらいだ。


 一応は防御の役に立つと言えるのだが、レベル3程度で作れる土壁は脆くて素手で殴っても直ぐに崩れてしまう。


(土属性って防御に優れているイメージがあったけど、そんなこともなかった)


 敢えて言うなら畑仕事の時に畑を耕すのに便利かもしれないレベルだ。


 俺がアルバイトをする時は畑仕事の手伝いをすることにしよう。


 だが3ヵ月も魔法学校に通って俺は1つに確信を得るに至っていた。


(うん。やっぱり友達は出来そうもないわ)


 俺は今世でもボッチで確定だということだった。






 俺は今日も今日とて土属性のレベルを上げるべく頑張っていたのだが、ふと母の言葉を思い出す。


(そういや母さんは息抜きの他の属性のレベル上げをしたと言ってたな)


 俺も母に習って他の属性のレベルを挙げてみようと思う。


 魔法学校では基本的に自分の得意属性のレベルを上げて上位属性にすることを推奨されているが、光属性だった母は最初から4属性も表示されていたことから暇潰しに上げるという発想が出たのだと思う。


 俺はそれに習って別の属性に挑戦してみようと思ったのだが……。


(火属性は……欠片も出来る気がしない)


 俺が土属性と相性が良いように、反対に火属性とは相性が悪そうだった。


(風属性も微妙。水属性は……お?)


 風属性は火属性程ではないが相性が悪かったが、水属性は少し手応えがあった。


 どうやら俺は 土>水>風>火 の順で得意属性になっているようだ。


 あくまで感覚の話ではあるのだが、俺の魔力を10割として考えた場合、得意属性の土属性は4割、水属性は3割、風属性は2割、火属性が1割で合計が10割となる気がする。


 だから土属性程ではないが俺は水属性とも相性がよかったらしい。


 俺が水属性を意識して魔力を操作していると魔力から僅かに水滴が漏れた気がして……。


「あ」


 自己投影魔法を確認してみる。



・アトゥム

 土属性 レベル3

 水属性 レベル0



「よし」


 狙い通りに水属性が表示された。


 魔法学校では一極集中が推奨されているが、俺は母に倣って他の属性で息抜きすることにしよう。




 ◇◇◇




 水属性の方もレベル1にするのに3日程掛かってしまったが無事に俺は水属性を上げて、机の上に置いたコップに水がちょろちょろと入っていく。


 水属性を上げるのは延々と土属性を上げようと頑張るのに対して楽しかったのだが、このまままだ土属性を上げるのに戻るのは、なんか勿体ない気がする。


(土属性と水属性が揃ったんだし、折角だから……)


 俺が思うに、この世界の人間は発想力が乏しいのだと思う。


 基本的に前例を踏襲するという考えが一般的であり、新しい発想は奇抜として排斥される流れが出来ている。


 だから俺がやろうとしていること――土属性と水属性を合成しようというのは異端なのだと思う。


 でも思いついたらやらずにはいられない。


(土と水なんだから植物属性……木属性とかにならないかなぁ)


 そうして俺は2つの属性の合成に挑戦することになった。


 後から思えば無謀な挑戦だったと思う。




 ◇◇◇




 魔法学校だけでは時間が足りず、家でも土と水の合成を試すことになった。


 時々、調整に失敗して家を泥で汚して母に怒られたが、それでも俺はめげなかった。


 土属性のレベル上げを放棄したのでクラスメイトには置いて行かれる羽目になってしまったが、俺は半年もの時間を掛けて無謀な挑戦を続けた結果……。


「……出来た」


 ついに俺は土と水の合成に成功して庭に木の芽を生やすことに成功した。



・アトゥム

 土属性 レベル3

 水属性 レベル1

 木属性 レベル1



「よっし!」


 自己投影魔法にも木属性が表示されたことで俺は思わずガッツポーズを取る。


 俺は継続して木属性を育てる為に土属性と水属性を合成しようとして……。


「あれ?」


 その工程を辿らなくても既に俺は木属性の魔力を単体で使えることに気付く。


 どうやら俺の中で既に木属性というカテゴリーが確立していたらしく、意識すれば問題なく木属性の魔力を扱えるようになっていたのだ。


「なるほどねぇ~」


 俺が再び木属性の魔力を行使すると庭に木の芽がぴょこぴょこと生えて来る。


 これからもどんどん木属性のレベルを上げて行こうと思う。




 ◇◇◇




 だが、そう物事は上手くいくようには出来ていないらしく、俺の木属性のレベル上げは全く上手くいかなかった。


 どんなに練習を重ねても木属性がレベル2にならなかったのだ。


(なんでだ?)


 考える。


 考えて、考えて、考えた結果……。


(あ。水属性がレベル1だからか)


 木属性はあくまで土属性と水属性との合成だから、土属性と水属性のレベルが低い方に引っ張られてしまうのではないだろうか。


 つまり、ちゃんと土属性と水属性のレベルを上げないと木属性のレベルを上げることは出来ないのかもしれない。


(何事も近道は出来ないってことか。回り道だが……地道にやっていくしかないな)


 俺は木属性を上げる為に土属性と水属性のレベル上げを再開することにした。





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