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第13話 【嫁候補と秘密を共有する】

 

 俺はセイナと一線を越えて恋人になり、これから秘密を共有していくことになった。


「属性の合成、ですか?」


 その最初の一歩として、まずは土属性と水属性の合成を教えることにした。


 現在のセイナのステータスは本人の自己申告によれば……。



・セイナ

 土属性 レベル8

 水属性 レベル3

 風属性 レベル2

 火属性 レベル1



 こんな感じになっている筈。


 俺が手伝っていたし短期間としては頑張った方だろう。


「というわけで右手には土属性の魔力を、左手には水属性の魔力を、そして2つを合せる」


「あ」


 当然のように俺が合成を成功させるとセイナは呆気に取られたような顔をする。


「木属性の魔力の完成だ」


「…………」


 セイナは唖然としてノーリアクションだ。


 やはり、この世界の住人は発想力が乏しく、属性の合成など思いつきもしないことらしい。


「す、凄いですわ。こんなことが出来るなんて」


 徐々に困惑を噛み砕いたのか、セイナが改めて俺を称賛してくる。


「わ、わたくしにも出来るでしょうか?」


「属性の合成には驚異的な魔力制御が必要になるが、俺が手伝えば難易度は下がる。セイナにも出来るさ」


「は、はい!」


 本人が魔法が趣味というだけあって、属性の合成という新しい試みには興味津々のようだった。


 俺は頑張って属性の合成を成功させようとしているセイナの両手を包み込むようにして補助をして、成功に導くことにした。




 ◇◇◇




 セイナの魔力制御はあまり高くなかったので合成を成功させるまで1週間以上も時間が掛かってしまったが……。


「出来ました! アトゥム様、出来ましたわ!」


 やっと合成に成功し、ステータスに木属性が出現した時は大いにはしゃいでいた。


「頑張ったな」


「はい!」


 どうやらセイナは魔法が楽しくて仕方ないという状態のようだ。


 俺にも経験があることなので、その気持ちはよく分かる。


 木属性がレベル1になったことで夢中でレベル上げに邁進しているようだ。


 今の内に魔力制御を鍛えて貰って、ドンドン合成属性を追加出来るようにしてもらいたい。






 夢中で木属性のレベル上げをしているセイナを家に残し、俺は実家の母に報告に向かう。


「やっぱり補助があると合成の習得も楽になるのねぇ」


「……俺が自力で習得した時は数ヶ月掛かったしね」


「くす。あの時のアトゥムちゃんはコソコソしていたけどバレバレだったわねぇ」


「…………」


 俺の秘密なんて母からすれば丸分かりだったのだろう。


「でも実際に合成を成功させた時は驚いたのよ。才能は兎も角、発想は凄い子だって思ったもの」


「……そっすねぇ」


 別に俺は天才じゃないしぃ~、母にはまだまだ追いつけないしぃ~。


「セイナちゃんは魔法に夢中になっているみたいね」


「あの時期が1番楽しいよね」


「そうね。よく分かるわ」


 母も魔法に夢中になっていた時期があったのか直ぐに共感する。


「それでね、お母さん暇だったから新しい属性を編み出してみたのよ」


「なんか唐突に凄いことを言いだしたんですが」


「うん。火属性と風属性を合成させて爆属性にしてみたのよ」


「おうふ」


 なんて物騒な属性を生み出すんだ、この人は。


「それを無人の荒野で試してみたんだけど……」


「どうなったの?」


「大きなクレーターが出来ちゃってねぇ。国の上層部にまで話が伝わって大騒ぎになっちゃった」


「なにやってんのぉ!」


 火属性と風属性の合成は、あまりにも殺傷力が高過ぎるから俺が敢えて挑戦しなかった合成なのに、この人勝手に挑戦した上に、とんでもない成果を出しとる。


「その時は飛行魔法で上空から地上に向かって魔法を放ったのだけど、爆発と同時にキノコみたいな雲が発生してね。それが凄く目立ってしまったのよ。あれは何だったのかしら?」


(あかん。この人、魔法で核兵器並の爆発を発生させとる。マジで国を魔法一発で消し飛ばせるようになってしまった)


 最早、完全に人間兵器である。


 父に視線を向けると、無みたいな表情で佇んでいた。


 もう魔王軍がどうこうというレベルの話ではなく、完全に母一強の時代に入ってしまった。


「この魔法は危ないから、アトゥムちゃんも使う時は気を付けてね」


「あ、はい」


 そんな馬鹿みたいに殺傷力が高い魔法、何処で使えというのだろうか。






 とは言え、セイナが属性のレベル上げに夢中になっている間、俺も暇なので暇潰しに爆属性の合成に挑戦してみる。


 予想はしていたが合成はあっさりと成功して……。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル7

 水属性 レベル10★

  清属性 レベル7

 木属性 レベル10★

  樹属性 レベル7

 風属性 レベル9

 氷属性 レベル8

 火属性 レベル7

 雷属性 レベル10★

  天属性 レベル6

 光属性 レベル9

 影属性 レベル6

 爆属性 レベル1



 俺の属性がまた1つ増えたのだった。


(そろそろ風属性とか光属性がカンストしそうなんだけど、どうすっかなぁ)


 風属性の上位属性は嵐属性、光属性の上位属性は聖属性だ。


 このまま素直に既存の上位属性にしてしまっても良いのだが……。


(魔法で重要なのはイメージだからな)


 土属性が地属性ではなく重属性になったように、俺の願望が上位属性に影響を与えていることは間違いない。


 それを踏まえた上で俺が風属性に求めるものと言えば……。


(風属性には出来れば攻撃よりも音を遮断したりする効果の方を期待したいんだけどな)


 結界などのように体の周囲に展開して防御に活用したい。


「お?」


 その俺が願望を待っていたのか、俺のステータスには……。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル7

 水属性 レベル10★

  清属性 レベル7

 木属性 レベル10★

  樹属性 レベル7

 風属性 レベル10★

  音属性 レベル0

 氷属性 レベル8

 火属性 レベル7

 雷属性 レベル10★

  天属性 レベル6

 光属性 レベル9

 影属性 レベル6

 爆属性 レベル1



 新たな上位属性として音属性が追加されていた。


(なるほどねぇ)


 確かに音というのは空気の振動で発生しているわけだから風と無関係ではない。


 逆に音属性なら空気の振動を抑制して静音にも使えるかもしれない。


(使えるな)


 これはこれで色々な使い道が思いついて、ちょっと楽しくなって来た。


「アトゥム様、ちょっと魔法を見てもらえませんか?」


「ああ、良いよ。今行く」


 俺はセイナに呼ばれて向かいながら、まだまだ魔法には可能性があるのだと知って内心で笑うのだった。




 ◇◇◇




 俺とセイナが恋人関係になってから3ヵ月が経過した。


 セイナが俺よりも誕生日が早いらしく、もう17歳になっていた。


 そして属性のレベル上げに関しては……。



・セイナ

 土属性 レベル8

 水属性 レベル5

 風属性 レベル4

 火属性 レベル3

 木属性 レベル5



 こんな感じに成長していた。


「良い感じだな」


「はい。木属性のレベルを上げるの楽しいですわ」


「うんうん。わかるわかる。でも、そろそろ次に行こうか」


「…………はい?」


 キョトンとするセイナが可愛いが、そろそろ惰性のレベル上げではなく、新しい要素を加えて刺激を与えた方がいいと思うのだ。


「次は水属性と風属性を合成して氷属性にしてもらいます」


「…………」


「こんな感じね」


 俺はお手本に水属性と風属性を合成して氷を生み出して見せる。


「アトゥム様は……」


「ん?」


「一体、いくつの属性をお持ちなのですか?」


「今は……15個くらいかな」


「15!?」


 流石に想定よりも多かったのかセイナは驚愕に目を見開いている。


「成長限界は大丈夫なのですか?」


「それってよく聞くけど都市伝説なんじゃないかな? もしくは単純に時間が足りなくて属性を極めることが出来なかっただけとか」


「そ、そう……なのでしょうか?」


 セイナも俺の話を聞いて段々自信がなくなってきたようだ。


 そもそも実際に成長限界に達した人間なんて身近にいないのだから、嘘か本当かなんて分かる訳がない。


 単純に昔からそう言われているから真実なのだと思い込んでいただけだ。


「そうそう。だって俺って上位属性を5つ持っているけど成長限界なんて感じたことないもん」


「5つ!?」


 更に驚愕の事実を知ってセイナは驚いて固まってしまった。


「だから、とりあえずセイナは氷属性を頑張ろうな」


「あ、はい」


 セイナは驚き過ぎたのか、考えるのを止めて素直に氷属性に挑戦し始めた。






「やっぱりアトゥムちゃんの発想力には驚かされるわね」


「…………」


 俺はセイナが氷属性のレベル上げに夢中になっている隙に実家に顔を出したのだが、母が当然のように音属性で静音地帯を作っているのを見てチベットスナギツネみたいな顔になってしまった。


「お母様、俺の家を疑似眼球で覗いていましたか?」


「うふ。お盛んね。孫が出来るのが楽しみだわ」


「…………」


 そりゃセイナみたいな巨乳美少女と恋人になったのだから夜の生活は充実しているに決まっている。


 だが、問題はそっちではなくて……。


「音属性のレベルはいくつですか?」


「まだ6よ」


「おうふ」


 俺はまだ2なのに。


「この魔法は静音地帯を作るだけじゃなくて、大きな音を立てて敵を撹乱するにも向いているわね」


「魔法で爆音を出せれば、それだけで鼓膜は破れるからね。急に音が聞こえなくなったら普通の人間は混乱するだろうね」


「そうそう。魔法って普通はそういう方面に発展していくのに、アトゥムちゃんは攻撃方面だけじゃなくて補助にも使える魔法を考案するのが上手いわよねぇ」


「そう?」


 俺だって便利な魔法ばかりではなく、攻撃方面の魔法も開発していると思うんだけど。


「普通の人なら音魔法と影魔法を組み合わせれば完璧な暗殺が出来るって考えるものなのよ」


「物騒だな」


「魔法って元々殺傷目的で開発されたものだからね。どうしても、そっち方面に偏りがちなのよ。だからアトゥムちゃんの発想は助かるわ」


「……どういたしまして?」


 確かに母は俺が躊躇して実現しなかった爆属性を容易に開発してしまったし、そういう方面には躊躇がないのだろう。


 まぁ、俺の目的はあくまでも前世で果たせなかった《挑戦することを諦めないこと》だからな。


 だから魔法はなるべくなる生活を便利にする方面に活用したいものだ。






 母との話を終えて家に帰ると……。


「アトゥム様、ちょっと聞きたいことがあるのですが!」


 氷属性で行き詰ったのかセイナが相談して来た。


 俺はセイナの相談に乗りながら、笑顔ではにかむ彼女が可愛くて頭を撫でる。


「?」


 セイナは困惑していたが……。


「いや。セイナは可愛いなぁ~と思って」


「!」


 ポッと頬を染めるセイナはやはり可愛かった。




 ◇◇◇




 セイナの魔法は日に日に上達している。


 元々魔法が趣味なだけあって魔法の訓練が苦にならないらしく、時には食事を忘れて属性のレベル上げに夢中になっていた。


 まぁ、同棲している俺が食事の世話をしているので問題ないのだが。


 俺はボッチでコミュ障だったが、既にセイナは身内となった為か話に困ることはなくなっていた。


 彼女は俺の恋人で最有力嫁候補だ。


 ちなみにセイナは諜報課に所属しているが、本人の言う通り諜報員としてはあまり優秀ではなかったみたいで、特に運動神経には致命的な欠陥を抱えている。


 ぶっちゃけ、50メートル走で10秒以上掛かるくらいには足が遅い。


 まぁ、それは胸に特大の胸部装甲を装備していることが多分に影響しているのだろうが、それにしても遅い。


 少なくともセイナに格闘能力は皆無だった。


 本人もそれは自覚しているようで、俺に対してのハニトラ要員として派遣されたことに対しては仕方ないと思っているらしい。


 それで魔法のレパートリーが増えたので本人は幸せそうだが。


「最近、魔法が楽しくて仕方ありませんわ」


「そうだろ、そうだろ」


 魔法というのは出来ることが多くなると本当に楽しくて夢中になれるのだ。


 最近のセイナは夏になって暑くなって来たので氷を入れて飲み物を飲むのがマイブームになっている。


 こういう生活の中で魔法が役に立つのは本当に楽しくて仕方ない。


 生活の中で役に立つ魔法と言えば……。


「水属性をカンストさせると清属性が現れて、それは料理にも使える魔法で便利だぞ」


 色々と便利な清魔法を教えることにした。


「え? あれ? 水属性の上位属性は流属性では?」


「それは術者のイメージに左右されるみたいで、美味しい水が飲みたいと考えながらカンストさせたら……こうなった」


「なんだか適当なのですね」


 そう。魔法って術者のイメージが重要だからなのか案外適当なのだ。


 俺も次は光属性がカンストしそうなので素直に聖属性にして良いものか迷っているのだが、まだ何にしたいかという願望は思いつかない。


 母は聖属性なので聖属性に出来ることは把握しているのだが、一般的に言うと光属性は怪我を直す回復魔法が使えるが、聖属性は病気を治す為の治療魔法が使えるのだ。


 別にそれでも構わないのだが、聖属性は母が既に使えるので俺は別の方面に伸ばしたいところだ。


 例えば、対象の生命力を活性化させて元気にする魔法とか。


「お?」


 そんなふわっとしたイメージだったのに、俺の身体の中に熱が灯って、なんだか元気が出て来た気がる。


「まさか……」


 俺がステータスを確認すると……。



・アトゥム

 土属性 レベル10★

  重属性 レベル8

 水属性 レベル10★

  清属性 レベル8

 木属性 レベル10★

  樹属性 レベル8

 風属性 レベル10★

  音属性 レベル4

 氷属性 レベル8

 火属性 レベル7

 雷属性 レベル10★

  天属性 レベル7

 光属性 レベル10★

  命属性 レベル1

 影属性 レベル7

 爆属性 レベル3



 なんか光属性がカンストして命属性が生えていた。


(なるほど。体力を回復する系の属性か)


 光属性の回復魔法は怪我を治せても体力までは回復出来ない。


 聖属性も同じで病気を直せても体力は回復出来ないのだ。


 だが命属性なら魔力を消費して体力を回復させることが出来る。


(これは良い属性を手に入れたぞ)


 日課のランニングによってそれなりの体力は付いて来たと思うが、それでも俺が後衛の魔法使いであることは事実で、戦士に比べて体力に劣っていたことも事実。


 これはそれを補うことが出来る属性かもしれない。






 報告の為に実家に向かったら……。


「うぅ~ん。うぅ~ん」


 なんか母が唸っていた。


「何してんの?」


「上位属性が2つ習得出来るようにならないか試していたんだけど、1度完成してしまったイメージを崩すのは難しいのよ。このままではお母さんが命属性を習得するのは難しそうだわ」


「……そっすか」


 なんか当然のように命属性に付いて知っているんだが、もう俺は突っ込まない。




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