第23話・出入口が課題なようで
明るい未来が見えてきたと思わない!?
意気揚々とそう言い放ったわりに、驚くべき事に課題はまだ多く残っていて結構お先は真っ暗だったりする。
仮に無魔力空間とでも名付けようか、それの作成は完成が見えた。
無魔力空間を作れたとしても、
「入口はどうするんすか? 扉を作って開けたら、そこから魔力が流れ込んできますよね」
と、シンシアが確認する。
それに関してはアイデアはあった、というか、もはや消去法的にこれしか無いと思っているものがあったので、俺は答えた。
「その空間への入り口外側に小部屋をひとつ設け、もう1枚扉を設置する。入口に入るための入り口だね」
俗に言う風除室と呼ばれるシステムで、現代日本では北国や風の強い地域等でよく使われていた建築スキルだ。
「その小部屋にもしっかりとエレメントのコアを設置しておけば、小部屋内も無魔力空間となる。最初の入り口を開けても、魔力は小部屋内にまでしか流れない。そこでもエレメントのコアに吸収されていくから、次の入り口を開けても少量しか魔力は流れ込まないはずだ」
「よくぽんぽんと思いつきますね」
と俺を褒めるシンシア。だが残念、前世の知識からのパクリである。
「そうなると、扉を同時に開放しちゃうのは厳禁ね」
とクリスティーナが言う。
「流石クリスティーナ、よく気付くね! 天才」
「うふふ、言われて嫌な気はしないわね」
嬉しそうに微笑むクリスティーナと、
「隙あらばイチャつくなぁ、この2人」
苦笑するシンシアであった。
次の課題を見出したのはサーシャだ。
「扉の隙間。どうしようもない」
「その通り。そこが最大の問題点のひとつだ」
考えると、そこに問題点をさらに追加したのはケイシーだった。
「扉も土の壁にする気か? 重いじゃねぇか?」
「基本は木の扉に、土魔法でコーティングする形でいきたい。扉の隙間に関しては、エレメントのコアの配置で、隙間から入って来たやつはすぐに吸収してもらうようにするしかないと思う」
言うと、さらにアイデアを追加したのはシンシアだ。
「扉は1枚目と2枚目で開く方向を逆にすれば、隙間と隙間の間を遠ざけられるんで、時間稼ぎにはなるんじゃないっすかね」
「そうだね。良い意見だ」
同意をする。
そこにアイデアを重ねるのはクリスティーナだ。
「なら、取っ手の位置は絶対に間違えないように、解りやすいデザインが必要ね。疲れているときとか、間違った方を押して壊してしまう事がありそうだわ」
「絶対あるっすね、酔ってる時、それで何回か扉壊してますもん、俺」
不意に面白い話をぶち込むシンシア。この男、戦闘スタイルや気遣いは細かいのだが、オフモードに入ると豪快な一面を持っている。俺の前だと大抵仕事モードなのだが、たまに漏れ出る時があるんだよな。
「わかるぜー、私もそれでぶっ壊した事ある!」
と、まさかのケイシーもそっち側の人間だった。……いや、なんだろう、全然イメージ通りだ。扉を破壊するケイシー。違和感は無い。
「お酒に酔っている時は無魔力空間に入ろうとしないように注意喚起しないといけないわね」
悪戯っぽく笑いながらクリスティーナが悪ノリする。俺の嫁が小悪魔でかわいい。
「なら、解りやすいデザインというのは確定だね」
俺も悪戯っぽく笑いつつも、実際大切なアイデアなので採用とする。
そこでひと段落したところでふと、サーシャが呟いた。
「エレメントのコア、砕いて使用、できない?」
何故そんな事を? と思いかけて、すぐに思い至る。
砕いて、例えば布等に絡ませて、扉の枠組みに張り付けたらどうだろう。
この世界には無いが、現代日本において扉が静かに締まる仕組みのひとつにパッキンというものがある。扉と壁の間にゴム性のものがはさまっているため、鉄と木がぶつかりあう音の割には静かに締まるのだ。
そのパッキン変わりに、砕いたエレメントのコアをばらまいた布を挟んでおけば、扉の隙間から入ろうとする魔力をある程度減らせるんじゃないだろうか?
「戻ったら試してみよう。出来たら大きな進歩になる」
良い。良いぞ、かなり順調に検討を重ねられている。
「入口問題はそんな感じで進めるとしよう。あと2つ、大きな問題がある。太陽光と空気だ」
相手が農作物である以上、光合成は必須だ。だから太陽光は重要。
「太陽光に関しては、ガラス職人に頑張ってもらうしか手段が無い。検討してもらえないかな」
と、ケイシーを見る。
ケイシーは自分のこめかみを小突きながら答えた。
「私に言われてもな……。ガラスってのは、ガラスならなんでもいいのか? 量が必要なら、実力のあるガラス職人より、見習いくらいのやつに頼んだほうが良いだろう。何人か弟子を取ってる奴に当たってみる」
「そうだね、お願いするよ。で、次の問題は空気だ」
「私が体調が悪くなっちゃったやつよね」
「そう。空気が無いと人は作業どころか入ることも出来ないし、農作物だって育たない。換気が必要だ。でも、自然に換気出来るほどの隙間を開けてしまえば、そこから魔力だって出入り出来てしまう。だから」
より少ない面積で、中に空気を送り込めるシステムが必要だ。
だから、俺はいつか作りたいと考えていた開発をひとつ、この段階でやり遂げなければならないと覚悟を決めて、言い放つ。
「――だから俺は、扇風機を作りたいと思う」
と。
ToDoリスト
・既存の農業の問題点の発見及び改善。
・場合によっては問題解決のための装置開発。
・生産量を増やすための土地と人員確保。
・場合によっては効率化のための道具開発。
・場合によっては調理器具の改善。
・新料理開発。
・新料理のレシピ拡散。




