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第16話 【大事なのは信頼】

 

 俺は色々と考えた。


 それはもう知恵熱が出るくらいには考えて、考えて、考えた結果……。


「セイナ、愛してる。どうか俺と結婚して欲しい」


 凄く普通にプロポーズすることになった。


 セイナは一瞬硬直したが、直後にポロリと涙を零して……。


「はい、喜んで」


 俺のプロポーズを受けてくれた。


 こうして俺とセイナは恋人から夫婦へとランクアップしたのだった。






「おめでとう♪」


 そうしてプロポーズが成功した後、まったりと過ごしていたら――何故か母が急襲して来た。


「母さん、どうしてここに……」


「疑似眼球に影魔法と音魔法を重ねてこっそりみていたのよ。アトゥムちゃんったら男らしいプロポーズだったわね♪」


「…………」


 なんて無駄に高度なことを。


 魔法を3つも重ねるなんて相当に高等技術の筈なんだけど。


「これでセイナちゃんは正式のお母さんの義理の娘になったのね。お母さん、娘が出来たら色々と可愛がろうと思っていたのよ♪」


「……息子は良いのかよ」


「やっぱり着飾ったりするのは娘の方が良いのよねぇ」


「そ、そうですか」


 どうやら着せ替え人形にするなら息子よりも娘の方がいいらしい。


「あはは……」


 流石のセイナも乾いた笑いを漏らしていた。






 ともあれ、新婚初夜には2人でちょっとだけ良いワインを飲んで、良い雰囲気になったところで……。


「セイナ、愛してる」


「わたくしも愛していますわ、あなた」


 情熱的なキスをしながらベッドに押し倒したのだった。




 ◇◇◇




「うぅ~ん」


 今日も今日とて母は新婚夫婦の家に遊びに来てセイナの健康診断をしてくれることになった。


「やっぱりお母さんの魔法じゃ、セイナちゃんの薬の影響を抜くことは出来ないわね。ハーリット国の特殊なお薬なのかしら?」


 どうやらセイナは俺とお見合いする前に2年は妊娠しないようにと事前に薬を飲んでいたらしい。


 今では後悔しているらしいが、その薬のせいでセイナは妊娠しなかったらしい。


(道理で、あんなに中に出したのに妊娠しないと思った)


 俺達のどちらかが不妊だったのではなく薬の影響だったらしい。


「ふふん。残念だったわね、アトゥムちゃん。お母さんより早く子供が出来なくて」


「くっ……!」


 母が俺を産んだのは19歳の頃なので、薬が切れる時期を考えるとセイナも出産は19歳になる。


 時期的に考えれば俺は20歳だ。


 いや、別にどっちが早く子供が出来るかの勝負なんてしていないけど、なんか母に煽られると悔しい気分になるのだ。


「本当に仲がよろしいのですねぇ」


 そして、それをセイナが微笑ましく見ているのが、なんか微妙な気分になる。


 とりあえず、もう少しだけ2人きりで過ごすことが出来そうだ。






「しかし母さんにも治せないなんて、ハーリット国の技術って実は凄いんじゃない?」


「聖魔法で治せるのは基本的に病気だけだからね。セイナちゃんが服用したのは毒でもないし病気でもないから治せないみたいなのよ」


「ああ。分類としては薬になるのか」


 身体に害を与える系じゃないから母にも治せないってことになるのか。


「大人しく薬の影響が消えるのを待つしかないわね。幸い、副作用とかはないみたいだし」


 セイナが飲んだのは単純に妊娠しなくなる薬だが、その効果は2年近く継続するので強い薬に分類されるようだ。


 期限が切れても少し様子を見た方がいいと言われた。


「でもセイナちゃんって凄く魅力的な身体をしているし、アトゥムちゃんが我慢出来るかしら?」


「……頑張ります」


 俺が第1に考えるべきはセイナの健康で、次に考えるのは子供が健康に生まれてくることだ。


 その為なら少しくらいの我慢は……。


「出来るの?」


「……多分?」


 正直、あんまり自信がない。


「本当にアトゥムちゃんはセイナちゃんのおっぱいが大好きなのねぇ」


「……大好きです」


 自分の性癖にも困ったものである。




 ◇◇◇




 結婚して変わったことと言えばセイナの俺の呼び方だろう。


 今まではセイナは俺のことをアトゥム様と呼んでいたが、結婚してからは旦那様、もしくはあなたと呼ぶようになった。


 そう呼ばれる度に俺は結婚したんだなぁ、という実感がわいてくる。


 俺も18歳になったのだから結婚してもおかしくない年齢だし、この世界では早過ぎるというほどでもない。


 なにより妻となったセイナは俺に甘えてくるようになって――可愛すぎる。


 でも今日は俺を甘やかす日なのか、セイナは俺に膝枕をしてくれて、愛おしそうに頭を撫でてくれている。


「…………」


 セイナの凄いところは膝枕をすると胸部装甲に隠された顔が見えなくなるところだ。


(大きいと全然、見えなくなるんだなぁ)


 昔、母に膝枕された時は半分くらいは顔が見えていたけど、セイナは完全に顔が隠れてしまって――おっぱいしか見えない。


(ああ、幸せだ)


 そうして俺は自分の幸せを噛みしめるのだった。


 だが、そんな幸せの瞬間は唐突に玄関の扉がノックされたことで中断される。


「……誰だ?」


 母ならノックなんてしないだろうし、父なら単独で来ることはない。


 つまりノックの相手は父でも母でもない誰かということになる。


 折角の幸せな時間を邪魔されて俺は若干不機嫌になりながら玄関の扉を開けると……。


「失礼する」


「あ」


 いつかのセイナに同行して来た女性と老人が家に入って来た。


「この度は結婚したと聞いたのでお祝いの為に参上した」


「それは……どうも」


 一応、礼は言ってみたが女性は何故か不機嫌そうに顔を顰めている。


「すまんの。アイギスはもう30近いのに結婚とは縁がなくてのぉ。早々に結婚を決めたセイナが羨ましいだけなんじゃ」


「師匠!」


 どうやら潔癖さんと同じく結婚には縁がない人のようだ。


「それにしても……随分と成長したようじゃの」


「んっ!」


 魔力を精査されたのかセイナは抵抗しようとしたが突破を許してしまったようだ。


「人の奥さんを無断で精査するなんてマナー違反じゃないか?」


「すまんのぉ。これも仕事の一環なんじゃ。短期間で魔力が倍近くなったのも、何かコツでもあるのかのぉ」


「俺はセイナの為に魔王軍とは敵対しないが、別に味方という訳じゃないんだぞ」


「ほっほっほ。そうだったの」


 暗に教える義理はないというと老人はあっさりと引き下がった。


 それにしても、この老人……。


「どう見ても50歳以下には見えないが、不毛の大地から移り住んで来た時の当事者か?」


「……そうなるの」


 どうやら50年前も現役でハーリット国が不毛の大地に住んでいた頃の時期を経験していたらしい。


「もう50年以上も昔の話じゃが、当時のことは未だに夢に見ることがあるわい。今思い出しても、あれは過酷な生活じゃった」


 老人が眉間に皺を寄せるくらい、不毛の大地でも生活は過酷だったようだ。


「今も戦争状態は継続しているが、あの生活に戻るくらいなら戦争を続けた方が100倍はマシじゃな」


 しみじみとそんなことを語る老人。


 やはり真面に作物も育たない大地での生活には戻りたくないようだ。


「セイナも直ぐに子供が出来そうじゃし、今日は邪魔をしたの」


「ふん!」


 そうして老人は不機嫌そうな女性を連れて帰っていった。


「暇なのかねぇ」


「それだけ、あなたの存在を重要視しているということですわ」


「かもな」


 俺が魔王軍と敵対しないことを確認したかったのかもしれない。


 俺が明確にセイナの為に魔王軍と敵対はしないと言ったから素直に帰ったのだと思う。


「諜報課って上の方は色々と大変そうだな」


「ハーリット国が存続する為なら何でもやるという人達ですから」


「不毛の大地には絶対に帰りたくないんだろうな」


「そうですわね。わたくしも話を聞いただけですが、あそこに帰るくらいなら死んだ方がマシと思っているようです」


「……みたいだな」


 恐らく、生きる為に色々と切り捨てて来た経験があるのだろう。


 真っ先に思い付くのは子供だ。


 生きる為に邪魔になる子供を切り捨てた経験があるからこそ、セイナが子供を産むことに賛成なのだろう。


(ああ。子供を切り捨てない為に不妊の薬があったのかな?)


 そもそも子供を育てられない環境だから妊娠しない薬が必要になったということなのだろう。


 それが今でも望まぬ妊娠を避ける為に諜報課で使われているのかもしれない。


 だからこそ、あの世代の奴は殊更子供を大事にするのかもしれない。


「やれやれ」


「あんっ」


 俺は再びセイナの膝枕に戻って、どさくさに紛れて柔らかいお尻を撫でたのだった。




 ◇◆◇




「セイナは完全に絆されたようですね」


「最初から分かっていたことじゃ」


 セイナは未だに諜報課に所属しており、定期的に報告を上げているが――その報告書には魔力を急激に上げる方法などは書かれていなかった。


「嫁に入ったセイナが家族を裏切ることはないじゃろ。だがアルメリア殿の御子息がハーリット軍に敵対しないと言質を取ってくれただけで十分じゃ」


「また監視をして秘密を探りますか?」


「止めておけ。そもそもワシらの存在など最初からバレバレじゃ」


 最初からアルメリアとアトゥムには2人が監視していることはバレていた。


 それを容認していたのはハーリット国がセイナの祖国だからだ。


 だが嫁となって家族になったセイナを監視するというのなら容赦はしない。


「くっ。セイナの魔力は私よりも高くなっていました。短期間であそこまで伸ばす方法があるというのに、探ることも出来ないなんて」


「魔力だけではあるまい。魔力制御や魔法のレパートリーも格段に増えている筈じゃ。下手をすればワシよりもな」


 まだ老人の方が上だが、それも数ヶ月後には逆転しているかもしれない。


「……恐ろしいですね」


「そうじゃな。これだから天才は困る」


 短期間で素人を魔法の天才に変えてしまう。


 これが真の天才の恐ろしさだ。


「あの天才2人が敵対しないというだけで大助かりじゃ。これ以上の成果をセイナに求めたら罰が当たるぞ」


「……そうですね」


 2人はトボトボと歩いて帰路に就くのだった。




 ◇◇◇




 疑似眼球を作れるようになったセイナは今、雷属性を習得する為に頑張っている最中だった。


「うぅ。難しいですわ、あなた」


「分かる分かる。まずは順番に行こう。雷雲より先に雨雲を作れるようになろう」


「はい、わかりましたわ」


 セイナは素直に頷いて雷雲の前段階として雨雲を作ることになった。


 常人には母のように一気に雷雲を作るのは不可能なので、まずは雨雲を作って感覚を掴むことから始めなくてはならない。


 火属性と水属性を組み合わせて雨雲を作るのも大変だが、この過程が出来なければ3属性の合成は成功しない。


 俺はセイナの合成を見守りながら自分の属性のレベル上げを行う。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル8

 水属性 レベル10★

  清属性 レベル8

 木属性 レベル10★

  樹属性 レベル8

 風属性 レベル10★

  音属性 レベル6

 氷属性 レベル9

 火属性 レベル8

 雷属性 レベル10★

  天属性 レベル8

 光属性 レベル10★

  命属性 レベル4

 影属性 レベル8

 爆属性 レベル5



(次は氷属性かな)


 これは最近になって気付いたことだが、合成によって出現した特殊属性よりも上位属性の方が上がりにくい。


 実際、初期の方に出現した重属性はレベル8のまま止まって上がらなくなってしまったし、他の上位属性も8で止まってしまっている。


(ひょっとして、これが成長限界と言われる由縁か?)


 単純に上位属性が上がりにくいだけだが、これが2つになれば確かに時間が足りずにカンスト出来ないかもしれない。


 1つの属性に集中した方が極められるというのは、そういうことかもしれない。


「あ。あなた、ちょっと見てください」


「ん?」


 セイナに呼ばれて視線を向けるとセイナは掌から雨を降らせていた。


「どうなってんの、それ?」


「実は……」


 セイナが自己申告で告げたスタータスは……。



・セイナ

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル3

 水属性 レベル7

 風属性 レベル6

 火属性 レベル5

 木属性 レベル7

 氷属性 レベル5

 雨属性 レベル1



「雨属性かぁ。確かに出ても不思議じゃないな」


 寧ろなぜ俺に出なかったのか疑問に思う。


「それは多分、アトゥムちゃんが雨雲を通過点としか見ていなかったからね」


「……母さん、いつ来たの?」


 唐突に現れた母に俺はもう驚かない。


「アトゥムちゃんが昨夜、赤ちゃんみたいにセイナちゃんのおっぱいに吸い付いていたことなんて、お母さん知らないのよ?」


「いらっしゃいませ、お母様。今直ぐ、お茶を準備しますね」


 この母、人の夜の生活を覗きやがってぇ!


 セイナだってアンアン喘いで悦んでいたんだから良いじゃねぇかよ。


「お義母様、雨属性があると雷属性は習得が出来ないのでしょうか?」


「そんなことないわよぉ。寧ろ、雨属性を習得してからの方が習得は簡単になるわ」


「そうなのですね♪」


 セイナは雷属性の習得の方が優先度が高いのか、夜の生活に関しては気にしない方針のようだ。


 最中は喘いでいるんだけど。


「母さん、氷属性の上位属性って何になった?」


「それがまだ上げていないのよねぇ。命属性みたいに後悔しないようにアトゥムちゃんの後に上げようと思って」


「なるほど?」


 どうも母は前例を踏襲する派のようで自ら先駆者になる気はないようだ。


 爆属性は流石に自分でもどうかと思ったのかもしれない。


(氷属性の上位属性ねぇ)


 どんな感じが良いか少し考えてみよう。






 母が帰ると再び静かな時間が流れた。


 セイナは雷属性の習得に集中して、俺は属性レベル上げに尽力する。


「あなた」


「ん?」


 だが直ぐにセイナが俺を呼ぶ。


「お義母様に夜の生活を覗かれるのは、やっぱり恥ずかしいですわ」


「ぶっ!」


 さっきはスルーしていたが、やはりセイナも恥ずかしかったようだ。


 あの時は夢中になってセイナのおっぱいをちゅ~ちゅ~してしまったし、セイナもアンアン喘いでいたが、それを母に見られていたかと思うと顔から火が出るほどに恥ずかしい。


 いや、やっている最中はめっちゃ興奮したんだけど。


「天幕を張って見られなくする魔法とかはないのでしょうか?」


「影魔法で……いや、影魔法は母さんの方が上だからなぁ。出来ても突破されるか」


「結局、属性レベルが高い方が有利なのですね」


「そうなるな」


 だから母は俺の上位互換なのだ。


 唯一勝る点が命属性だ。


 まぁ、それさえもいずれはどうにかしてしまいそうだが。


「あなた、お手伝いをお願いしますわ」


「ああ、任せろ」


 俺は背後から抱きしめて雷属性を取得しようとしているセイナの補助を行う。


 最初は緊張していたセイナだが、今では安心して俺に身を任せて補助を受けられるようになった。


 やっぱり大事なのは信頼なのだ。




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氷だしやっぱり停止とかで「時」かねー? エターナルフォースブリザード……!
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