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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第5章・真☆風呂回が挟まるようで

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第6話・なんかの事情があるようだけれど知ったこっちゃないので

 祭りをやる。


 場所はセルト村で確定、人手に関しても実家の使用人という当てがある。集客すらも教会のサポートが得られるはずなので問題は無い。手持ちの金が無いわけでは無いので、祭りを行う資金だって困っていない。吟遊詩人を集めれば盛り上がりも確保できる。


「ここに、コカトリスの声帯を用いた音源作成開発が間に合った場合、それもまたお披露になる。これが出来たら、今の悩みというのは大抵が解決する」


 俺が説明を終えると、3人はしばらく唖然とした。最初に沈黙を破ったのは、頭を抱えるクリスティーナだ。


「貴族から宿代を取って、商人からは場所代を取って、その上でさらにお金を巻き上げる算段があるということね。関係に亀裂が入ったら大変だから、その価格設定については、いずれしっかりと議論しましょう」


 お披露目の内容が内容だから、俺もふっかけるつもりは無かった。ど派手な娯楽的開発ならばふっかけても良かったが、ことは『広める事を目的としたインフラ開発』であるため、質素、とまでは言わないが、良心的な価格で行こうと考えていた。


「いくらになるとしても」ふと、シンシアが挙手をした。「金貸しには可能な限り早い段階で話を持ってったほうが良いかもしんないっすね。祭りで店出したいっていう商人達の品揃えにも影響するし、良い売り物は持ってるが場所代を払う勇気が無い、みたいな商人も、拾えるかもしんないっす」


「採用」


 迷う余地はない。


 実際、俺が貸す、という形でも良いっちゃ良いのだが、せっかく祭りで儲かったけど貸し過ぎて回収するまでは金欠です、となっては元も子も無い。外部に委託できるところは委託しよう。


「それなら」シンシアは軽く手を叩き、さらに提案する。「ディーゼル傭兵団の頃に世話になった金貸しがパラノメールに居るんすよ」





 ―――――(◇◆◇◆◇)―――――





 普段、あまり足を踏み入れない場所に足を運んだ。途中までは馬車で移動したが、知らぬ間に道が細くなったため、シンシアが馬車を引いて、皆で歩いていた。


 貧民街というわけでもない、市場も近くない。住宅街の路地を何度か曲がった所に、それを見つける。


『ゼグズビー質店』


 佇まいは普通の飯屋と変わらないように見える。ややショボいギルドにも見える。だが、ギルドや飯屋と違い、入口に2人の見張りらしき男が立っていた。路地を何度か曲がった先に立つ見張り。威嚇的な護衛にも見えるし、親切な目印にも見えた。


 そして、目印なのはこちらも同じだったようだ。シンシアが引いていた馬車を見て、見張りの2人はすぐに警戒態勢に入った。


「……あの警戒の仕方、もしかしたら問題がある客とのやり取り中かもしれないっす。普段は1人立ってる程度か、居ないんで」


 と、シンシアが俺に耳打ちした。ゼグズビー質店は来客対応中、と。どこか近くで時間を潰したほうが良いだろうか? でもだとしたらどれくらい? 時間の目安を聞くくらいは構わないだろう。


「どれくらいで来客対応が終わるか、聞いてみるよ」


 と俺がそう言って先へ進もうとすると、シンシアが慌てて手綱をオヌシに渡し、俺の先に出た。


「俺の顔が通じるかもしんないんで、折衝は俺が」


 そう言った後に、小声で付け足す。


「……結構ヤンチャな従業員が多いんで、前に行かないで欲しいっす」


 との事である。なるほど、金貸しのイメージ通りだ。どこまでヤンチャなのか見てみたい所はあったが、ここはシンシアの顔を立てる必要があるだろう。俺は歩くペースを落とした。


 それを、俺から任されたとサインとしてしっかり受け取ったシンシアは、率先して見張り2人の場所へ向かい、話始める。俺達は馬車もあるので、少し遅れて近付いていく。


 そして追いつく頃には、


「だから、ディーゼル傭兵団だって。覚えてないのか? いや、まさか見張りに出てる2人が揃って、ここ数年で入ったばっかの新人って事は無いだろ?」


「新人だが?」「文句があるならお引き取りを。主は今、忙しいんで」


 みたいなやり取りをしていた。顔パスは通じなかったのね。


 しかし、顔パスが通じない程度で、シンシアは動じない。


「お引き取りも何もない。中の用事がどれくらい掛かるのか。それを教えてくれたら出直す。どれくらいで用が開く?」


 至って平然と受け答えするシンシア。元傭兵団副団長にとって、多少ヤンチャなだけの人間は子供のようなものだろう。そう思えるほど、平然としていた。


 だというのに、


「知るわけないだろうが中の事なんて」「答えられるもんなら最初の時に答えてますよね? 常識で考えてくださいよ、常識で」


 対する見張りは、やたらと喧嘩腰というか、気が立っているというか、オヌシと気が合いそうだというか。


「おいおっさん」シンシアに向かってそんな暴言を吐いたのは、見張り2人では無く、オヌシだった。「そいつらと今の俺なら、どっちが強い?」


 意味深な質問。少なくとも今の流れに脈絡は無い。だが、シンシアは答える。


「1対1ならお前だな。……いや、お前の出番は無いぞ?」


 これまた意味深な発言。オヌシの出番は無い、というのが、喧嘩にはならない、という意味だとしたら良いのだが……という不安をよそに、オヌシは言う。


「出番の有る無しじゃねぇよ、1人やらせろっつってんだ」


 シンシアは問う。


「乱暴なのはいつもだが、熱いのは珍しいな。何か思うところがあったのか?」


 オヌシは答える。


「こんなカスな受け答えしか出来ねぇゴミが、俺より恵まれた環境で生きてんの、普通に腹立つわ」


「わかった。機会があったら1人はお前にやる」


 との事。いや、喧嘩しないでね? これから取引する相手なんだから。


「なんだお前ら、喧嘩売りに来たのか?」「ゼグズビー様も暇じゃないんでね。お引き取り、じゃなくて、永遠に退場してもらいましょうか?」


 ほら、お相手さんもその気になっちゃってるって。


 どうしようかな、この空気、となっている所に、ここへ来て無言だったクリスティーナが口を開く。


「ねぇ、アルメル」


 呼ばれたので振り返ると、そこで、困ったような身振りで目元を隠しているクリスティーナが居た。


 目元を隠すクリスティーナ。


 目を開ければ透視する能力があるクリスティーナは、わざとらしく、こう告げる。


「この警戒体勢と、見張り役の不機嫌さ。――中で女の子が襲われているんじゃないかしら」


 その言葉は、魔眼持ちのクリスティーナの言葉は、紛う事なき事実だ。


 透視したという事を相手に悟らせないよう、わざと遠回りに表現したらしい。


 そこまで理解すれば、後は考えるまでも無いことだ。


「シンシア、オヌシ」と、俺は言う。「――制圧しろ」


 その言葉が先か、行動が先かは、よく見えなかった。だが、殆ど同時に、見張りの2人は、シンシアとオヌシによって制圧されている。


 とはいえ、まだ身動きが奪われ、地に倒れているのみ。


 抵抗してもらっても構わないが、これを告げなければフェアではあるまい。見張りが見張りをしていたという体裁も、こいつらにとっては必要だ。俺達がこれから中に入っても、こいつらは悪くない、という体裁が。


 だから、俺は名乗った。


「パラノメールの現領主、ダグラス・オース・ファランが三男、アルメル・オース・ファランだ。急ぎの用件があるため、中へ入らせてもらう」

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